log in - 02 神殿
気が付くと、薄暗い建物の中にいた。
繊細な彫刻の施された壁や柱。そして、女神? が描かれたステンドグラスが目に付いた。
まるで神殿みたいだと思っていたら、それを肯定する声が使用面から投げかけられた。
「彷徨える魂よ、転生の神殿へようこそ」
突然声をかけられ驚きながらも、そちらの方へと顔を向けてみる。
すると、巫女装束と修道服を足して二で割った様な衣装をまとった、20代中頃の女性が笑顔で佇んでいた。
優しげに微笑むその女性の後ろには、祭壇の様なものが見えている。
「此処では彷徨える魂を、新たなる世界へ転生させる為の儀式を執り行っております」
転生と言う言葉を聞き、このゲームの概要を思い出す。
この『リンカーネーション・オンライン』はラノベ等に良く使われる異世界転生をモチーフにした、剣と魔法のファンタジーRPGである。
特筆すべき点は、肝心な転生先の種族が選べない事だろう。
そう、種族はランダムで選択されのだ。
もしも本当に望まない種族である場合、メイキングポイントを10使うことで最大3回やり直しが可能となる。
ちなみにメイキングポイントの初期値は30で、課金で10ポイント1000円、最大20ポイント2000円分まで増やせると言う話だ。
これを知って思ったことは、仏の顔も三度まで、地獄の沙汰も金次第である…少し違うか?
「それでは、まず初めに貴方のお名前をお聞かせいただいてもよろしいでしょうか?」
これはもう決めてあった。
目の前に現れた入力画面に、前もって考えていた名前を手早く打ち込み「自分の名前は、アギトです」と答える。
まあ、リアルネームの明人をもじっただけなのだが。
すると《転生者名に『アギト』が設定されました》とインフォが流れた。
「アギト様ですね」
「それではこれより、アギト様に適合する転生先を選択しますがよろしいでしょうか?」
「はい宜しくお願いします」
そう答えると、全身を柔らかな光が照らし、数秒後光が収まると“ピコーン”と目の前にウィンドウが開いた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ゴブリン-C
醜悪な姿をした妖精種。
成長こそ早いものの、神罰により能力の成長が低い。
VP - D
SP - D+
MP - E
STR - D
VIT - D
MAG - E
AGI - B+
DEX - D-
MND - E
LUK - B
+成長促進
+神罰
メイキングポイント+20
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
これはまた……。
一瞬絶句していると「此方で宜しいでしょうか?」と女性に声をかけられた。
「いやちょっと待ってください」
そう答えると共にウインドウを注視する。
まずゴブリン-CのCはレアリティの様だ。実際どの位なのかは分からないが、まあそれほど高くはないだろう。
次にステータスの横にあるのがレベルアップによる能力の上昇率でE-が最低でE、E+と上がっていく様だ。
ちなみにVPはバイタルポイント? でHPの変わりになり、正確な数値は分らずパーセンテージで表示される。
SPはスタミナポイントでアーツによる消費だけでなく通常の行動でも消耗していく。
その他はINTの代わりにMAGになっている所だろう。
まあ、従来のゲームならともかく、VRで知能が上がったとか言われても実際頭がよくなった訳でもないから違和感が有る。
それなら純粋に魔法関係の能力が上がったと言う方がしっくりくるだろう。
そして成長促進と神罰だが、成長促進のKPはカルマポイントの略で経験値に当たるものだがステータスには表示されない隠しパラメーターだ。
まあ、これは良いだろう。
問題は神罰なのだが、能力成長率減少はLVUP時の能力の上昇値が減り、収得EP半減はレベルアップ時に得られるEPが半分になると言う事らしい。
ちなみにEPはエクストラポイントの略で、任意でステータスに振り分けられるポイントである。
最後にメイキングポイント+20はこの後のスキルの習得や能力に振り分けに使えるポイントが20加算されると言う事だ。
「うん、縛りプレイだな」
ボソリと呟いた自分の目の前では、未だ女性が微笑みながら此方を見守っているのであった。