log in - 29 奪われゆく選択と、失われた選択肢。
この話には、不適切? 或いは、不快? と、感じれるかもしれない内容が含まれています。
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「ふうぅ~……」
俺は、ベットからゆくっくりと体を起こす。……暗い。
ヘッドギアを外した俺の視界を覆い尽す闇。周囲が暗闇に閉ざされる中、意外に強い端末の電源ランプが、室内を仄かに照らしているのであった。
俺は枕元へ供えてある加護へと手を伸ばし、その中からリモコンを一つ取り出した。“パッ”とまばゆい光が当たりを包み込み……。目がっ!? 目がぁあああああぁぁぁぁぁ~~~~~っ!!
ボタンを押し込むと同時にもたらされた閃光に焼かれた目が、激しい痛みと共に“チカ、チカ”と明滅を繰り返す。そ、そういえば、こんなに暗くなってから灯りをつけるのなんていつ以来だったか?
「あぁ~……8時、回ってるじゃん」
ようやく光に慣れてきた目に映し出された時計。そこに表示されている時刻を目にして、どおりで暗い筈だと納得する。
あの後、1日の出来事を2人に話したり。ミュレットがミュスカにからかわれて真っ赤になって慌てたりという一幕を交えながら、結構な時間長々と会話をしていたからなぁ……。
その時に夕食として食べたピザモドキが尾を引いているのだろうか? 何だか無性にピザが食べたい気分になっているのである。その訴えに応える様に、お腹が“グゥ~”と鳴り響くのであった……。
“ピッ”
通話を終えると、俺はどこか遠くを見るように窓に映る夜空を眺める。
……誘惑には、勝てなかったよ……。
空腹を訴えるお腹が、あちらで食べたピザ? の味を忘れられずに激しく唸りを上げるものだから……。ふっ、負けちまったよ……。
そう言えば、明後日は検査だっけか……。おそらく丸1日がかりになるだろうな?
だと、すれば……。うむ! ここは、徹夜一択。それ以外の選択肢があるだろうか? いや、無いっ!!
幸い体そのものは十分すぎるほど休めるうえ、いざとなれば向こうでも睡眠がとれるようなのだ。ならば……やるしかあるまい!
大自然の息吹と、美しい景色。何より、自由に動く体。その誘惑には、食欲以上に語る筈など無かった。
抗う事の出来ないその欲求に思いを馳せていると……。
“ピンポーン”
おっ!? 来たかな?
「はい、はぁ~~い……」
「お待たせいたしました、ピザキャップです! ご注文のピザをお届けに参りましたっ!!」
思い体を引き摺る様に辿り着いた玄関のドアを“カチャリ”と開けると同時に、快活な女性の声が響いて来た。
年の頃は20歳前後だろうか? 短めな黒髪をポニーテールの様に後ろで結った、割と長身の女性。
人懐っこそうな笑顔はその幼顔と相まって、美人というより可愛いという表現が当てはまるだろうか? もっとも、この年齢の女性に対して可愛いという言葉が、適切な意味で受け止められるかは別として……。
なんにしても……珍しいな……?
深刻化する少子化対策の為に、半世紀以上も前に施行された結婚年齢の引き下げ。それもさほどの効果を示せないまま極度の高齢化社会へと陥ったこの国が、時期に急速な人口の減少を迎えるのは当然の結果であったのだろう。
そしてそこに、男の願望たる一夫多妻制の導入が、呆れるほどのスピード可決したのは当然の流れ……だったのだろうか?
もっとも、その恩恵にあやかれるのは……ただし、イケメンに限る! っていう現実に、涙を呑んだ男達の怨嗟の叫びが轟いたとかいないとか……?
しかし、それすらも嘲笑うかのように訪れた、3年前の大災害による世界規模での人口の減少。ただでさえ働き手が減少していた所にあの災害は……まさに、泣きっ面に蜂と言ったところだろう。
復興やら立て直しやらで労働需要が高まる中。どの事業も従業員の確保に勤しみ、今やバブル期すら真っ青の、高給金時代を迎えているのだ。
もっとも、それは男性にのみに限られているのだが……。これは、別に男尊女卑とかの類などでは無い。 まあ、女性からしてみれば、似たようなものだと憤る者も大勢いるのだが……。
根本的な問題の解決として。言い方は悪いのだが、働き手の増産は急務だからなのである。
ようするに、だ……。男に、女を囲える資金を集めよう……と、いうことだな。なし崩し的に女性を家庭に入れようとしている事を、なりふりかまっている余裕すら既に無いのだろう政府は、最早隠そうともしていないのだった。
まあ、イケメンに囲われて左団扇な生活を夢見ている女性も、少なからず存在するのもまた事実なのだが……。
ただまあ、いかに一夫多妻が男にとっても夢であるとしても、だ。中には……と、いうか、恐らくは大半の報われない男達の不満は高まる訳で……。それを解消するという名目で、風俗の国営化が決まったのだった。
遊郭。かつて存在していたその名を宛がいそう名づけられた施設には、大きく分けて2種類の女性達が務めていた。
1つは男と同じで一定数いるであろう報われない女達。
そして、もう一つが……犯罪を犯した女性。女囚……で、ある。
一般の女性は避妊が可能なのだが、子供を産むと国から報酬と共に養育の援助が受けられるためか、避妊をする女性は少ないらしい。
対して女囚の方は、当然の様に避妊が禁じられており、言わば強制的に子作りを課せられているのだった。
表向きは更生の為の奉仕活動に従事する。と、いうことになってはいるのだが……。
確かに子供を産んで、その子をしっかり育てる事が出来るのなら、それは更生したといえなくも無いのだろうけれど……。
そんな実状もあってだろうか? 早々に牧場などと揶揄される様になっていた。
もっとも、これが1世紀も前であったのなら、揶揄どころか政府に対して非難が殺到していた事だろうに……時代とは、かくも変わりゆくものなのであろうか?
こう、長々と脳内解説をしておいて、一体何が言いたいのかといえば、だ。このレベルの年頃の女性が普通の企業で働いているのは、非常に珍しい事なのだ。
大抵は、イケメンのリア充共に囲われているからなぁ……。まあ、中にはそういう男を毛嫌いする女性も確かにいるのだけれど……。
要するのこの女性もしっかりと自分の芯? のようなものを持っている、ということだろうか?
「……と、丁度いただきます。ありがとうございました! またのご利用、お待ちしておりますっ!!」
そう言って彼女は、その“スラリ”としたモデルの様な長身の為だろうか? それに加えて、割とピッタリしている制服も相まってか、平均的であろうと思われるにも拘らず大きく張り出した胸の膨らみを“フルン”と揺らしながら、颯爽と去って行くのであった。
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夜の帳に覆われた森。
“シン”と静まり返った周囲を警戒しながら暗闇の中を歩いて行く。
「それにしても、だ……何と面妖な?」
光の射し込まない深淵の闇。
空に浮かぶ月の光さえ、今は厚い雲に遮られて届きはしない。
にも、拘らず。俺の目には、周囲の様子がハッキリと映し出されていた。
「別に……明るく見えるという訳でも、ないんだよなぁ……?」
こう、よく漫画やアニメ、一部のゲームなんかで暗闇の背景の中、光源が一切無いにも拘らず周囲の物体が鮮明に映写されていたりする……そんな感じ?
これ、実際にリアルな感覚で体験すると、違和感がハンパない。なんとも摩訶不思議な光景だ。恐らく【真眼】の効果だと思うのだけれど……。
そんな風に周囲を見渡していた俺の右腕が、不意に跳ね上がり……。
“ザンッ”
「暗闇の中で、真っ黒な蛇の姿が、はっきり認識できるのは……いかがなものなのだろうか?」
音も無く頭上から襲いかかって来た黒蛇の首を一刀のもとに切り飛ばした俺は、首を失ってもまだ悶える様に地面でうねる闇色の長胴を眺めながら、何とも言えない微妙な感情を抱くのであった。
カースドヴァイパー。
高い隠密性と凶悪な呪毒を持つ、夜の狩人……らしいのだけれど?
普通なら危険極まりないこの魔物も、姿が丸見えではその脅威もあったものではないようだ。
なにしろ、先程から再三にわたって襲いかかって来るこの魔物ときたら、余程自らの隠密性に自信があるのだろう。此方が気付いている事などつゆ知らずと、毎回無防備に頭上から躍り出ては同じ様に首を跳ね飛ばされて行くのだ。
最早、夜の狩人(笑)にしかなっていなかった。
その後もウルフ系の魔物やバット系の魔物を倒しながら、暗い森の中を彷徨う様に歩いていた俺の前に……コイツが、立ち塞がったのだ。
“ドゥルルルルッ……ズガガガガガガガガガッ……ズッドゥウンンッ……”
周囲の木々が無惨に弾け飛び、大地が醜く抉り取られて行く。
圧縮された空気が、散弾の様に巻き散らかされ。時に、収束された空気が、大気を震わせながら一直線に解き放たれる。
今までの隠密重視の無音戦闘とは打って変わった、真夜中だというのに騒音巻き散らかすこのはた迷惑な魔物の名は、ブラストボア。全高5メートルを超えるであろう巨大な猪であった。
「て、うおぉおおおうぅっ!?」
暢気に脳内解説をしている場合じゃなかったよ!
雨あられと降り注ぐ散弾を掻い潜りながら、呼吸の合間を縫っては瞬歩を使って間合いを詰める。目の前へと迫る真紅の巨体。その重量を支える前足を切りつけると、俺は即座に距離をとる。
ヒットアンドアウェイ、この繰り返し。深追いは禁物だ。この、巨体なのだ。伸し掛かられただけでも、下手をすれば即死だろう。
ひりつくような緊張感に意識を“ガリ、ガリ”と削られて行く時間が流れ、幾度目の攻撃だったであろうか? ようやく右前脚から崩れ落ちるブラストボア。
すぐに起き上っては見せるものの、その巨体が故であろうか? 流石に3本の足では自重を支えきれないようで、生まれたての小鹿の様に“プルプル、カクカク”と全身を震わせている。
「ブッ、ブゥモォオオオオオォォォォォ~~~~~ッ」
怒り? に任せて放たれた散弾は、それでも先ほどまでの勢いは無く。それを難なく回避した俺は、左前脚へと攻撃を集中させて行く。
「ブッ、ブギィイイイイイィィィィィ~~~~~ッ!!」
“ズズンッ”と大地を揺るがす轟音と共に、遂に前方へと前屈みに崩れ落ちるブラストボアの悲鳴? が、深い闇に包まれた森の中へと響き渡った。
「ふうぅ~~っ……しかし、これはまた……」
周囲の余りの惨状に、地面に巨体を沈めながら“フゥ、フゥ”と荒い呼吸を繰り返すこの環境破壊の犯人を前にして、呆れた様な気の抜けた声が零れてしまうのであった……。
「流石にこれだけでかいと、解体も一苦労だな……」
観念したのだろうか? 首を切り裂かれ止めを刺される瞬間まで、ただ“ジッ”と俺の事を見つめていたこのブラストボアの様子を、【解体】を続けながら思い返していると……。
「フキッ、フキィイイイィィッ……」
藪の奥から、今のこれにも抱きかかえられるほどの大きさのブラストボアに子供? が、歩み寄って来たではないか……。
俺の足元までやって来たそのウリ坊は、1度親? へと鼻先を近づけると“コテン”と小首を傾げ。その後、何故か俺の足へと鼻先を擦り合わせてじゃれついて来るのであった。
“ピコーン”
《スキル【従魔】習得しました》
“ピコーン”
《スキル【調教】習得しました》
……oh
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昏きに揺れる水面を眺めながら湖畔を歩く俺の足元を、ちょこまかと駆け回る真っ赤なウリ坊。
幸いなことに、先程までの大暴れの影響だろうか? あれ以降ほかの魔物と遭遇する事も無く、子連れ? で、ここまで来る事が出来た。
「俺はお前の親の仇……だと、思うのだけどなぁ?」
抱き上げた俺の顔に“フギッ、プギッ”と嬉しそうに鼻先を擦り付けてくるウリ坊の様子に、俺の口から「はぁ~」とため息が零れる。
“ピコーン”
《テイムモンスターに名前を付けてください》
……テイムを拒否する権利が、俺には無いと……?
テイムするしないをすっ飛ばして名づけを強要されているという現実に、俺の口から再び「はぁ~~~……」と吐き出された溜息が、ようやく顔を覗かせた月影が浮かぶ湖面を滑るように、夜風に乗って流れて行くのであった
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ヴァイオレット
[種族]ブラストボア・パピー Lv-3 ※盟約
[称号]
〈※アギトの従魔〉〈ウリ坊〉
[満腹度]89%
VP - 100%(375/375)
SP - 200/200
MP - 150/150
STR - 190
VIT - 155
MAG - 120
AGI - 140
DEX - 90
MND - 130
LUK - 16
TEC - 5
[種族特性]
【空間圧縮 Lv-1】
[スキル]
【突進 Lv-4】【魔力操作 Lv-2】【射撃 Lv-2】【痛撃 Lv-1】【☆騎獣 Lv-1】
【 】【 】【 】【 】【 】
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……なんか、強くね? このレベルで、しかもパピーって割りには……。契約状態も、いきなり盟約だし……。
こんなにもちんまくて愛らしい姿にそぐわぬステータス。思わず目を見張る俺の目の前で、ヴァイオレットはつぶらな瞳で此方を見詰めながら“コテン”と首を傾げるのだった。
ちなみに名前の由来はといえば、赤いうえにどうやら雌のようだからだ。……俺に名づけのセンスを求めるでないっ!!




