log in - 19 血統
「……知らない天井だ……」
などとお約束のセリフを吐いてみてから、俺はゆっくりと体を起こした。
あぁ……普通に動く体……普通に動ける体の、なんと素晴らしい事か。そんな、当たり前の様に何の違和感も無く動く体に何度目かの感動を覚えていると……。
“ピコーン”
《【福音】の効果により【錬加水晶】を入手しました。》
……あぁ、そういえば、セットしていたなぁ………。
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【錬加水晶】
[系統]素材
[属性]-
[効果]
鍛冶用錬金素材。
これを用いる事で融合鍛錬が可能となる。
〈高品質〉
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で、確認してみたんだが、どうやら鍛冶で使う素材のようだ。
「鍛冶素材かぁ……そういえば、生産がらみのトンでもスキルがあったっけか……」
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【★真繰生産】
[アビリティ]
幻想工房
[アーツ]
工房具現化
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この[アビリティ]幻想工房は、工房といっても工房具現化によって展開されるどこぞの固有結界の様なものだ。そして、この幻想工房は、EPをつぎ込むことで設備などを強化が出来るだけに止まらずEPを使い素材等を生み出したりとかなり出鱈目な性能を持つ。
何よりも反則じみているのは、素材等をEPへと還元する事すらも可能なところだろう。まあ、EP還元を除けばあくまで工房なのでその真価を発揮する為には生産スキルが必要になる訳だが……。
更に付け加えるのならば、今の俺では10分ちょっとしか使用する事が出来ないのだが……。てか、展開するのにMP200消費で維持するのに毎分MP10消費、おまけに展開中はSPとMPが自然回復しないときた。
これ、設備などを強化すると消費MPが増えるみたいだし……いっそ無駄に溜まったEPをMPにつぎ込むか? などと一瞬思ったが、EPはレベルアップで上がる事の無いTECに振りたいところなのが悩ましい。
「しかし生産かぁ…そういえばオーレルは鍛冶を、リュシオーネは細工を持っていたよな?…教わるか?」
そんなことを考えながらベットから降りた自分は、何不自由なく動く体に再び歓喜する。
「あぁ…やっぱりいいな……うしっ!いくかっ!」
とりあえずは、だ……リュシオーネに念を押された社とやらに行ってみる事にするか? そう考ええると俺は、善は急げと部屋を後にするのだった……。
でだ、一階へと降りてきたのだが……何ぞこれ?
足元を“トテチタッ”と動き回るちんまい生き物が……。
「ふぇ? アギトさんお出かけですか?」
「あ、あぁ……コイツは何だ?」
そう、足元で忙しなく動き続けている生き物を指さした。
「この子はブラウニーのラニーちゃんです」
と、彼女は自分の足元へと駆け寄って来たその生き物を、愛おしそうに抱き上げる。その、豊満な胸の膨らみに半ば埋まる様に抱きかかえられているラニ―ちゃんとやらが、微妙に苦しそうに見えるのは……うん! 見なかった事にしておこう。
「それでその子は所謂、召喚獣とか使役獣とかそういう類の存在なのか?」
「はいっ!大切な家族ですっ!」
そう言いながら、彼女は“にぱぁ”と向日葵のような笑顔を向けてきた。
「それで、アギトさんはどちらにお出かけですか?」
「あぁ、社とやらに行ってみようと思ってな」
「あぁ~…リュシオーネ様に念を押されていたもんねぇ」
と、遠い目をして納得するミュレットにふと疑問をぶつけてみた。
「エレオノーラは兎も角として、何でリュシオーネにまで様付なんだ?」
そう、疑問とはそれである。
エレオノーラは立場的に図るとしても、リュシオーネの立場はあくまで世話役だ。結婚して役割から身を引いているとはいえ、未だ席自体は守部に在るエミラに対してはさん付けなのに、だ。
「あぁ~っ、えぇ~っ、何と言うかリュシオーネ様は……別格? みたいな感じでぇ……」
……リュシオーネさん、貴女いったい何をなさりましたのでしょうか……?
「いやっ! そういうのではな……くは無い訳でもないのですけど……て、そうじゃなくっ!」
……あるのかよっ!
「とにかく、鬼神リュシオーネを様付けしないの何て、この街にはオーレルさんを含め僅かにしかいませんよっ!」
……鬼神とか、物騒だな、おいっ!
「まあ確かに、えらくレベルとステータスが高いってのは分るが……」
「ふぇっ! アギトさん、識別系のスキル持ちですか? ………ていうかっ! リュシオーネ様のステータス見れたんですかぁっ!」
「おっ、おおぅ……」
勢いよく詰め寄ってくるミュレットに、思わず仰け反りながら頷く。
だってさ、ほら? いかにミュレットが小柄だと言えど、今の俺はもっと小柄なゴブリンだよ? そうなると、だ。勢いよく目の前に圧倒的な質量が、こう……“たゆん”とだなぁ……。
「でもアギトさんっ!それはリュシオーネ様の全力時のステータスとは程遠いですよっ!」
「いやまあ、スキルやアーツで底上げすればそりゃあ……」
まさか変身とかがある訳でもあるまいし……てか俺持ってるじゃん、それに類する様なスキルっ! まさかっ!? と思い、恐る恐るミュレットに目を向けると……。
「ノンッノンッ、リュシオーネ様は始祖の血統ですからっ!」
と、予想外の答えが返ってきた。
なんでもこの世界には、元々セリアンと呼ばれる種族は存在していなかったらしい。それは、神話の時代に白黒の神と便宜上呼ばれている名も無き神の手によって戦うために生み出された存在……とまあ、それがセリアンの原型らしいのだ。
ただ、当時のセリアンの元になった存在は、今のような人間に近いものではなく。所謂ワービーストの様な二足歩行の獣型だったらしい……各種族系で最初に生み出された個体を除いては……。
「要するに、その最初に生み出された個体の血筋が始祖の血統と言う訳か?」
「そういう事です。個体としての能力も圧倒的に差があるんですよ」
しかし、それは、神話の時代がどれほど昔かは分からないけど、それだけの時間がたてば結構広がると思うんだが? と、聞いてみたところ、どうにもその辺はよく分かっていないらしい。
なんでも、直系以外は世代と共に血が薄れていく説が有力とのことだが、それだと何処かで絶えていても可笑しくはないだろうし……。例え戦闘能力が隔絶していたとしても……子供が生まれなくては如何しようも無い訳だし……。
「しかし、その白黒の神とやらは如何して人型を最初の個体だけにしたんだ? わざわざ半獣型なんて作る必要は……うぐっ……つぅ……」
「ちょっ!アギトさん大丈夫っ!」
突然襲ってきた激しい頭痛と罪悪感に……何故か、その理由を理解する。
「あぁ…確かに軍事利用するなら成長の遅いアルアマニアより成長の速いゼルベルマニアの方が適しているな」
「ふぇぇっ!ア…アギト…さん?ねぇ…アギトさん、本当に大丈夫っ!」
ふと、ミュレットの声で我に返る……一体何が? それに……。
我に返る瞬間、脳裏にに浮かび上がったあの少女は誰なのだろう?
金色の髪をツインテールにした、小柄で幼い体つきながらも、可愛いより美しいの方が似合いそうなあの少女は……。そして……何故あの少女が、あんな凄惨なめにあっていたのだろうか?
その様子が脳裏に浮かび……俺は慌てて首を振った。
何故あんな目に?
……俺には何故かその理由が分かっていた……まるで、この手でそうしたかのように……。
俺は再び首を振った……。
「アギトさん、本当に大丈夫?」
「あぁ、すまない。心配をかけたようだな」
と、心配そうに顔を覗き込んでくるミュレットに、俺は直に礼を言った。
「あぇっ!? あっ、うんっ! だいじょぶ……大丈夫ならいいの、大丈夫なら……」
「???」
顔を真っ赤にし“ワタワタ”と不審な挙動をとりだした彼女に、首を傾げながら俺はラニ―ちゃんへと目を向ける。
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ラニ―
[種族]ブラウニー Lv-16 ※盟約
[称号]
〈※ミュレットの従魔〉〈家妖精〉
[満腹度]-%
VP - 100%
SP - 162/162
MP - 237/237
STR - 152
VIT - 202
MAG - 232
AGI - 189
DEX - 108
MND - 216
LUK - 266
[種族特性]
【家事全般 Lv-32】
[スキル]
【格闘 Lv-12】【投擲 Lv-18】【魔術 Lv-28】【土属性 Lv-25】【水属性 Lv-24】
【木属性 Lv-26】【警戒 Lv-32】【警備 Lv-32】【夜目 Lv-32】【魔力制御 Lv-32】
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……レベルの割には、えらく強くね?




