log in - 37 表のボスと、裏のボス? と……何か?
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215:名無しのドラゴニュート
なあ? いい加減『Reincarnation Online』これ……略さないか?
216:名無しのセリアン(兎)
まあ、確かに長げぇわな……。
217:名無しのエビル
だが、どう略す? ROだと、昔そんな名で呼ばれていたMMORPGがあったはずだぞ?
218:名無しのセレスティア
ここはあえて日本語……転生、とか?
219:名無しのエルフ
無いな……。
220:名無しのヒューマン
無いですね……。
221:名無しの銀狼人
ありえない“ボソ”
222:名無しのセレスティア
うううぅ……。
223:名無しのセリアン(猫)
ドンマイ!
224:名無しのダークエルフ
いやさ? 別にかぶってもいいんじゃね? これはVRなんだし……。
225:名無しのアマゾネス
だったら、VRとROを掛けて……VRO?
226:名無しのドラゴニュート
それだっ!!.
227:名無しの銀狼人
GJ“ボソ”
228:名無しのセリアン(狐)
では、非公式ながら、これよりVROと呼ぶことにいたしましょう!
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832:名無しのドワーフ
なるほど、ご教授感謝する。
ソロで行動していれば、少なくとも今よりはレベルが上がる可能性があるということだな……よし! 行ってくるっ!!
833:名無しのセリアン(犬)
逝くなぁ~~っ!!
834:名無しのヒューマン
早まらないでぇ~~っ!!
835:名無しのエビル
暫し待つのだ、若人よ!
サービス開始早々……引退したくは、あるまい?
836:名無しのドワーフ
む? 何故だ……?
ああ、それとな? 俺は70過ぎの老人なんで、若人というのは誤りだぞ?
837:名無しのセリアン(犬)
……………。
838:名無しのヒューマン
……………。
839:名無しのエビル
……………心得た。
で、だな? このゲームのデスペナだが……おそらく貴殿が考えているよりも、遙かに辛いと思われる。
840:名無しのドワーフ
……そう、なのか?
841:名無しのエビル
うむ! βと同じ仕様ならば、レベルが低い現状だとステータスの低下はさほど気にせずに済むのだが……。
842:名無しのセリアン(狐)
そうですね! レベルが上がれば上がるほど、洒落にならない低下率になっていきますけれど、現状では気にする必要はないでしょうね? ただ……問題は……。
843:名無しの銀狼人
疲労“ボソ”
844:名無しのヒューマン
……………orz
845:名無しのセリアン(犬)
……………orz
846:名無しのエルフ
……………orz
847:名無しのエビル
うむ! それに尽きる。
このステータス異常・疲労は、例えになるかは分からないが、フルマラソンを既定の時間内で走り切った直後の状態。それが72時間続くと思ってくれ。
848:名無しのセリアン(狐)
しかもですね? これはログイン時間の累計で、ログアウト中はカウントがストップしているんですよ……。
849:名無しのセリアン(犬)
まあ、βテスト組ならば、ある意味慣れているだろうが……というか、挫けていたら本サービスには加わってないだろうけど……。
850:名無しのエルフ
果たして本サービス組は……耐えきることが出来るのか?
851:名無しのダークエルフ
ぜってぇ脱落者は出るだろうな……。
852:名無しのドワーフ)
成程……死に戻りの確立が上がるソロ活動には、それ相応の覚悟が必要だということだな?
853:名無しのヒューマン
そうね。正直言って、ゲームなのにどうしてあんなに……とは思ったわ?
……まあ、それでもソロで活動しているあたしが言えたことじゃあないのだけれど……。
854:名無しの銀狼人
……M“ボソ”?
855:名無しのセリアン(犬)
ジィーーー
856:名無しのダークエルフ
ジィーーー
857:名無しのエルフ
ジィーーー
858:名無しのヒューマン
ちょっ!? 違うわよ! な、何よ、その目はっ!!
859:名無しのセリアン(狐)
助け舟を出すわけではありませんが、話題転換。
どなたかリザードマンて見かけたことがありませんか?
860:名無しのエビル
む? 昨日のあれか?
861:名無しのヒューマン
そ、そういえば、βテスト時ではモンスター扱いでしたよね?
862:名無しのセリアン(狐)
どうやらそれは変わらないようですよ?
NPCに伺ってみたところ、普通にモンスター扱いっぽかったですから。
863:名無しのダークエルフ
そういえばさ? NPCも凄げぇよな!?
864:名無しのセリアン(犬)
ああ、正に……中の人などいない! って感じだよなっ!!
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“ピンポーン”
「ん? もう、そんな時間か……」
ヘッドギアを通じて響いてきた、来客を告げるチャイム。ディスプレイの端に表示されている時刻は午前6時53分。
「んげっ!?」
俺は慌てて内部掲示板からログアウトすると、視界を覆うヘッドギアを取り外した。
因みにゲーム自体にログインせずとも、内部掲示板の閲覧だけは可能だ。
しかし……あれが話題に上がっているとは……。
何やら複雑な思いが胸中に渦巻くのを感じながら、俺は重い体を引き摺るように玄関へと足を向けるのであった……。
“ガチャン”
「お待たせしま、し…た?」
「はっ、はっ、はっ! 迎えに来ましたよ、明人君! さあ、参りましょう……我が! 白亜の城へっ!!」
ドアを開けた俺の目の前に佇む、1人の男性。
薄っすらと白髪の混じった髪に執事風の服を着たその初老の男は、まるで悪戯が成功したかの様な表情で、そう切り出してきたのだった……。
「いやぁ~、こちらの不手際で、本当に申し訳ない!」
「いえ……それよりも、厳島先生? 大丈夫なんですか……これ?」
「無問題、無問題! これは言わば息抜き……僕の趣味みたいなものさ!」
いいのだろうか? この人……院長先生なのに……。
そう、何を隠そうこの人。俺が通っている病院の、院長先生なのだ。
こう、デカい総合病院の院長と聞くと、大名行列とかいって大勢の医者を引き連れて回診しているような、偉そうなイメージがあるんだけど、ねぇ?
でも、この人の場合。そんなことをしているくらいならば、各自各々の仕事に従事せよ! てなことで、1人で“フラリ”と回診していたりするんだわ……てかさ? 抜き打ち回診て、何ぞや……?
何ともアグレッシブというか、フットワークが軽い人なのだ。まあ、入院患者からは、すこぶる評判がいいんだが……そう、患者からは……。
俺はハンドルを握る彼の姿を“チラリ”と覗き見る。……何故に執事服?
やはり、あれだろうか? コスプレも、趣味なのだろうか? 何か、行事の度に仮装しているしなぁ……。
ハロウィンの金色の蝙蝠さんとクリスマスのサンタクロース姿での院長回診? は、あの病院の風物詩となっている。
俺も子供の頃に、随分と世話になったよ。出会った当時の彼は、まだ跡取りの若先生だったけれどねぇ……。
しかし……何でハロウィンは、ゴールデンバットなんだ?
脳裏に「はっはっはっはっはっはっはっはっはっはっ……」と、高笑いだというのに妙に高揚感に欠ける笑い声が流れて、思わず苦笑が漏れる。
「そう言えば明人君も『|Reincarnation Online』を始めているんだったね?」
……も?
「実を言うとね? 下の娘も始めていてね」
下の娘というと霧羽ちゃんか。確か一昨年だかに教師になったって聞いたけど……。記憶にあるのんびりとした口調の、ゆるふわな少女の姿が思い出される
……あの娘が、教師? ……女教師?
「で、どんな感じなんだい?」
「えぇっと、何と言いますか……凄い、としか言えませんね」
自分の置かれている状況も踏まえて、そうとしか言いようがないんだよ!
ステータスとかもそうだけどさ? 何なんだよ、あの剣!
詳細には《神秘の技法を用いて鍛え上げられし聖剣。但し素材が伴わないが為、習に準じている》とか記載されているし!
てことは何さ? 素材が伴えば、習が消えるってことか!?
そもそもが、テテル曰く。鉄を鍛えただけで、あんな剣が出来上がる筈がないんだとか……もっともだよ!
本来ならば伝説の素材? がふんだんに使われているであろう剣の雛形が、鉄を鍛えただけでできるとか……ないわぁ~~。
まあ、【真眼】やら確率変動(メリット増、デメリット減)やら、その他色々と関連しまくりまくった挙句に化学反応じみた妙な効果を発揮したがためなんだろうけどさ? それを踏まえても……ないわぁ~~~。
おまけに〈神秘の匠〉とかいう称号まで生えてくるしさ……。俺は何時……神の秘匿技術なんぞを振るったんだ……?
「ふむ? これは是が非でも第2次選考に応募せねばいかんな!」
いやいや院長!? 仕事は大丈夫なんかい! って、だから「はっ、はっ、はっ!」じゃないよっ!!
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「つ……疲れた……」
病院に着くなり「それじゃあ、僕は仕事に戻るよ! はっ、はっ、はっ!」と颯爽と去ってゆく彼の背中に「おい!? 仕事、途中だったんかいっ!!」と心の中でツッコミを入れながら、妙な気怠さも加わった体を押して入り口へと足を向ける。
院内へと足を踏み入れた俺の前に、ひしめく人、人、人……。はぁ……相変わらずの、人の多さだ。
不自由な体では、この人ごみを掻き分けるのも一苦労で……。ようやく諸々の手続きを終えた頃には、既に精も根も尽き果てて生ける屍と化しているのであった……。
ホントに……疲れたよ。 もうね? 出だしから……。
「真上さん、お疲れですか?」
と、長椅子に腰を下ろし“グッタリ”と項垂れていた俺へと心配そうにかけられた声。うん? と顔を上げると、馴染の看護師さんの顔が視界いっぱいに映し出された。……え~と……近いですよ?
ここ数日、こんなんばっかりだなぁ……と、疲れのせいもあってか驚きや焦りよりも妙な達観が、寧ろ冷静に彼女の姿を見定めさせるのであった。
真面目そうな顔立ちにメガネをかけ。その性格を表すかのように、肩上で髪が“キッチリ”と切り揃えられている。
“スラリ”とした長身は、その細身な身体つきと“ピッチリ”としたナース服も相まってか、そこそこある胸の膨らみを実際以上? の大きさへと錯覚させていた。
「ああ、柊さん。いえ、少しね……と、言いますか、今日は如何したんですか? てっきりお休みなのかと思っていました」
そう、何時もなら検診の送り迎えは彼女がしてくれているのだ。それがなぜ出勤しているにも拘らず……あんな事に?
「ええ、それが……書置きを残して、院長の姿が消えていまして……」
どちらともなく顔を見合わせると、「はぁ~」とそろって溜息をつく。そんなことだろうと思ってはいたが、やっぱり仕事の途中で抜け出してきていたのか……。先の心のツッコミが、ここで証明されちまったよ!
「ですが、真上さんがこちらに到着しているということは、院長も戻られているということですね? 今日という今日は、きっちりとシバキ……あ?」
って、シバキなに!? 何やら不穏な言葉を漏らしかけた彼女は、途端何処か呆れの混じった声を上げた。
“ホニュン”
「おふぅ~っ!?」
背中に押し付けられる圧倒的な弾力。肌に染み込むようなその柔らかな温もりに、一瞬意識の飛びそうになった俺の口から間の抜けた声が零れでる。
い、行き成り何だぁ~……って、ここでこんなことをする人なんて、俺の知る限り1人しかいないんだけれど、ね。それにしても……こ、この質量感はっ!?
尚も“フニ、フニュン”とそのボリュームで圧倒してくる彼女。
「ふうぅ……一ノ瀬先生? 一体……何をやっとるんですかいっ!!」
「んん? 何って、お詫びだよ…お・わ・び! ……で?」
“ピョイ”と背中から離れた彼女は、柊さんとの間に割り込むように俺の前へと回り込むと、悪びれることなく“にぱぁ”と屈託のない笑みを浮かべるのであった……最後に不穏な疑問符を残して……。
「……で、とは?」
瞬時にそう口にして「しまった!」と思った時には……。
「どうだった? ねぇ、どうだったのかな、かな? んん~ん?」
うん……前言撤回。“ニヤ、ニヤ”と思いっ切り悪びれた邪な笑みを浮かべ、何やらグラビア誌面の女性のようなポーズをとりながら、彼女はそうのたもうた……んだが、ねぇ?
ええ!? 確かに胸はある! ありますとも! それも、圧倒的なボリュームが!! ただ、なぁ……。
俺は「セクスィダイナマイツポーズ」などと訳の分からんことを口走る彼女の、頭の天辺から足のつま先までを見下ろしてゆ……終える……って、早っ!?
そこへと辿り着くまでの、そのあまりの短さときたら……うん! 相変わらず、チンチクリンだよ!!
胸さえなければ小学生に間違えられかねない幼い容姿に、そのポーズはあまりも……ねぇ?
そんな白けた空気を感じ取ったのか?
「むうぅ? ノリが悪い! ノリが悪いよ、明人くん!!」
と、不満を漏らす彼女……いや、そっちじゃなくて!
「えぇ~と……一ノ瀬先生? う…後ろを……」
「一ノ瀬先生? 一体、何をなさっておられるのですか?」
如何やら俺の忠告は……少しばかり遅かったようだ。
俺の言葉を遮って、地獄の底から響いてきたような底冷えのする声色に、その場の空気が“キンッ”と一瞬にして凍りつく。
恐る恐る妙にぎこちない動きでゆっくりと後ろを振り返る一ノ瀬先生。擬音にすれば“ギギギギギッ”であろうか?
そんな彼女が、そこで目にしたものは……夜叉だ! 夜叉が、いる? って、ええっ!? 何! 錯覚? マジで背後にスタ○ドがいるんですけど!!
「「ひぃいいっ!?」」
「ち、千早ちゃん……怖い!?」
あ!? それあかん!
そう思った瞬間“ピシリッ”と凍てついた空気に亀裂が走った。柊さんから発せられている重苦しい気配が、更にその圧力を増したのだ。
言葉にこそ出さないものの、その目は克明に物語っていた。つまりは「ああぁ~ん?」と……。
そんな心の恫喝に……。
「調子に乗りましたぁあああああぁぁぁぁぁ~~~~~っ!!」
見事なジャンピング土下座をキメて許しを乞うてる一ノ瀬先生。……何なんだろ、これ……?
「で? 真上さん……何故貴方まで、あんな悲鳴を上げたのですか?」
柊さんは、そう呆れたように問うてくるのだが……。いや、だって……ねぇ?
俺はゆっくりと右下へと視線を落とす。……一ノ瀬先生と絡み合う視線。互いに心の中で頷き合うと、俺は再び視線を柊さんへと戻し、意を決して言葉を紡いだ。
「いえね? ……夜叉が、視えたもので……」
「……夜叉? いやですね、一体……何のことでしょうか?」
いやいやいやいや、そんな! 幾らなんでも、誤魔化されませんよ!?
“ジー”と見つめる俺の視線に、何を思ったのだろうか? 不意に“ブツ、ブツ”と呟き始めたかと思うと……。
「真上さん? ……何も、視えていませんよ…ね?」
片方の肩を下げ片手で顔を覆うと、背後に“ゴゴゴゴゴゴ”と効果音を浮かべながら凍えるような冷たい声でそう訊ねてくる彼女を前に、俺は黙って頷くことしか出来ないのであった……。




