log in - 59 ハリー_①
誤字の報告、ありがとうございます。
――転生――
輪廻を司る女神が実在するこの世界においては、当たり前のように周知されている理である。
それでも、ボクの前世って……実は、魔物なんだよね。などカミングアウトした日には、周囲に白い目で見られることになるだろうね……。
そう……それは、昏い暗い闇の中に忽然と生まれた。
そこは、元々が地下空洞か何かだったのか? はたまた、ソレが生まれたと同時に発生したのか? 周囲に広がるだだっ広い空間。
その中心に“ポツン”と鎮座するソレは、高度な知識とそれを活かす意思が備わっていた。
もっとも、人格と呼べるほどのしっかりとした自我は、無かったのだけれど、ね……。
それでも、自分? が何であるのかは、知識として理解出来ていたんだ。
曰く。この身は、黄金で出来ている……もとい、金色であること。
煌びやかな装飾を纏い、玉座に雄々しく鎮座する、巨大な……四角? もとい、箱……。
――ミミック――
それが、自分の種としての名だと……。
いや、正確には、その特殊個体なのだけれどね。
付け加えるならば、自分はこの迷宮と呼ばれる領域の中心であるということも、理解出来ていたんだ。
いや、それが故のユニーク、なんだろうねぇ……。
所謂、ダンジョンマスターと呼ばれるものになるのか……?
だからなのかねぇ? その知識に駆り立てられるように動いたのは……? いや、身動きは出来なかったんだけどねぇ……手足、無いから……。
広大な空間を、その形を変化させながら、更に遠くへ広げていく。
魔物を生み出し徘徊させ、点々と宝箱を配置していく。
幸いなことに、DPは潤沢にあったからねぇ。
どうもこれ、地表? 地上? とにかく核から外までの距離が遠ければ遠いほど、日毎に自然と得られるポイントが多くなるようなんだよねぇ……。
そんなことを延々と繰り返して……一体、どれくらいの時が立ったんだろうかねぇ……? そうして広がりを見せる領域が、地上へと辿り着くまでに……。
人格、と呼べるほどの自我が無かったのは、きっと幸いだったんだろうね。
そうでなければ、精神が死んでしまっていたことだろうから、ねぇ……。
考えてもみなよ? 100年? はたまた1000年? 或いは……それ以上? 日の光の射し込まない真っ黒な空間で、ただ1人? 身動きすらせずにただ“ポツン”とその場に在り続けるんだよ?
確かに迷宮の拡張やお宝の創造と改造なんかで、多少は気が紛れるかも知れないけれど、さ……。
それでも、何100年もの間それを延々と、それも獲物が入り込んでくる前にだよ?
あえて言おう……虚し過ぎ! で、あると……。
まあねぇ……準備期間だというのなら、それはそれとして納得するしかないんだけれど。延々と繰り返される宝箱の中身のバージョンアップとか……もうね?
溜まり続ける不良在庫。DPに還元するにしても二束三文だし。そもそも、そんなはしたDPなんて必要ない程、毎日大量のポイントが溜まっていくし、ねぇ……。
ほんと……虚しい……。
LVアップの肥やしになっているだろう? と言われれば、確かにそうなんだけれどさぁ……。ねえ、思い出してみてよ? それを何100年も延々と繰り返すだけなんだよ? 侵入者もいないのに……。普通に気が狂うって!
それにしても、さ? 今思うとあの迷宮……深すぎやしなかったかい!?
普通はこう……空間なんかを歪めたり圧縮したりして階層を増やすものだと知識にはあったんだけど、さ? 何か素の状態で100階層を軽く超える深度があったよねぇ……。
まあ、そんなこんなでやっと地上に繋がった訳なんだけど……そこからは、早かったねぇ……。
流石に第3層の守護者にグレータードラゴンはやり過ぎだったかぁ……。あまりの危険度に、当代最強クラスの面子が突入してきてねぇ。破竹の勢いで攻略されてしまったんだよ、はははははっ……。
そうしてボクは……日の光というものを、初めて知ることが出来たのさ!
え? 何故、そうなるって? ですよねぇ~~。ボクだって不思議に思うもの……。
まあ、当時はそんな思考もなかったんだけどね。と、いうかさ? 普通、ミミックをテイムしようとかする? いや、それ以前にさ? ダンジョンマスターって、テイム出来るものなの……?
実際……出来てしまったんだけどさぁ……。それだけ彼女達が、常し……規格外だったんだろうけどね!
それからは……まったりとした時間が流れていったねぇ……。
で、お嬢さん? 1人居残るたびに、ボクの中に身を隠すのはやめてくれないかねぇ?
ほ、ほら……おっかないお兄さんが、仁王立ちで見下ろしてくるからさぁ!? 恐怖とは無縁のこの身? が“カタ、カタ”と小刻みに揺れているんだよ!?
確かに蓋を開けていないボクはあらゆる外部干渉を無効化できるから、中にいれば安全だってのは分かるんだけどさ。このお兄さんってば、それを無視して破壊できてしまいそうな理不尽さを感じるんだよ!!
いや、それ以前に、か? ボクの中……生き物は入れないはずなんだけれどねぇ!?
どこもかしこも、理不尽だらけけなんだよね……ここ。
まあ、重ねて言うけど。当時はこんなことを思えるほどの自我は無かったんだけどね……。
でも、そんな穏やかな時間も……唐突に終わりを迎える。
正直、何が起こったのかは分からなかった。ただ、周囲が騒がしくなって……どれくらい経ったかな? ほんと、それこそ唐突に意識が途切れたんだということを、今のボクは覚えているだ。
こんな話をしたとしても、頭のおかしい気ちがいだと思われるのが関の山だろうねぇ……。
まあいいさ! それならそれで、ボクは最初から道化でいればいいんだからね!!
こうしてボクは、ヒューマンとして新たに人生を歩んでいるわけ……なんだけど、ねぇ……。それは、初っ端から前途多難だったんだよ!
ぶっちゃけると、ボク……生まれてすぐに捨てられたんだ。それも、強力な魔物が跳梁跋扈する森の中……俗に『禁忌の森』と呼ばれるこの森にね!
もう、ほんと……殺意200%を越えているよねぇ!?
まあ、分かるんだけれどね。あの男の所為で、彼女は人生を滅茶苦茶にされたんだからねぇ……。
ん? 何で生まれてすぐに捨てられたのに、そんな事情を知っているのかって?
ボクさ……胎児の頃から、意識がはっきりあったんだよねぇ……。
だから、母体の外でどんなやり取りがあったのかも聞いていたんだ。
どう考えてもその男はクズでさ? 自意識過剰な上に自信過剰で自己中心的。過剰な野心を持ち、そうであることが当然あると妄信していさ? 自分が行うことは、当然そうあるべきこと=正しいこと、という構図の元にやりたい放題みたいなんだよ。
ボクをテイムした彼女達の生まれた場所では、神の名を免罪符にやりたい放題する宗教家がいるとかいないとかって話を聞いたことがあるんだけど。あの男の場合は、自分を免罪符にしているところが、頭おかしいんじゃない? てそんな感じだったんだよ……。
そんなわけで、彼女は理不尽に身体を奪われ、散々弄ばれた挙句。それを……相思相愛であった恋人の前で晒されて、さ……。その恋人さん……失意の果てに自殺しちゃったんだよね……。
その上、さ? 彼女の実家ってとある商会で、その恋人さんの実家がかなぁ~~り重要な取引先でもあったらしくってさぁ……。跡取り息子が死んだの彼女のせいだって、取引が打ち切られてさ?
まあ、相手は騎士様だからねぇ……怨み事を彼女に向けざる負えなかったんだろうけどさぁ……。そのせいで、彼女……実家からも疎まれてしまってねぇ……。ましてや、そんな男の子供を、彼女は元より実家が養うなんてするはずもない。
当然あの男にも責任を取るつもりなんて更々なく……というか、責任すら感じておらず。あっさりと彼女を捨てていった……いや、本人は捨てたという意思すらないのだろうけれどねぇ……。
って訳で、あっさり“ポイ”と森の中。
それでも、捨てる神あれば拾う神ありってね。……ん? これも、転生前に聞いたんだっけ?
まあいいか。そんなわけで、ボクはとあるダークエルフの夫婦に拾われたんだ。
なんでも、産れたばかりの子供を亡くしてしまったらしくてね。それはもう、大切に育ててくれたんだよ。
実の子供である、僕にとっての血の繋がらない妹が生まれた後も、今に至るまでずっとね!
ほんと、こんな性格になっちゃって、申し訳ないって思えるよ。
ん? なら、治せばいいじゃないかって? ……残念なことに、これはもうボクの……アイデンティティさ!!
とはいえ、流石にこんな性格だと普通の職場で働くのもあれかなぁと思い、ボクは狩守になったという訳さ!
幸いボクには、魔物時代のスキルが幾つか継承されてされていたからね! それなりには、できるほうだと自負しているよ!!
しかし、極稀に現れる、その種族が持ちえないスキルを使う魔物のことを特殊個体と呼んでいるんだけれど。奇しくもその仮説の一つが証明された訳だ。
曰く。別の魔物から転生した個体だ、というやつが、ね。
もっとも、魔物から人への転生なんて、そうは無いと思うけどね!
そてと……その逆があるかも、とかは考えたくないよねぇ……。
因みに、継承していたスキルで注目するべきものは2つ。
1つは【アイテムボックス:M】
これは、単なる収納スキルじゃなくてね? 中に入っているアイテムをカスタマイズできる機能とか、色々とヤバイ能力でねぇ。
もっとも、一番ヤバいのはメインの収納……で中に保管されたままの、魔物時代に“セッ、セッ”と作り続けたアイテム群がそのまま残されていたことなんだけれど、ねぇ……。
これ、世に出すと……ヤバ過ぎるんだよ、ねぇ……。ほんと……どうしよ……。
で、もう1つが【アイテムコントロール:M】
これは、所持しているアイテムを、自在に操れるというもの。
もっとも、魔物時代と違って有線なんだけどね!
魔物時代は、無線で宙を“ビュン、ビュン”と自在に飛ばしていたんだけどねぇ……。こう……【アイテムボックス:M】から解放した無数の武器を、一斉に射出したり、ねぇ……。
もっとスキルLVが上がれば、出来るようになるのかなぁ……。
まあ、現状でも十分有用なんだけどね!
武器を手にして振り回すんじゃなくて、手にした武器を直接操作できるわけだからさ? 重さとか勢いによる慣性とかを無視できるんだよ!
けど、現状で最もこのスキルが真価を発揮できるのは鞭やチェーン、それに……蛇腹剣なんかは最高かな?
ぶっちゃけ剣に紐を結んで、てのもありなんだけど……流石にカッコ悪いじゃない?
もっともこれは、言わば切り札としているんだ。なので、普段は長剣を2本、手にしているんだけれどね!!
そんなわけで、それなりに名の知れた狩守となって久しい今日この頃。この日、ボクは……運命に出会ったんだ!!
たとえ慣性を無視できたとしても、武器を手にする腕や、体なんかは振り回されるわけで。ちょ~~と無理してヘマして深手の傷を負ったボクの前に……天使が舞い降りたのさ!!
白く透ける肌は宝石のように美しく。銀色の髪が“キラ、キラ”と靡きその背に踊る。そこには……神々しさすら、感じられた。
幼さを僅かに残しながらも整った顔立ちは、少女を卒業したばかりの背徳的な雰囲気をも醸し出している。
何処か儚げにも見える佇まい。けれど、その瞳には確かな意志の強さが宿っていた。
――ピッシャーーーーーッ――
正にこの擬音の如く。脳天から雷にでも打たれたかの様な衝撃が奔った。
こ、これが……恋?
そう、それはずばり……一目惚れだった。
次の日から、ボクは彼女を追ったんだ。
あ!? ていっても、後をつけ回したわけじゃないよ! 彼女の足取り……というか、どこの誰なのかとか住んでいる場所とかを聞き込んだだけさ。
え? それでも十分ストーカーだって? なん……だと……。
とまあ、そんな感じで動いてみたんだけれど、結論から言えばまったく苦労することなくすぐに身元が知れたんだ。
というのも、彼女って薬師としては結構有名なんだそうな。
こんな性格だから、普段は女性に気を遣いつつも、一歩引いて自分からは関わらないようにしていた弊害か……。
ははははは、気にしない気にしない、よ?
それよりも! 所在が知れれば、後は……突撃するまでさ! 待っていてね、マイスウィートハニィーっ!!
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そうして、ボクはこの日……もう一つの運命と、廻り遭うことになったんだ……。
……あれ? 何かな、この……懐かしいような? ……胸の奥から這いずり上がってくる……畏れ、は……?
くっ!? 負けないよ! マイスウィートハニィー、君のためにもねっ“キランッ”!!
因みに、①とナンバリングされてはいますが、彼の話に次があるのかは未定。
一応書いた時のために、念の為番号を振っているだけです。




