log in - 69 眩き……。
…………………………。
僅かに透ける木漏れ日の中、俺の目の前で音も無く巨体が揺れる。
いや、まあ……その手のスキルは色々とあるから決して不思議ではない。ないのだが……2mを超える筋肉マッチョの大男が、草木が生い茂る森の中を音も立てずに闊歩する姿って……実に異様だ。
俺は、そんな男の背中を眺める。
重なり合う枝葉の隙間から仄かに射し込む光が、男の頭皮に“キラッ、キラ”と反射している。
分厚い筋肉で覆われた胸板を曝け出し、幅広い肩で空を切りながら道なき道を突き進む。
その姿は、威風堂々。いや、これは……異風堂々、か?
男の名は、マルス=ロゼ=アンバッス。
その名が示す通りならば、所謂キラッキラの王子様……の、はずである。とてもそうは見えないが……。
寧ろ、あれだ……どこぞの戦闘民族の王子に仕える従者? のような風体である。
まあ、頭上は“キラッ、キラ”と光り輝いているけどな!
……で、なぜ俺がこの男の背に続いてこの深い森の中を突き進んでいるのかといえば、だ。
……時は、暫し遡る。
*
*
*
“バァーーーーーンッ”
「邪魔するぜ!!」
朝の食事時。その大らかな空気をブチ破って、突如響き渡った二重音。
突然の出来事に、皆一様に啞唖然とする中……って、スカサハ!? 垂れてる垂れてる! 口から“ダバァー”と垂れてるって!!
“カパッ”と開けた口から覗くギザギザの歯。一見凶悪そうな顔立ち? も、歯の隙間から“ダラ、ダラ”と零れ落ちるスープのせいでか、ただただ間抜けたようにしか見えない。
彼女はとある一件が切っ掛けで俺の〈僕〉となったリザードマンの戦士……というか、武士? で、名をスカサハという。もっとも名づけたのは俺だが……。
名前の由来は、槍使いで女だからという安直なものだ。
というか、頭に“パッ”と浮かんだ有名どころがこれだったんだよ! あの状況で悠長に名前を考えて入れれる奴がいるというのなら今すぐ出てこい、決闘だ!!
……でだ。どこのどいつの影響かは知らないっていったら知らないが! 頭に直接聞こえてくる言葉は、一族全員武士然とした古風な口調? で、それに習ったかのように彼女もまた礼節を重んじ儀に厚く、戦闘となれば2本の槍を駆使して闘う勇敢な戦士……なのだが。なの、だが……。
どうしてこうなった? 今や黄色がトレードの腹ぺこキャラとなりつつある。
……んっ、んぅんっ! 気を取り直して次にいこう。決して現実逃避ではない。ないったらないぞ!
皆一様に唖然とする中、聞き覚えのあるその副音声へと俺は顔を向ける。
しかして、そこには想像していた通りの人物が、肩で風を切りながら“ノッシ、ノッシ”と此方へ足を進めてきているのであった。
窓から射し込む陽射しを受けて“キラリンッ”と輝く禿頭。
大柄な体躯を更に際立出せる、鍛え抜かれた筋肉の躍動。
そして……。
「おうっ、アギト! ちぃとツラぁ貸せや!
世紀末ヒャッハー的な実際の口調とは打って変わった、やけに丁重な副音声。
頭に直接響いてくるその口調とのギャップに、難儀なものだと呆れを滲ませながら声を出そうとした……瞬間。
「って、うおぉおおうっ!?」
突然“ピコーン”と目の前に開いたウインドウ。
そこに表示されたとあるスキルが“チカ、チカ”と点滅したかと思えば。
“パァーーーーーッ”
周囲は瞬く間に眩い光で覆われるのであった。
くあぁあっ!? 目が! 目がぁあああっ!!
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