log in - 71 平和……なの、か?
「はぁ……死ぬかと思いましたわ」
「つぅか、おめぇ……既に死んでんだろうがよ!
「はっ! そうでしたわ!? ……ではなく!! 一体、アギト様に何の御用があると言いますの?」
何なのだろうか? このコントのようなかけ合いは……。
まあ、この2人はまだいい。顔なじみらしいからな。
何でもほぼ同じ時期にある女性に助けられたのだとか。
シシリィが助けられえ暫くして、マルスが女性の脇に抱えられてあの『湖村:フォロム』に連れてこられたそうだ。
その時、彼は……どういうことか、一糸纏わぬ全裸だったとか……。
なるほど、それで称号に〈ゼンラーマン〉なんていうおかしなものがあったのか。恐らく、散々からかうわれたのだろうな……合掌。
もっとも、それは今もあまり変わらないんだがな……。なんせ、鍛え抜かれた筋肉こそ我が鎧! とでも言わんばかりのハンラ―だし。具体的に言うと、装備しているのは手甲と脚甲と腰鎧のみだ。
とはいえ、だ。
未だにシシリィの腰へとしがみつき、胸の谷間に顔を埋めてぐずっているリアン。
その言葉とは裏腹に、非常に困惑している様子なマルス。
冷静さを装ってはいるものの、絵図的に滑稽にしか見えないシシリィ。
「はぁ~……平和だねぇ……」
「~~~♪」
我関せずと茶を啜るミュレットと、なぜか俺の膝の上に座って上機嫌なご様子のラニーちゃん。
ねぇ、ラニーちゃん? 君のご主人様はカウンター前でのほほんと茶など飲んでいますが、なぜに俺の膝の上?
俺の視界に「ほぅ」と気の抜けた吐息を零しながら茶を啜る少女が映る。
赤味がかったショートの黒髪にまん丸のケモミミ。小柄な体格に不釣り合いな大きな胸の膨らみが、吐息と共に“タユン、タユン”と揺れ動く。
い、いかん! と、目を逸らした先。
――…………………………――
ただ無心で食事を貪るスカサハと、その足元で……。
「プ……プキ?」
状況をまったく理解していないのであろうヴァイオレット。
この子は森で災害球の魔物・ブラストボアを倒した後に出会い、親? の仇であろう俺になぜか懐いてあろうことか強制的に従魔となったウリ坊だ。
うん、そんな無垢な瞳を向けないでくれ……今は、辛い……。
そうして、ただ事の成り行きを見守るほかはない、恐らくは当事者であろうはずの俺。
そんな、傍から見たらあまりにも間抜けに感じられるであろうこの状況が……漸く動いた。
「あ~、ちぃとむ……妹のパシリが来るみたいでよ? アギト……どうもおめぇも連れて来いって話でよぅ。もう一度言うが、ちぃ~とツラ貸せや!」
「まあ、特に用はないのでかまわないが……」
頭の奥に「そうか、ありがたい!」と感謝の声が響く。
もっとも、耳に届くのは「はん! ったりめぇだよな!!」とぞんざいなものだったが……。
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