log in - 79 やはり俺には○○○がない。
“ザワ、ザワ、ザワ、ザワ、ザワ……”
喧騒が周囲を満たす。
目の前にそびえ立つは、白亜の城。
その錠前の広間に集まった群衆は、今か今かとその時を待っている。
俺もまたその巨大な城を仰ぎ見ながら、静かに時がくるのを待つのであった……。
っと、やってきました、ここ『帝都アンバッス』。
因みに、各国の中枢都市は『森守のルトヴェリス』では社都。『海養のクリムト』では王都。『商運のミルト』では首都。『鉄血のオデット』では皇都、と呼ばれている。
何か綺麗に分かれたよな……?
さて、なぜに俺がこの人ごみの中に混ざっているのかと言えば、王女……もとい、女王様に呼ばれたからに他ならない。
え? 帝都なら女帝だろうって? いや、俺に言われても……。
拝啓アギト殿。から始まる書簡が、突然目の前に“ポンッ”と現れた時には何事か!? と思わず身構えたけどな!
差出人は件の女王様……ではなく、マルスだったのだがね……。恐らくは『転生者』のフレンドメールの応用のような何かで送られてきたのだろう。
かくして、俺はこうして灰色のローブ……【隠者の幻衣】に身を包み、この場に佇んでいるわけである。
このローブ、認識疎外というか印象操作? のような効果があって、たとえ正面から会話をしているその相手が俺のようなゴブリンであったとしても、相手はそうとははっきり認識できない朧げな印象を受けるのだ。
故に、秘密裏に行動をする場合【穏形】系のスキルを使うよりも、適している場合があるのだ。
情報収集をする時なんかは特にな。
“ザワ、ザワ、ザワ、ザワ、ザワ、ザワ、ザワ、ザワ、ザワ、ザワ……”
と、そんなことを考えていたら、突然周囲の喧騒が増し……次の瞬間。
………………………………………。
“シンッ”と静まり返った。
見上げれば、バルコニーに佇む1人の少女。
薄い青系統の色彩で彩られた豪華なドレスを纏い。僅かにそよぐ風に長い金色の髪を流しながら、綺麗に指を揃えた手の平を発展途上な胸の高さへと上げて眼下を見渡す。
その、凛とした表情の中に僅かな幼さを残しながらも、確かな覇気を垣間見せる……彼女こそが。
――フェルメリア=ラル=アンバッス――
この国の新たなる王……女王である。
片手を上げて静寂を促す彼女に、抗い難い何かを感じたのだろう。誰も彼もが口を噤み、皆一様に新たなる己が支配者を仰ぎ見る。
そんな無数の眼差しを向けられる中、彼女は……徐に口を開く。
語られるのは事の経緯。
国家の醜聞にもなろう先王による愚行の数々が、実の娘であろう彼女の口から申し訳なさげに綴られる。
それを傾聴する群衆の反応は様々だ。
ただ唖然とする者。したり顔で頷く者。嗚咽と共に涙を流す者。落ち着きなく青ざめた顔で何度も周囲を見回す者。
そんな彼等彼女等の心情を尻目に、事の顛末が告げられ……。
「そして、彼女等が未熟なわたくしに協力してくださった『転生者』の方々です。彼女等なくして事が成就することはなかったでしょう。この功績に対して、彼女等には『戦軍のアンバッス』新国王フェルメリアの名において〈騎士卿〉の称号を授けます」
『わぁあああああああああああああああ~~~~~~~~~~……』
響き渡る大歓声。
“ピン、ポン、パン、ポーン”
《《革命に協力した『転生者』に、称号〈騎士卿〉が授与されました》》
《《条件が満たされたため、『ホーム』及び『ギルド』システムが解放されます》》
もっとも『転生者』達は、頭の中に響いたインフォにそれどころではなかったであろうが……。
そして、俺はといえば……。
“ピコーン”
《『魂の方城』を『ホーム』に設定します》
“ピコーン”
《『ギルド』の創設条件を満たしました》
《創設しますか? ……しますよね?》
☞YES
はい
……oh
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