log in - 05 転生
「はぁ、はぁ、はぁ」
自分は今、走っている。
「あはっ、あははははははははは………」
ただただ、走っている。
生い茂る木々の隙間から差し込む木漏れ日に照らされながら、自然の香りに包まれた森の中を、ただひたすらに疾走する。
「あははははははははは………」
*
*
*
*
*
*
もう間もなく『リンカーネーション・オンライン』のサービスが開始される。
自分はすでに準備を整え、ベットの上でバイザー部分のモニターに表示された時刻を眺めている。
「いよいよか」
そうつぶやく間にも時は進み………。
AM05:59 56
AM05:59 57
AM05:59 58
AM05:59 59
AM06:00 00
「ログイン」
掛け声とともに急速に意識気が薄れ、一瞬の間をおいて生じた僅かな浮遊感と共に意識は覚醒した。
「ここは?」
ゆっくりとあたりを見回す。
すると、木漏れ日から差し込む柔らかな日の光に照らし出された森の様相が目に映った。
「すげぇ……」
自然とこぼれ出たその呟きは、森の静寂さもあってか不思議と大きく耳に届いた。
その事で、はっと我に返ると湧き上がる喜びに込み上げてくる笑いを留める事が出来なかった。
「はははっ…はははははっ…あはははははははっ」
その木漏れ日の揺らめき。その光に照らされた草木の青々さ。その自然の鮮やかさ。
「見える。見えるよ。はっきり見える」
視覚障害の為に視界はかすれ、世界は色を失っていた。
けれど今、そんな自分の目に映る光景は、はっきりと、そして鮮やかに色づいて見える。
これはもうバーチャルとか関係ない…それに!
手を握り、開くを繰り返す。腕を回し、左右に振る。屈伸の後、足を交互に振り上げる。
「はははっ…動く、動くぞっ!? ……これなら!」
一歩、二歩と足を踏み出し……。
「ふふふっ…ふはははっ…あはははははは……」
そうして自分は森の奥? へと走り出すのだった。
*
*
*
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁぁ~」
ただひたすらに走り続けて、どれ程の時間がたったのだろうか?
森を抜け、目の前に湖が見えてきたところで急激に疲れが出始め、湖岸にたどり着くと同時にダウンした。これはおそらくSPが枯渇したのだろう。
随分と長い間だ走っていた様でもあるが、割と短かったような気もする。
“ピコーン”
《スキル【疾走】を習得しました》
草の上に大の字に倒れ、荒々しい呼吸を整えながら感慨にふけっていると、突然インフォが流れた。
「……はぁ?」
これは何か、ただひたすらにSPが枯渇するまで走り続けたことで習得したと? 突然の事に驚きつつも、そんな考えが頭に浮かぶ。
まあ考えても分からんか? というか現在のステータスってどうなっているのだろう?
ゆっくりと起き上がり、ふと自分がまだ転生後のステータスを確認していないことを思いだした。そこで、ステータスを表示させる為にメニューを開く事にする。
「メニューオープン」
“ピコーン”
《あなたの選ばれた種族への転生はサービス開始時において全転生者中50名以下である事が確認されました》
《よってレアP種族に認定されます。ランダムでRスキルが一つ進呈されます》
《スキル【時空属性】を習得しました》
“ピコーン”
《あなたの選ばれた種族への転生はサービス開始時において全転生者中10名以下である事が確認されました》
《よってミラクルP種族に認定されます。ランダムでRスキルが一つ、EXスキルが一つ進呈されます》
《スキル【全耐性】を習得しました》
《スキル【仙丹】を習得しました》
“ピコーン”
《あなたの選ばれた種族への転生はサービス開始時において全転生者中ただ1名である事が確認されました》
《よってオンリーワンP種族に認定されます。ランダムでRスキルが二つ、EXスキルが一つ進呈されます》
《スキル【無詠唱】を習得しました》
《スキル【福音】を習得しました》
《スキル【真繰生産】を習得しました》
《称号〈唯一なる存在〉を得ました》
《称号スキル【オリジン】を習得しました》
“ピコーン”
《あなたの選ばれた種族はサービス開始時において全種族中、唯一のオンリーワンP種族であることが確認されました》
《よってオールオンリーワンP種族に認定されます。ランダムでEXスキルが二つ進呈されます》
《スキル【千技の繰り手】を習得しました》
《スキル【真眼】を習得しました》
《スキル【識別】が【真眼】に統合されました。EPが2ポイント解放されます》
《称号〈類無き存在〉を得ました。》
《称号スキル【メビウス】を習得しました》
「…………はい?」
どうやら、自分の『リンカーネーション・オンライン』ライフは……ただならない始まり方をした様だった。