log in - 07 迷子
揺れる水面に反射する日の光を眺めながら、今直面している事態に自分は頭を悩ませていた。
その事態とは………。
「ここ……何処?」
*
*
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激しい精神的疲労から何とか立ち直った自分は、再度ステータス画面に目を向けた。
「…スキルを組み換える前に、先ずは称号からだな」
得ている称号は二つ、幸い【メビウス】のマルチタイトルの効果で二つともセットする事が可能だ。
まずは、と〈類無き存在〉をセット。そして、次の〈唯一なる存在〉セットした瞬間に再びそれは起きた。
“ピコーン”
《種族特性解放の効果によりスキル【成長促進】がスキル【覚醒進化】へと昇華しました。》
“ピコーン”
《種族特性解放の効果によりスキル【神罰】がスキル【祝福】へと昇華しました。》
“ピコーン”
《種族特性解放の効果によりスキル【悪食】がスキル【暴食】へと昇華しました。》
「……………………また…ですか?」
再びあさっての方向に旅立とうとする意識を引き戻して何とかステータスを確認すると。
[種族特性]
【成長促進】【神罰】【悪食 Lv-1】
だったのが。
[種族特性]
【★覚醒進化】【★祝福】【★暴食 Lv-1】
こう変化していた。
尚、原因となった種族特性解放は称号〈唯一なる存在〉の効果の一つである。
因みに称号二つはこんな感じだ。
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〈唯一なる存在〉
[効果]
収得KP増加・大
スキル熟練度上昇率増加・大
種族特性解放
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〈類無き存在〉
[効果]
収得EP倍増
スキル習得率上昇
隠しステータス解放
隠しステータスTECへのEP割り振り
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VP隣の数値やTEC、そしておそらくKPとスキルの熟練度だと思われるバーが表示された原因は隠しステータス解放にある事が分かる。
でだ、問題となる種族特性解放なのだが、種族の特性を開放するとだけ表示された。
……説明になってねぇー! と、ツッコミを入れたい気持ちをグッと堪え、新たなスキルの詳細を確認する。
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【★覚醒進化】
[アビリティ]
収得KP増加・極
NEXTKP半減
[アーツ]
天稟の極み
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【★祝福】
[アビリティ]
能力上昇率増加・極
収得EP倍増
[アーツ]
栄達
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【★暴食】
[アビリティ]
食糧制限解除
特殊状態異常無効
満腹度ストック・極
[アーツ]
喰ライ尽クスモノ x1/1
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【★覚醒進化】は収得KP増加・中が収得KP増加・極になり[アーツ]天稟の極みが加わった。
天稟の極みは1日1回、1時間の間だけ収得KPとスキルの熟練度の上昇率が激増し、午前零時毎に再発動可能になる。
【★暴食】は特殊状態異常耐性大と満腹度ストック・中が特殊状態異常無効と満腹度ストック・極に変わり[アーツ]喰ライ尽クスモノが加わった。
喰ライ尽クスモノは効果範囲内にいる特定のモンスター以外を喰らい尽しVP、SP、MP、満腹度を回復させる所謂即死系攻撃のようだ。
特定のモンスターとはボスクラスのモンスターの事だろう。逆にそれ以外ならレベルの差とかすら関係なく倒す事が出来ると言う事か? まあ、効果が無い相手にも大ダメージを与えるみたいだから即死効果とかはそれほど考えなくても良いかもしれない。
因みラノベによくあるスキル強奪の様な効果はないが、喰らったモンスターによって一定時間ステータスに補正がかかる様だ。
使用回数はスキルレベル分ストック出来、午前零時毎に一回分回復する。
最後に【★祝福】だが…これだけ効果が完全に逆転していた。
能力上昇率減少・極が能力上昇率増加・極に、収得EP半減が収得EP倍増に、そして[アーツ]栄達が加わっている。
栄達の効果は1日1回、1時間の間だけあらゆる行動に極大の補正がかかると言う事だ。
こちらも午前零時毎に再発動可能になる様だ。
う~む、行動に補正か……生産とすれば良い物が出来るのだろうか?
しかし、何となく種族特性解放効果が分かった気がする。
恐らく種族特性の長所の解放と短所からの解放、両方の意味での解放だと思われる。まあ、それだけでは無いとは思うが…
その様な事を思いつつ【★祝福】について考える。
推測だが、神罰と言う苦難を乗り越えた事で罪を許されただけではなく、神にその功績を称えられ祝福されたと言う事だろうか?
そんな考えに若干呆れながらも次々とスキルを組み換えていく。
「……うん、取り合えずこんなものか!」
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アギト
[種族]ゴブリン(妖精)Lv-1
[称号]
〈類無き存在〉〈唯一なる存在〉
[満腹度]90%
VP - 100%(35/35)
SP - 42/28
MP - 14/14
STR - 20
VIT - 15
MAG - 12
AGI - 72
DEX - 24
MND - 12
LUK - 22
TEC - 4
EP - 0
[種族特性]
【覚醒進化】【祝福】【暴食 Lv-1】
[スキル]
【魔術 Lv-1】【光属性 Lv-1】【時空属性 Lv-1】【魔力操作 Lv-1】【無詠唱 Lv-1】
【DEX強化 Lv-1】【疾走 Lv-1】【全耐性 Lv-1】【隠密 Lv-1】【福音 Lv-1】
【】
[スキル控え]
【剣 Lv-1】【弓 Lv-1】【罠 Lv-1】【★真繰生産 Lv-1】【AGI強化 Lv-1】【★真眼 Lv-1】
【★千技の繰り手 Lv-1】【★仙丹 Lv-1】【☆オリジン Lv-1】【☆メビウス Lv-1】
[称号控え]
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一通りの確認を終え思った事は。
「しかし運営は、自分に何処ぞの魔王にでも成れと言いたいのだろうか?」
何やらとんでもない事になっている称号の効果とスキルの効果に若干引き攣りつつもスキルの組み替えを終える。
外したのは【剣】【弓】【罠】【AGI強化】の四つ。
【剣】【弓】はマルチウエポンに登録し【罠】は現状使わないだろうと思い外した。
【AGI強化】のAGIプラス補正・微に対して【疾走】にはAGIプラス補正・中と上位のアビリティがついていたので取り替えた。
他に追加したスキルで【時空属性】【無詠唱】【全耐性】は、まあ説明は不要だろう。
最後の【福音 Lv-1】だが。
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【福音 Lv-1】
[アビリティ]
神授の恵み
天運
[アーツ]
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神授の恵みは1日1回ログイン時にランダムでアイテムが入手できるらしい。
天運はレベルアップ時にLUKが上昇するとの事。
このゲームではLUKは自身の行動によって増減する事があるだけで、本来はこれと言った上昇手段は無いはずだった。
まあ、【☆オリジン】にLUKへのEP割り振りというアビリティが付いているからから他にもありそうだが……
「スキルはこれで良いとして、次は装備だな」
自分は装備品を確認する為にメニュー内のイベントリを開いてみた。
「転生者の剣に転生者の弓、転生者の服に転生者の靴…と、これだけか」
どうやら初期装備は転生者シリーズの様である。
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【転生者の剣】
[系統]剣/片手剣(両手持ち可能)
[耐久]-
[属性]無
[斬]5
[突]5
[打]5
[魔]5
[アビリティ]
[アーツ]
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【転生者の弓】
[系統]弓/短弓
[耐久]-
[属性]無
[射程]30
[威力]5
[魔付]5
[アビリティ]
転生者の矢筒 15/15
[アーツ]
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【転生者の矢】
[系統]矢
[耐久]-
[属性]無
[突]5
[打]5
[アビリティ]
[アーツ]
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【転生者の服】
[系統]軽装/服
[耐久]-
[属性]無
[耐斬]5
[耐突]5
[耐打]5
[耐魔]5
[アビリティ]
[アーツ]
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【転生者の靴】
[系統]脚甲/靴
[耐久]-
[属性]無
[耐斬]5
[耐突]5
[耐打]5
[耐魔]5
[アビリティ]
[アーツ]
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まず転生者シリーズで面白いのは[属性]無だろう。
これは属性が無いのではなく属性を無効化する属性と言う事らしい。即ち耐性に軽減されずにダメージを与える事が出来ると言う事だ。
惜しむべきは初期装備なので性能が低い事だろう。
次に耐久値が無く破損する事が無い点。
これはまあ初期装備にありがちではあるものの、地味にありがたい事でもある。
後は【転生者の弓】に付いている[アビリティ]転生者の矢筒だろうか?
【転生者の弓】は弓と矢筒でワンセットの装備であり、このアビリティは【転生者の矢】を矢筒の中に無限に生成すると言うものだ。
とは言え瞬時に生成出来る訳ではなく、一本につき五秒から十秒ほどの時間がかかり、最大十五本ストックされる。
「よし!装備完了」
一通りの確認と装備を終えた自分は、メインの武器に剣を装備し弓はインベントリ内の武器庫に設定しておいた。
武器庫はイベントリにあったソート項目の一つである。たぶんマルチウエポン用の項目なのだろう。
確かに戦闘中に一々イベントリに存在するすべての武器から目的の装備を探してとっかえひっかえてのは無理がある。
それならば、主に使う武器を武器庫に設定しておいて、そこから選ぶ方が早いだろう。
そして最後に初期アイテムのポーション類を[使用アイテム]に登録し終えてステータスウインドウをそっと閉じた。
「……しっかしなぁ……どうするべ」
先ほどメニューの中にあった一つの項目に目が付いたのを切っ掛けにとある疑問がじわりじわりと浸食してきているのだ。
その項目とは………マップ…である。
「ここ……何処?」
自分は湖岸に佇み揺れる水面を眺めながらそう呟いていた。