log in - 82 転移の鏡と、頭のわる……痛い『転生者』達?
「『マーラの森』……ですか?」
「そういえば、掲示板で森の中に隠された遺跡があるとかで、すわ! 財宝が!? 行くぜ、ダンジョン!! って、盛り上がっていたわねぇ……。あれって、終ぞ見つかったって話を聞かなかったけど……? 貴方が口にするってことは……あるのね、遺跡」
「ああ。しかも、森の外れとはいえ『森守のルトヴェリス』内にある遺跡と繋がっていてな。もっとも、移動に条件があるので問題はないとは思うのだが……」
ん? 条件とは何ぞ、と?
これな? 『森守のルトヴェリス』側にある『ホトの遺跡』が中央管制のようで、ここにある『ゲートを潜ることで生体認証がされるんだと。
『マーラの森』にある遺跡……『ファルス神殿跡』に移動した後、対面にあったもう1つのゲートに触れた瞬間。
“ピコーン”
《『中央管制ホト』の認証を確認》
《『ファルス』から『オーラル』への移動が可能です》
《移動しますか?》
というインフォと共に。
☞YES
はい
と、ウィンドウが飛び出してきたんだが。
その時一緒に表示されたフレーバーテキスト? に、そう記されていたので間違いないだろう。
因みに『オーラル』だが……海の底だったよ! 死ぬかと思ったわ!!
ただ、水中ダンジョンぽかったんで……その内、な?
「あぁ~~~~~……」
話を聞き、額に手を当てて天を仰ぐ隣のシフォン。
その様子に、「こいつ、やっちまったぜ!」と、心の声がありありと零れ出ている。
「むぅ~~~~~……」
それとは対照的に、フェルメリアの顔に浮かぶ表情は真剣そのもの。
さもありなん。他国に通じるゲートなんて、事案だしなぁ……。
「1つ、よろしいでしょうか? ゲートの先……『森守のルトヴェリス』側はどのようになっているのでしょうか?」
「うん? 場所は北の外れ……『鉄血のオデット』とを隔てる山岳の、とある岩肌を彫り込んで作られている。シフォンがペトラのエル・カズネを知っているなら、まんまそのイメージだな。まあ、内部は割と迷宮っているけどな……」
ヨルダンにある世界遺産にして新・世界七不思議にも選出された古代遺跡・ペトラ。その遺跡群? の中でエル・カズネはもっとも有名なのではないだろうか?
このエル・カズネ。一般には宝物殿として知られているが、その実、王の墳墓として造られたとされていたりもするそうな……。
「でだ。周辺の魔物は低ランク。だが、それを覆うように高ランクの魔物の領域が重なっている。そこをうまく抜けることができれば、どの方角にとは言わんが、割と近くに『名も無き村』が1つある……と、言ったところか」
「なるほど……この国の住民はともかく、『転生者』の方々ならば村まで辿り着けるかもしれませんね……」
「そうねぇ。ゾンビアタックでワンチャン狙えるものねぇ……。そこまでする価値があるかは別として……」
まあ、価値があろうが無かろうが、突っ込む馬鹿は一定数いるだろう。
問題は……。
「『転生者』の大半が『森守のルトヴェリス』に攻め込んで来たっていう事実がなければ、まだよかったんだがなぁ……」
「確かに心象は最悪でしょうね……」
「それですとアギト殿が……」
心配そう……というより、申し訳なさ気に俺を見るフェルメリアに、「問題無い」と【狩守の腕輪】を指で突きながら告げる。
俺のことは各町村にあるや篠の支店……分殿? には知らされているし、何より狩守になるための登録は社都の本殿? でしかできないので、これ以上の無い身分証明なんだよ、コレ。
「んで、問題は下手に村まで辿り着いた連中が、なりふり構わず強行に及ぶ恐れがある、というところなんだよ」
「あ?」
「ぶっちゃけな? ゾンビアタックを延々と続けるだけの価値はあると思うぞ? 『名も無き村』とはいえ、周囲には魔物がいるんだ。それも、それなりに強力な奴がな。必然的にメンテナンスも含めてそれなりの武具を扱う店はあるし、行商人なんかもくるからな……と、いうかよ? ここいらで手に入る武器って……農具に劣るぞ?」
「……へ?」
納得するかの様に頷くフェルメリアとは対照的に、間抜けな顔を晒すシフォン。
「何せ、鍬とかミスリル製だしな。魔力を込めるとサクッと地面が耕せるんだよ。木の根や石とかあってもサクサクと……。開墾する時とか便利だよなぁ……」
「うぼぁ~~……」
衝撃が強過ぎたか? シフォンの口から奇怪な呻きが零れ出る。
気の所為だろうか? エクトプラズムのようなものまで吐き出されているように見えるのは……?
うん! オリハルコン製の農具の存在は、口にしない方がよさそうだな!!
よくある映写的とでも言おうか半ば魂が抜けかけているシフォンの様子に、フェルメリアは苦笑を浮かべながらその口を開いた。
「分かりました。『マーラの森』にある遺跡を、アギト殿の所有といたします」
……本当に貰えるとは、思わなんだ。
「だが、いいのか? 『森守のルトヴェリス』側からの侵攻とか考えなくて……?」
いや、侵攻なんてする気は更々ないが……。
「それこそ、アギト殿なら分かっておられるはず。『森守のルトヴェリス』の戦士達がその気になったら、少なくともこの大陸の国はその悉くが……正面から蹂躪されますよ?」
あ、なる!
「それに、元々が言い伝え。噂でこそあるだろうと言われてはいたものの、確証が得られなかった……『転生者』の方々的に言うなれば、ただの都市伝説にすぎなかったものですから、ね。悩んでいた理由。その一つは、そのような在るか無いかも分からなかったものを報酬にしていいものか、と……。もう1つが、他の『転生者』の方々の動向にどういった影響を与えるのか、です」
一つ目は、まあ、そんなもんか? 無かったものとして扱うか否か……? これが先王なら、嬉々としてその活用法を模索するだろうが、今の『戦軍のアンバッス』にとっては他国に通じるゲートなんて問題にしかならないしなぁ……。
二つ目は、納得。それで『森守のルトヴェリス』側の状況か……。北の外れとはいえ、割と奥地。そんな所に前歴のある『転生者』達が大量に湧き出すようなことがあれば、それこそ……事案だな。
しかも、だ。やることといえば集団奇行だし?
うん! 事案だな!!
「一つ目は、そもそもがアギト殿からの申し出ですので、いっそのこと二つ目……同じ『転生者』であるアギト殿にお任せするのがよいのでは、と判断しました」
ああ、人それを……丸投げと言う。
お読みいただきありがとうございます。
できましたら、ブックマーク、評価等していただけると幸いです。




