log in - 114 明暗を分ける、ゾンビディフェンス?
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「何だってんだ、くそっ! ぐがっ!? ま、また毒ついた!!」 「くぴっ!? マヒ…た……かい、ふ……プ、リィ……」 「ZZZZZ……」 「ぎゃ~~~~~っ!? 石に! 石になるぅ~~~~~っ!?」 「ド畜生めが! 切がねぇぞ!?」 「ちぃいっ!? 足元だ! この黒い水に触れているとヤベぇえっ!!」 「んな、どうしろってんだよ!?」 「水ん中だ! 湖の中では影響がねぇみてぇだ!!」 「いや、水中戦闘なんてできねぇよ!!」
阿鼻叫喚、である。
多くの『転生者』が、その身にもたらされる状態異常の数々に、無様を晒して右往左往するばかり。次から次へと上陸してくる海魔の前に、碌に交戦もできぬまま実にたわいなく蹂躙されていく。
数少ない抵抗らしい抵抗ができている『転生者』といえば、地に足のつかない者達。空を舞う者と……水の中を行く者のみ。その大半は、不遇職として蔑まれててきた者達。
そう、セレスティアとマーメイド……その、独擅場であった。
とはいえ、彼我の戦力差は圧倒的で……。多くの討ち漏らしが出るのも、致し方のないことであった。
そんな現状にあって、異彩を放つ者達がいた。
「つうか……アレ、何だよ!? 何でアレが、あんなにつえぇんだよ!?」 「む……無双しとる……」 「ありえねぇありえねぇありえねぇありえねぇ……」 「あの醜い姿が、なぜだか今はとてもかっこよく魅えるわ……♡」 「こ、これが……恋? いえ、魚だけに……鯉♡」 「うおぉ~い!? それ、吊り橋効果ですらないから! 混乱ついてるから!!」
それは……『転生者』にあらず。水の中を縦横無尽に駆け回り、その武力で無数の海魔を薙ぎ払う者達。その、あまりの不気味さと種族デメリットが故に、『転生者』達の誰1人として選択する者がいなかったとある種族。
ハゼに似た魚の顔。全身は鎧の如き鱗に覆われ、水かきのついたその手に握る三叉槍を巧みに操る彼等は……サハギン。
この、ヒューマン種至上主義……とまではいかずとも? おおよそヒューマン種が優遇される『戦軍のアンバッス』内において自治を認めさせた、この『港町トーレ』が誇る海軍……その、勇士達であった。
「くっそ、船は出せねぇのか!?」 「バッカ、あんな数に張りつかれたらすぐに沈むわ!!」 「んじゃこれ……どうしろっ、て……」 「どうし……って!? どうし、た……お、おい……?」
言葉の途中で、1人の『転生者』が光の粒子となって散っていく。
「ま……マジ、か……? ヤベぇえ! 即死判定来てるぞ!?」 「げっ!? 嘘だろっ!?」 「くそっ! 退くぞ!! 黒い水から離れるんだ!!」 「無理でしょ! 後ろ詰まってるわよ!? それに、退いてどうすんのよ!? 町が危険だわ!!」
村落の壊滅。
それは、彼等彼女等『転生者』が第1回イベントと称している過去の体験から、その多くが身を持って思い知らされていた。
「くそっ! 防げ! 何としてでも、防げ! それこそ、ゾンビアタックをかけてでも防げぇえええええっ!!」
幸いなことに? デスペナが重複することはない。どれだけ死のうと、その影響が変わることはないのだ。
その期間も、最後に死んだ時からに更新されるのみ。そう、幾たび死を繰り返そうとも……。
故に……。
『くっそぉおおおおおぅうっ! やってやらぁあああああっ!!』
過去に苦い思いを抱く者達は、その命を呈して奮起する。
「ちっ、やってらんねぇよ!」 「まったくだぜ……」 「他で狩しようぜ?」
あくまで自分本位の者達は、悪態ついてこの場を去っていく。
それが、後の明暗を決定づけることになるとは、この時の『転生者』達には知る由もなかった。
*
*
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いったい……どれほどの時が経ったのか……?
実際には、開戦からまだそれほど経ってはいない。
されど『転生者』達には、まるで悠久の時の中に身を置いているようにさえ感じられていた。
「ううぅ……身体、だりぃ……」 「何度目……だった、かしら……?」 「意識、が……もろぅぅ……」
幾度とも知れない死に戻りを経て、なおもこの場に留まる者達。
先刻、現在最大規模のギルドが全滅し……その後姿を見せなくなってから、彼等彼女等の戦い? は困窮を極めていた。
「ははははは……でもよ? 意外と、意地と気合と根性で動けるもんだよなぁ?」 「つうか……何で俺、ゲームでこんな意地張ってんだろ……?」 「ホント、そうよねぇ……? でも、さ? あの後味の悪さは、2度とごめんだわ!」
『確かにっ!!』
――……ンッ……ゥンッ……――
その時、1人の『転生者の耳が“ピクン”と跳ねる。
「……何……かしら?」
――……ゥンッ……ウゥンッ……ゴウゥンッ……――
次第に他の『転生者』達も、その重々しい調べを耳にする。
「何つうか……駆動音? ……って!? 何じゃありゃ~~~っ!?」
――……ゴウゥンッ……ゴウゥンッ……ゴウゥンッ……――
叫びと共に、1人の『転生者』が指差す先。その場に留まっていた『転生者』達は……目にする。
その……。
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