log in - 12 おぱぁ~い!
今、エレオノーラの案内で宿へと向かっているのだが…なぜか自分の隣には着物姿の、おぱっ…巨乳のウサミミお姉さん歩いているのであった。
樹木によって形作られた家屋。まるで森全体が街並みへと変成したかの様なその街の様子を眺めながら、自分は先程の一幕を思い返す。
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エレオノーラの余りにも静謐な佇まいにて述べられた歓迎の言葉に、一瞬思考が停止したものの幸い直ぐに再起を果たすこととなった……ある者のおかげで。
そう、それは此方を向くエレオノーラの後ろから現れた。
「……………………。…レ………ラ…まぁ~。エレ…ノ…ラ…まぁ~。エレオノーラさまぁ~」
その声に思考を取り戻した自分は、慌てて振り返るエレオノーラの横から“ヒョイ”と顔を覗かせ声の主を確認してみると……おぱぁ~い?
そう、そこにはおっぱいもとい巨乳を揺らしながら此方へと駆けてくるウサミミを付けた女性の姿があった。
「はあ、はあ、はあ。エ、エレオノーラ様!」
「リュシオーネ、落ち着くのですよ」
荒い呼吸を繰り返すたびにその大きな胸が上へ下へと…そして最後に勢いよくエレオノーラの名前を呼んだ瞬間……“ポヨ~ン”といったよ! いや……“ボヨヨ~ン”の方が正確か?
「何を、勝手に、御一人で、外へと行かれているのでくきゃっ!」
「つっ!」
勢いよく前のめりになった為にか、その女性は体勢を崩して倒れてゆく。
自分は咄嗟に瞬歩を使い倒れ込もうとする女性を支えると“ホニュン”……うん、何だろうこの確かな手応えは!
張りのある、それでいて吸い付くような柔らかさ!そして手の平から溢れ出る程の確かな存在感! こっ、これぞまさしく魔乳!
「ふっ、ふぁぁ~ん。だっ、だめですぅ。そっ、そんなにぃ~。くふぅ~ん。あっ! そんなにつよくしちゃぁ~だ、め……らめぇ~~~っ!」
「ア、アギト! 何をやっているのですかぁ~!」
……はっ、自分はいったい何を…いっ、いや思い出すな、思い出したらまた乳の魔力に囚われる!
「ひっ! やあぁ~ん。もうゆる…してぇ~~ん」
「ア、アギトぉ~~!」
……い、いかん。手が、自分の意識とは関係なく、手が勝手に…てか、止められん! これが魔乳の戦闘力か!
「ひぃあっ! やっ、やぁん。また、い…くぅん。ひぃいっく、いくっいっちゃうぅ~~~~っ!」
「アギト~~~~!」
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「すまない!」
最悪、THE DO・GE・ZAを披露する事も辞さない覚悟で自分はそう女性に謝罪をした。
「うっ、うぅ~~っ……責任、取って下さい……」
「ふぐっ!」
“ヘタリ”と地面に腰を落とし、顔を赤く上気させ潤んだ瞳で上目づかいにそう訴えてくる大人びた女性の、そんな仕草に胸を貫かれた感じがした。……ていうかどうするよ? 普通に可愛いんだけど!
腰まである薄く青みがかった髪を三つ編みにし。タレ目がかった大きな瞳にふっくらとして柔らかそうな唇が魅力的なその顔立ちは、美しさの中にも可愛らしさが存在しており、それがまた何処か母性的な優しさを感じさせるのであった。
「リュシオーネも何を口走っているのですか!」
「…ひぁっ!申し訳ありません!」
エレオノーラの一括で自分が口にした言葉の意味に思い至ったのか、その女性は顔を真っ赤にしてそう謝罪をしてきた。
「いや。此方こそ、本当にすまなかった」
お互いに謝罪をし合い、これで一件落着かと思いきや“ジィー”と未だに潤んだその瞳で此方を見つめていた彼女は……。
「ウサミミ・・・お嫌いですか?」
と、宣うた。
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それからずっとこのウサミミお姉さんことリュシオーネは自分の傍から離れ様とはしないのである。
自己紹介の時も「リュシオーネとお呼びください」と言われ「リュシオーネさん」と呼んだら泣かれそうになる始末。呼び捨てにした時の“パァー”っと輝くような笑顔は…うん、とても魅力的でした。
しかし…乳揉んだだけで如何してこんなに懐かれたのか? それと、自分の後ろ歩きながら腹を抱えて笑いを堪えているオーレル……お前は、後で殴る!
しかし本当に不思議な街並みだ。石の様に変化している家屋も多く見られる。
先ほど触って確認してみたのだが、樹木独特の何処か暖かさのある手触りで有りながら石の様に固いという、摩訶不思議な状態であった。
話を聞くと思っていた通り森の樹木を【精霊術】を用いて変成させているのだそうだ。
その不可思議な街の中を様々な話を聞きつつ歩いていると“クスリ”と隣から笑みが漏れてきた。
「『転生者』であるアギト様にとってこの街並みはとても珍しく映るのでしょうが、そろそろ少し落ち着いてくださいませ」
そう言って微笑みながら優しげな眼差しを向けてくるリュシオーネは…確かに大人の女性である様だ。どうやら、あちらこちらに視線を彷徨わせていたのに気付かれたらしい。
そう言えば彼女に対しては未だ識別を使ってはいなかったな。その事を思い出した自分は、誰彼構わず識別を使うのもアレだよなぁと思いつつも好奇心には逆らえなかった。
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リュシオーネ
[種族]エルダーセリアン(兎) Lv-18
[称号]
〈運命女神の祝福〉〈幸運女神の加護〉〈工芸女神の加護〉〈森霊の守部〉〈糸繰師〉
〈幻創細工職人〉
[満腹度]89%
VP - 100%
SP - 1792/1792
MP - 1344/1344
STR - 1526
VIT - 1090
MAG - 4234
AGI - 2616
DEX - 7320
MND - 4234
LUK - 7416
[種族特性]
【野性】【直感 Lv-Complete】【獣化】
[スキル]
【魔操糸 Lv-86】【体術 Lv-83】【舞闘 Lv-32】【付与魔術・師 Lv-76】【治癒魔術・師 Lv-38】
【氷属性 Lv-62】【雷属性 Lv-64】【溶属性 Lv-61】【爆属性 Lv-53】【灼属性 Lv-59】
【木属性 Lv-67】【魔力制御 Lv-107】【細工・師 Lv-113】【錬成・師 Lv-98】【幸運 Lv-Complete】
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……なんだ……これ?
目にしたステータスの余りのぶっ飛び具合に只々呆れるばかりである。てか、〈幸運女神の加護〉に振ってあるルビは何なん?
「?…!もしかして今、識別なさいましたか?」
「なっ!」
驚いた! まさか気づかれるとは思わなかったよ!
「何故気付かれたのか分からない」とでも顔に出ていたのだろうか? 彼女は“クスリ”と軽く笑みを漏らすとその理由を教えてくれた。
「私、〈運命女神の祝福〉の影響で【直感】がCompleteしている為か、何となくそういうのが分かってしまうのです」
「そうなのか。いや、勝手に済まなかった」
そんな自分の謝罪に対して…何か彼女には謝罪ばかりしている様な?
「良いのですよ。それは、少なからず私に対して興味を持って下されたから……という事でしょう?」
柔らかな笑みを浮かべながら優しげに、それでいて少し甘えた感じに言葉を返してくる彼女に対して、胸の奥から湧き上がってくる暖かい何かを……確かに感じるのであった。
そんなこんなで見詰め合う二人の甘酸っぱい雰囲気を感じ取ったのか“グルリン”と此方に振りかえったエレオノーラは……鬼と、化していた!
「二人してなに桃色空間を創造しているのですか!」
「「はぅ!」」
「ぶっわぁっはっはぁぁっ!」
エレオノーラの一括に二人して現実へと引き戻されると……こわっ! エレオノーラってばマジこわっ! もともとが小柄ながら精悍としていて凛々しいだけに、静かに、それでいて確かな怒りを漂わせるその様は…鬼や!ここに鬼がおる! ……あとオーレル。貴様は笑い過ぎだ!
慌ててお冠なエレオノーラをあたふたとしながら宥めるリュシオーネを見て、自分は咄嗟に話題を振っていた。
「そういえば転地の洞だが外れとはいえ街の中に直接繋いでいて大丈夫なのか?」
そんな自分のあからさまな態度に“ジロリ”と底冷えする様な冷たい視線を向けるエレオノーラと、救世主でも見る様な必要以上に熱い眼差しで見つめてくるリュシオーネ。対照的な二人の様子を見ながらじっと言葉を待っていると“フゥ”とため息をついた後「しょうがありませんね」とでも言いたげな苦笑を浮かべたエレオノーラは「その心配は無いのですよ」と言いつつリュシオーネへと目を向けた。
「ご説明いたしましょう!転地の洞とは杜衛の方々、及びその杜衛の方々がお認めになられた方のみが使用する事が出来るのです。そして認められた方も各ルート毎に別途、杜衛の方々の承認が必要となります。その為、不埒な者が勝手に使用する事は勿論の事、認められた方を脅して一緒に移動するという事も出来ないのです」
エレオノーラに目で促されたリュシオーネは、我が意を得たりと言わんばかりの満面の笑顔でそう説明をしてくれた。もしもリュシオーネの[種族]がセリアン(犬)であったのならば、今その尻尾は“ブンブン”とはちきれんばかりに振られている事だろう。
そんな彼女を眺めながらほっこりとしているエレオノーラには先程までの鬼気迫る……鬼気迫る様子は微塵も残ってはいなかった。内心“ホッ”と胸を撫で下ろすもそれが表に出ないよう努めつつ、先程までのドタバタで忘れかけていた疑問を聞いてみる事にする。
「そういえばアヴェンジャーのステータスは正常に表示されなかったのに、リュシオーネのステータスがちゃんと表示されたのは何でだ?少なくとも一部のステータスは確実にリュシオーネの方がアレより高いだろうから能力差と言う訳でも無いだろうし…」
「……ああそれはですね。理由は分かりませんが魔物の中には極稀にそういう個体が出現するのです……」
アヴェンジャーという言葉に一瞬驚いたような顔をするリュシオーネだったが、すぐに“コクコク”と何やら納得する様子を見せた。
そんな彼女の話によると、そういう魔物は特殊な個体に多く見られるようだ。所謂ユニークモンスターと言う奴か?
ただ稀に通常の魔物の中にもそういった個体が存在するらしい。そして、そういう個体はえてしてその種族的に有り得ない行動を取ったりする事から、本来その種族が持ちえないスキルを習得しているであろう事が窺えるらしい。あえて分類するのならば準ユニークモンスターといったところか?
「一説によると魔物にも転生が有り、そういった個体は前世の種族のスキル等を一部受け継いでいるんじゃないかとか言われているなぁ」
「ええ、ですので識別が正常に表示されない魔物には、他の同種の魔物と同じ対応は通用しないと見た方が良いでしょう」
「成程、全く新しい未知の魔物だと思って対峙した方が良い訳か」
「はい、それで宜しいかと」
オーレルとエレオノーラの捕捉に対して自分なりの見解を述べると、自分に“ピタリ”と寄り添ったリュシオーネが柔らかく微笑みながら同意してくれた。………てか、何時の間に! というか近い! いや、これ当たってる、当たっているよぅ……。
エレオノーラ程では無いものの、どちらかと言えば小柄に当たるリュシオーネだが自分は更に小柄のゴブリンだ。そんな自分の斜め後ろに“ピタリ”と寄り添われると、側頭部辺りに暖かく柔らかな感触と共に甘くそれでいて安らぎを与えてくれる様な優しい良い匂いがががががっ!
その様子を目にしたエレオノーラは……やばい、鬼が来る! という自分の内心を余所に“フゥ”とため息をつき心底呆れた様子でリュシオーネに声をかけた。
「如何したのですか、リュシオーナ。今の貴女は途轍もなく変ですよ?」
「あぅ」
その指摘に若干落ち込みつつも此方を“チラリ”と見ると頬を真っ赤に染めて恥ずかしそうに「運命なんですぅ」と小さな声で“ポツリ”と呟いた。その声の弱々しさとは裏腹に思いの外はっきりと聞き取れたその言葉に脳天が撃ち貫かれた様な感じがした。
……なに、なにこの可愛い生き物! マジお持ち帰りしたいんですけど! というかこの主従? のこういう所って凄く似ていないか?
未だに真っ赤な顔で俯きながら、それでも“ピタリ”と自分に寄り添い離れる様子を見せないリュシオーナを感じつつ…まぁ、こういうのも良いかと思う。
そう、産れてこの方感じた事の無い、何とも暖かくそして優しい確かな何かを胸の奥に感じるのであった。




