log in - 80 溺れる者は、茨をも掴む……のか?
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「くっ! なぜYESとはいしか選択肢がないんだ? と、いうか、メンバーが歩間にいないのに創設できるって、おかしくないか!?」
たった一人しかいないのに、組合とはこれいかに?
「うふふふふ、ウチはまず『ホーム』になる拠点を手に入れないといけないんで何とも言えないけど……。確かに普通なら、ある程度の人数が必要となるわよね……」
いかにも、高級であります! と、言わんばかりの柔らかなソファーに腰を埋めながらこの世の不条理を愚痴る俺へと、隣微座る彼女はなまら暖かな眼差しを向けながらそう相槌を打つ。
……ってか、本当にふっかふかだな!? このソファー!
あまりに深く沈み過ぎて溺れそうになる体を引き起こす。
種族進化によって成人男性の平均位の体躯になった俺だが、今はスキル【擬態】の効果で無印状態に身を置いている。
いやね? ステータス値がちょ~っとインフレしすぎじゃね? ってかんじなもんで、ね……。
〈天元突破〉の称号スキル【天覇】の[アビリティ]である霊溜封身でステータスを封印してなお……ってな状態な訳よ!
で、このスキルってば、ステータス値まで無印状態にしてくれるんで重宝してるんだわ。
え? ステータスの開示は無いのかって? ま、まあ、それは……折を見て、な?
「ふふふふふふ……」
ええ~いっ! だから、見守っていますよ? 的な、慈愛に満ちた眼差しを向けるんじゃありません!!
何とも調子が狂うというか、座り心地が悪いんだよなぁ……。いや、ソファーの座り心地は極上なんだけどな!
これ……作れるか?
称号〈神秘の匠〉の[効果]匠の技法・理の影響で、覚えてもいない【木工】や【裁縫】はおろか複合派生の【家具製作】等も含めた生産関係は全て行えるようになっているからなぁ……。
これ、本当に生産ビルドの連中ってば涙目だろ? 【複合生産】とかもできるし……。
因みに、複合派生系スキルが【家具製作】のようにそれに対応した生産が可能になる……まあ、スキルが無くともある程度は生産できるんだが……のに対して、【複合生産】は数ある生産系スキルをチャンプルして製作が可能になる。
ぶっちゃけると、【調薬】と【鍛冶】を組み合わせて、それ何て効果あんの? という製造も可能なのだ。
まあ、上手く組み合わせればかなりのチートって、ゲフンゲフン。
もっとも、習得条件が恐ろしく鬼畜なものになっているんだがな……。
まず、生産系スキルを5つ以上所持。
次に、それらのスキルを全て2次のカンストまで上げる。
ここまでで注意すべきは複合派生系のスキルが習得可能になってもスルーし、所持生産スキルが全てカンストするまで3次に進化させないこと。
これらの条件を満たすことで、まず〈奇天烈な匠〉という称号を得ることができる。因みに効果は……何もない。。
でだ。同じ要領で3次スキルをカンストさせたら、4次スキルに進化させることなく新たに生産系スキルを1つ以上習得し、それらのみをひたすら行い3次カンストまで成長させる。
そして、更にそこから4次に進化させることなく、各種生産スキルを満遍なく使い続けると……あら不思議? 忘れた頃に、スキル【複合生産】が生えてくるのだ!
まあ、気づくだろうが、これ、習得しているスキルが多いほど最後の時間が短縮される。
……でもさ?
うん、罠だよな!
複合派生系のスキルとか習得できるようになったら……普通取るべ?
進化可能になったのに、他がカンストするまで待つなんて……ありえねぇべ?
カンストしといて進化もせず、他のスキルに手を出すとか……阿呆だろ?
更に、進化させることなくひたすら生産し続けるとか……キチガイの所業だよな?
まあ、最初条件である生産系スキルを5つ以上習得する奴からして……まずいないだろ?
習得条件を予め知らないと習得不可能だろ、これ……?
「何をそんな遠い目をしているのかしら?」
「ん? ああ、このソファー……作れないかな、と……」
てか、そんな目をしていたのか、俺……。
「【家具生産】を極めれば、いけるんじゃない?」
「いや、それだとこのソファーは作れんぞ」
そう、【家具生産】に用いられるのは【木工】系と【裁縫】系。だが、このソファーにはふっかふかな部分の下にスプリングが使用されているのだ。
多少の金具程度なら【家具製作】でも取り扱えるのだが、スプリングを組み込むとなると出来なくはないがこのクオリティーは不可能であろう。
故に【複合生産】なわけだ。
「え?」
「このソファー、スプリングが使用されていてな。釘や取っ手なんかの金具類は生産素材として【家具生産】で使えるが、スプリングを組み込むのは流石にスキルの許容範囲外だ。コイツを作ろうとすれば、う~~ん……まあ、シフォンならば構わんか。ただ、これはオフレコで頼む……」
まあ、 知ったところで……茨の道どころじゃないだろうが……。
「それは……知らなかったわ……。というか、他にもそういうのありそうよね?」
「あるだろうな、きっと……」
例えばスキル【メビウス】の[アビリティ]にあるマルチウエポン。これに類するスキルはあると思う。
その習得条件とか……お察しだろう? 恐らくだがな!
そんな風に、何処か呆れたような顔を突き合わせていると……。
“コンコンコン……カチャリ”
「失礼いたします」
そう、恭しく一礼をして、開いた扉……その入口の横に佇む侍女。
そして……。
「遅くなっていまい、申し訳ありません」
と、部屋の中へと入ってくるのは、この国の新たな王であるこの人……女王フェルメリアであった。
名目上はマルスと胴腹の妹、ということになっているが……。
“ピコーン”と不意にポップする【識別】の結果に、内心辟易とする。
王家……闇が深いな……。
「まずは、アギト殿。この度は無理な要請を受けていただき、ありがとうございました。これからのことを考えると、『森守のルトヴェリス』側に被害が出ることは好ましくはありませんでしたので……。流石におと……お兄様と鬼神殿のお二人だけでは手が回りそうにはありませんでしたので、このような強引な形になってしまったことを改めて謝罪とお礼を申し上げます」
まあ、その2人を見越しての3部隊構成だったんだろうしな。
つまりは俺……イレギュラー。
ついでに言うと、俺を巻き込んだのはマルスの言あってのこと。なので、うん……気にするな。
それにしても、〈素直〉の称号があるだけあって、ええ娘や。
物騒な称号を幾つも授かるような環境で、よくもここまで真っ直ぐに成長したものだ。
思わず“ウン、ウン”と頷く俺へと向けられる、シフォンの“ネットリ”と粘つくように生暖かい眼差しと……。
「あ、あの……?」
困惑に彷徨う、フェルメリアの瞳。
「いや、あ~、陛下「フェルメリアとお呼びください」の……フェルメリアの兄君には、色々と気にかけてもらった恩があるからな。気にするな……というのも無理だろうから、謝罪と礼は受け取ろう」
「はい!」
“パァーッ”と花が咲いたように、不安を浮かべていた顔が綻ぶ。
それに引き替え……何なんだろうね? この“ニヤ、ニヤ”と弄ぶような眼差しを向けてくるお隣りは……。
まるで、視線に嬲られているような錯覚を覚えて、むっちゃ居心地が悪いわ!
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