log in - 51 駆け抜ける雷光
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……暗闇が歪み……光が射し込む。
身体に眩暈とも立ち眩みともつかない僅かな揺らぎ。
うっ!? ……かまうか!
それを無視して、俺は一気に駆け抜ける。
開かれる視界。そのまま霊樹の結界から抜け出した俺の目に……。
へし折れ倒れる木々が……。
燻る炎が……。
おびただしい数の魔物の死体と……。
僅かながらも目につく……セリアンやエルフ等の亡骸……。
「くそっ! くそくそくそぉ~~~ぉおっ!!」
その中にはテティスの一件の時に見かけた顔も混ざっていたのだ。
激しい怒りが業火のように胸の中で渦巻く。
だが、立ち止まることはしない。いや、出来ない!
寧ろ昂る激情に突き動かされるように、より一層強く地面を踏み込むのだった……。
周囲に立ち揉める熱気が、風に乗って押し寄せてくる。
それにしても、森の中で火を使うとは……形振りなど構ってはいられなかったのだろう。
さもありなん。これだけの数が押し寄せてきたのだ。正に、死闘、と呼べるものだったのだろう。
そしてそれは、未だ村の中で続けられているのだ。
遠くで微かに轟く炸裂音。恐らくは何らかの【魔術】なのだろう。それは、本当に僅かで……だが、だからこそ生き残っている者達が、未だ奮闘している証なのだ。
だから、俺は……走る!
走る走る……壊れた森の中を走り抜ける。
そうして、ようやく村へと辿り着いた俺は……目にするのだ。
家屋は崩れ去り。所々に転がる死体と……亡骸、を……。
かつての面影を微塵も残さない、さながら地獄のような見晴らし。そんな赤く染まった大地に倒れ伏す数人のセリアンと、幼い少女を庇うように蹲る女性。
そして……大きく剣を頭上へと振り上げていく、豚頭の巨漢。その瞬間……頭の中で、様々な映像が弾けた。
飛び交う悲鳴。
無惨に地に伏す人々。
血に染まる大地。
阿鼻叫喚の地獄絵図。
その、理不尽な光景が……今に、重なる。
「や、め、ろぉおおおぉ~~~~~っ!!」
俺は瞬歩を使って飛び出す。だが、距離も速さも……全てが届かない。極限の集中力が為か、加速される思考が臨界を突破する。
“ピコーン”
《スキル【高速思考】を習得しました》
《スキル【思考加速】が【高速思考】に統合されました》
世界がスローモーションで流れていく中。巨体が振りかざす剣……その切っ先が、遂に頂点へと辿り着く。
……また、なのか? また、このような理不尽が!?
「ふざ……けるなぁあああぁ~~~~~っ!!」
――ズドンッ――
踏みしめる地面が砕け、一気に加速される体。先程までとは比べ物にならない凄まじいGが、肉体へと襲いかかる。
“ピコーン”
《スキル【瞬動術】を習得しました》
《[アーツ]瞬歩が【瞬動術】に譲渡されます》
それでも……。
まだ……足りないのか!?
勢いよく弾き出せれた体は、まるで水の中を進んでいるかの様に立ち塞がる空気の壁に押し留めるように捕らえられ。そんな緩慢な時の流れの中で、視界に映る中天を仰ぐ剣が……ゆっくりと振り下ろされていゆく。
世界は、何時も理不尽で……。まるで、あざ笑うかの様に……何もかもを、奪ってゆく……。
だから……オレ、は……。
――…………………………――
不意に、何か声が聞こえたような気がした。
それは、何処か呆れたような……それでいて、慈しむような声……。
そして……。
「っ!?」
頭に浮かぶ、己の無力さに打ちひしがれそうになるオレを、激昂するかの様な光景。その思いを受けて……俺は……吼える!
「おおぉおおおおおぉぉぉぉぉ~~~~~っ!!」
――ズズンッ――
地面へと体ごと沈み込ませるように踏みしめる大地がすり鉢状にへこみ。足元から立ち昇る紫電が全身を包み込んだ……瞬間。
――ズッギュウウゥ~~~~~~~~~~ンッ――
轟音と共に目の前へと迫った豚面の巨体。
一陣の閃光とかしたオレは、手にした剣を体へと滑らせるように最小の動きで掬い上げ……。
――チュンッ――
何処か軽い音を立ててその巨体を通過すると、剣を振り抜いたまま一瞬で宙を数100m突き進み……。
「ふっ!!」
【天駆】を駆使し体を捻って制動を駆けると……勢いよく地面へと着弾した。
――ドッゴォオオオォ~~~~~~~~~~ンンッ――
大地を穿つ衝撃が、周囲にいた魔物の悉くを肉片へと変える。だが、それにかまっている場合ではない。
顔を上げ、慌てて目を凝らす視線の彼方で、下半身のみとなった巨体が“グラリ”と地面へ倒れ伏していくのであった。




