log in - 77 戦争とは……。
…………………………。
『は?』
と、雷鳴轟く虚空に虚しく零れ出た間抜けな声。それは、取り残されたかの様に立ち尽くす『転生者』達の心境を、ありありと物語っていた。
それにしても、だ。あちらにしてみれば、統率なくばらけていたことが幸いしたようだな。
もっとも、これから繰り広げられる虐殺を前にしては、一瞬で死に戻れた者達の方が幸運だったのかもしれないが……なっ!!
“ザンッ”
「あ?」
〝一歩〟踏み込むと共に、X字の閃きが1人の『転生者』を光の粒子へと変えていく。
呆けたように開け放たれたままだった口から呟くように零れ出た声が、遠のくように薄れていく雷鳴と共に大気へと透けていき……。
「な!? 何だぁあああああっ!? へぐしっ!?」 「冗談じゃねぇぞ!! っが!?」 「嘘嘘嘘、嘘ぉおおおおおっ!? っきゃあああああっ!!」
静寂を取り戻した周囲に巻き起こるざわめきの間を縫って〝一歩〟〝一歩〟と踏込と共に奔る剣閃が、阿鼻叫喚の渦を生む。
先程まで鳴り響いていた轟音にも劣らない絶叫が、大地を待機を震わせていく。
「糞っ! ふざけやがって!! 相手は1人なんだ、取り囲んでボコッちまえ!!」
一方的に蹂躪すること暫し。漸く冷静さを取り戻した……のかは分からないが、ちらほらとこちらへの攻撃の意思を見せ始める者達。
その機先を……挫く!
「スラッシュムーブっ!」
上段から振り下ろす剣。その太刀筋が、衝撃刃となって戦場へと飛ぶ。
「くっは! 馬鹿が!! おい、今の内だ! 次が来る前に詰め寄って、タコ殴るぞっ!!」
まあ、普通ならそう思うんだろうな……。
俺は口汚く吠えるバードマンの滑稽な姿に冷ややかな目を向けながら、手にする剣を振り上げる。
その、剣閃に……。袈裟懸ける、剣撃に……。薙ぎ払う、刃に……。縦横無尽に振られる、剣の嵐……その諸共に、等しく迸る衝撃刃が颶風を帯びながら飛散し、迫り来る『転生者』達を再び阿鼻叫喚の渦へと呑み込んでいく。
『ぎゃああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~~~~~~~~~~っ!?』
乱れ飛ぶ斬撃に、4人5人と散っていく『転生者』達。
「なっ!? 何でリキャストタイムも無しに同じ[アーツ]を! それも、溜めすら無しに連発できるんだよ!? おかしいだろうがつ!!」
そう、見苦しく喚き散らすバードマンへと〝一歩〟踏み出すと共に……。
「〖ストラッシュ=ヘル〗っ!」
――バッヅンッッ――
派手な音と共に、上半身が千切れ飛ぶバードマン。
「がっ!? あ……? この……チート野郎、が……」
捨て台詞を吐いた男の体……上半分が、地面に落ちることなくこの戦場から消えていく。
後に残された下半身が両膝を地面へとつき、そのまま前のめりに倒れ込むように粒子となって散っていった。
「……チート、ね」
もちろんチートだどではない。
とはいえ、俺自身【千技の繰り手】の効果を読み間違えていた。
そう、この程度のことならこのスキルがなくとも、この世界の住人なら普通にできることなのだから……。
因みに、〖ストラッシュ=ヘル〗とは[EXアーツ]である。
何かさ? 【縮地:天動】の踏み込みを利用してストラッシュを使ったら、変な補正というか効果が加わってさ? 相手の防御力を無視してぶった切る技になっちまったんだよ……。
「さて?」
「ひっ!? た、盾持ちの人! 防いでっ!!」
小柄な体躯に不釣り合いな大剣を手にするセリアン(猫)の少女の、若干腰が引けながらも気丈に張り上げたその言葉に、数人の盾持ちが、前へと躍り出る。
しっかし……盾持ち、少ないよな……?
ざっと見た限り、今目の前にいる6人で全て(小盾とバックラーは除く)だ。
しかも、大盾持ちは2人だけ……。
初撃のアレで、特に盾持ちが消し飛んだ……ということもないだろうし……。
まあ、疑問は尽きぬが……取り敢えず、潰す!
俺は〝一歩〟間合いをゼロとし、腰だめに構えた剣を前に撃ち出すように振り抜く。
「破砕鎚っ!」
――ドグンッ――
腹に響く重低音。
大盾を構えた男は、そのまま後方へと数人の『転生者』を巻き込みながら吹き飛んでいく。
手にする盾はその一撃で大きく拉げ、無数に走るひび割れから砕け散っていく破片を“キラリ、キラリ”と虚空に舞い散らせながらその形を失っていく。
そして、それほどの衝撃を受けた彼が……。
「む、無念……」
無事で済む道理はなかった。
ただ一言短く呟いた彼の最後の言葉は、周囲が“シンッ”と静まり返ったが故にはっきりと耳に届いた。
と、いうかさ? 今って……戦闘中なんだけど、な!
「ぐふぅううっ!?」
再び“ドグンッ”と鳴り響く鈍い音と共に、2人目の大盾持ちが彼の後を追うように飛んでいった。
「なっ!? ななななな、何でぇええええっ!?」
「い、今のって……【大槌】の[アーツ]でしょっ!? 何で【剣】で使えるのよっ!?」
「いや、確か……【大打杖】でも使えたはず……?」
「どの道【剣】では無理でしょうが!!」
俄かに活気? を取り戻す『転生者』達。
楽しそうだな、お前等……。
っと、そんな愉快な『転生者』達は取り敢えず置いといて、だ。
うん、お分かりだろう。これが【千技の繰り手】の真価の一つ、というわけだ。
【千技の繰り手】による[アーツ]の完全マニュアル化ってさ? 気力や魔力の流れやその構成を再現できるのなら、ぶっちゃけ未習得の[アーツ]でも再現できるんだよ。
その延長というか応用で、本来の習得できる武器以外でも[アーツ]の構成が再現可能になるのだ。
まあ、流石に【弓】に[アーツ]を【剣】で使うのは無理があるから、限度ってものはあるけれどな。
でさ? いつまで面白おかしいことになっているんだ、お前等? 何度も言うが、今って戦闘中だって、の!
〝一歩〟足を踏み出し“スルリ”と回転しながら大剣を手にするセリアン(猫)の少女の側面へと滑り込み、その首の後ろへと剣を振るう。
「首刈り断頭撃!」
「へ?」
情けない声を零しながら“スッポーーン”と胴から離れて勢いよく飛んでいく……頭部。
しっかし、凄いネーミングの[アーツ]だよなぁ……。首を刈る刃を飛ばすんではなく、刈り取った首が撃ち出されるようにすっ飛んでいくとか……。視覚効果が凄まじい。
と、なれば……当然。
「うげぇええええっ!?」 「ひぃいいいいいっ!?」 きゃぁあああああっ!?」 「嘔露嘔露嘔露ぉ~~~~~……」
またしても阿鼻叫喚する『転生者』達……。
でもよ? 戦争をするってのは、つまり……こういうことなんだよ。
“ザッ”
軽く一歩を踏み出し、遠巻きに周囲を取り囲む『転生者』達を“グルリ”と見回す。
“ズザッ”
武器を構えてはいるものの皆一様に腰が引けていて、中にはあからさまに青ざめ身を震わせながら後ずさる者すらいる始末。
最初に理不尽を向けてきたのはそちらの方だろう?
故に、俺は……宣告する。
「さあ、理不尽を……蹂躪しようかっ!!」
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“ピン、ポン、パン、ポーン”
《《アンバッスの王女、フェルメリアの主導による王位の簒奪が成功しました》》
《《以降、一部NPCのマーカー規制が解除されます》》
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