log in - 11 ようこそ! 始まりの町(?)へ
「…しかし、これは…なんとも」
「はわわ!死してなおもこの存在感…凄すぎます!」
うん……言ったね、はわわ……。
「何度も言うが、本当によく倒せたものだ」
死してなおも途轍もない威圧感を撒き散らしているその巨躯を眺めていると、ふとおかしなものが目に映った。
うつ伏せに倒れているからアレだが、正面から見れば恐らく胸の中心に当たるであろう位置に一際強い輝きを放つ赤い光点が一つ。その直ぐ傍に、もう一つ強い輝きを放つ光点が見られた。よく見てみると、その他にも赤い線の様なものが体の所々に見受けられる。
不思議に思いオーレルに聞いてみた所……。
「なんだ、アギトは【解体】をセットしているのか?」
どうも、これは貴重な素材の場所が光点で示されたり、赤い線に沿って刃を入れる事でスムーズに解体が出来るようにする【解体】のアシスト機能の様だ。
【解体】は持っていないが、その効果を[アビリティ]として備えているスキルは先のゴブリン軍団との戦闘で習得していたはずだ。
確認の為にステータスを表示してみて………うん、これは後回しにしよう。とりあえず確認が先だ!
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【☆殺撃】
[アビリティ]
追撃・真
振透葬撃
解体
[アーツ]
捌撃解体
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この【☆殺撃】、〈殺撃無双〉と言う称号を得る事で習得したスキルである。
どうやら件の軍団相手に一撃一殺で無双していた為に入手した称号の様だ。
ちなみに称号の効果はこれ。
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〈殺撃無双〉
[効果]
STRプラス補正・極
AGIプラス補正・大
DEXプラス補正・大
TECプラス補正・極
クリティカルポイント視覚化
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で【☆殺撃】の[アビリティ]の一つ、追撃は全ての武器使用攻撃にスキルレベル10毎につき一撃の追加攻撃効果が加わる。
凄いのは攻撃効果の減少が無い事だろう。普通に通常の攻撃力による追撃が入るのだ。
次に振透葬撃だがこれは自身のDEX値分、対象の防御力を無効化した攻撃を加えると言う壊れ効果だった。
要するに、自分のDEXが100で相手の防御力が150の場合、相手の防御力を50としてのダメージ計算になるのだ。
そして解体、言わずもがな【解体】の効果を持つ[アビリティ]である。
うん、捌撃解体は、攻撃対象を……生きたまま、解体……する。……早い話が、戦闘中に素材を確保する[アーツ]だよ! グロいよ!
「いや、【解体】の効果を持つスキルが有るからその影響みたいだな」
「成程…で、どうする?」
「物は試しとやってはみたい所だが、生憎と初めてなんで最初がコレと言うのも……」
明らかに初心者が手を出すような対象では無いだろう。なにせ、伝承だし……。
「ですがスキルの効果で解体ポイントは見えているのですよね?」
「ああ一応は」
「それでしたら心配せずとも大丈夫でしょう」
「そう…なのか?」
要するに解体する対象に【解体】のレベルが至っていなければアシストは発動しないと……。で、それでもリアルで解体の技術とかが有れば、そのまま解体して高品質の素材を得る事が出来る……と、いうことなのか?
それにしても……これ程の存在を解体出来るほどのレベルは、ないと思うのだが? そんな疑問に、凛とした様相でエレオノーラが答えてくれた。
「伝承によれば復讐個体は己を倒せし勇士に何やら凄い恩恵を与えたと記されていました」
認められた者にしか素材を得る事が出来ないとか、一体どこの伝説のなんちゃらだよ! ……ああ、伝承のなんちゃらだったっけか……。
「まあ、そういう事なら一つやってみるか」
そう言いながら剣を抜き解体作業に取り掛かった。
どの線から先に切っていけば良いのかとか、力の入れ加減だとかが何となく分かるのもスキルの効果なのだろうか?
そうこうしている内に光点の位置に差し迫り……コレなん?
一つは透き通った紫色の結晶体で中に金色の炎の様なものが揺らめいている。
もう一つは透き通った金色をした真球の結晶体で中に何やら複雑で立体的な文様が映し出されている。
「そっ!それは!」
「はわ!はわわわわ!」
何やら半端無いほど驚いているよ。そして、エレオノーラの二度目のはわわが……。
「【魔結晶】に…し、【真魔結晶】だとぉう!」
「はわわ!初めて見ました。これが…【真魔結晶】」
ああこの反応……もうね、お腹一杯なんだよ? そして三度目の……。
……ようやく平静を取り戻した二人に聞いてみた所。
この世界の生有るものは全て核と呼ばれるものが有るそうだ。とはいっても、本来は形として存在するものではなく、何というか霊的?な感じで存在しているものらしい。
で、本来と言うのも生有るものが死んだ時、その存在を形作る諸々のエネルギー的なものが核に凝縮して結晶化するからとの事だ。
因みにスケルトンなどの不死者等の仮初の生?を持つものも一応生有るものではあるらしい。
そして、その結晶化した核には幾つかの種類があるそうだ。
まずは基本となる核の結晶である【魔石】。これはこの世界において様々なエネルギー資源として利用される。
次に【魔血晶】。これは生前の存在の力が溶け込んでいる為に鍛冶など生産の付与素材として用いられる。
そして、問題となっている一つ目……【魔結晶】。これは生前の存在の力の結晶とも呼べるものでスキル等が内包されており、使い捨てだが魔力を通し使用することで習得することができる。また、付与素材としても非常に優秀であるとの事だ。
最後に、問題の2つ目である……【真魔結晶】。これは失われた秘法などを内包している言わば伝説の秘宝とも呼ばれる代物らしい。
この【真魔結晶】だが本来の核とはまるで関係が無いようで研究者? 曰く。強力な魔物の誕生に際し、その大量の魔素の収束に引き寄せられてその身に宿った。或いは真魔結晶を核としてそれを守るために生み出された魔物が存在するのでは? などと幾つかの仮説が立てられているそうだ。
「…なるほどな」
自分は手の中にある二つの結晶を見つめ……そのまま“スー”とオーレルの方へ……。
「いやいやいや!」
「アギト、流石にそれは……」
「いや、巻き込んだ手前、せめて素材を分けるくらいは当然だろう?」
その力いっぱいの拒絶に首をかしげる。
確かに貴重なものだし恐らく普通じゃ得られないスキルを習得できるのだろうけど……正直ね! 本当にお腹一杯なんですよ! サービス初日にこれ以上トンでも強化して、運営は自分に何をしろと言いたいのですか!?
「まあ、他の素材は兎も角としてもそいつは受け取れねぇな」
「はい、少なくとも【真魔結晶】の方は…下手をすると大国の国家予算レベルのお金が動くでしょうし」
「………」
流石伝承……ぱねぇっす!
「それにアギトは転生者だ。力が有るに越した事は無いだろう」
「そうですね。使う使わないは別として、力は得ればそれだけ物事に対する選択肢が増えます。転生者には様々な問題に直面すると聞きます。選択肢が多いに越したことはないでしょう」
「まあ、多すぎてもアレだが、転生者が直面する問題は単純な戦闘面から人間関係に至るまで多岐に渡るらしいからな」
「なるほど……な」
自分は既にアレなんだが……とは流石に言えずに納得してみせた。
「まあ俺としてはあの剣が何よりも気になるんだけどな。なんてぇか【鍛冶】持ちの血が騒ぐと言うか…」
「ふぅ。まったくオーレルは…」
頬に手を添えて“ヤレヤレ”と言う感じにため息をつくエレオノーラはその容姿も相まってとても大人びて見えた。
しかしあの剣か…。
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【怨剣・カオスマデア】
[系統]剣/両手剣
[耐久]-
[属性]無/呪
[斬]420
[突]400
[打]420
[魔]450
[アビリティ]
吸収
呪詛
[アーツ]
虚無
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【怨剣・デモリッシュオーグ】
[系統]剣/両手剣
[耐久]-
[属性]闇/呪
[斬]350
[突]300
[打]520
[魔]400
[アビリティ]
発散
呪詛
[アーツ]
怨霊爆鎖
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この鑑定結果を見て不可解な点に気付く。
アーツを使用していないのは兎も角、戦闘中に[アビリティ]が発動していた様には思えなかった。
……まあ、考えても分からんか、と早々に諦める。
そうして剣をインベントリに収めた所で。
「さて、それではアギトを私たちの『森守のルトヴェリス』へと案内致しましょう」
素材の回収も終わり、一息ついた所で“パン”と胸の前で手を叩いたエレオノーラがそう切り出した。
薄っすらと日の光が差し込む深い森の中を歩きながら二人にこの世界の事を聞いていく。
この世界には『テッラ』、『ユエル』、『ソレイア』と呼ばれる三つの大陸が有り此処は『テッラ』であるとの事。で、この『テッラ』には『戦軍のアンバッス』『海養のクリムト』『商運のミルト』『鉄血のオデット』の四つの国が有るそうだ。
『戦軍のアンバッス』は所謂軍事国家でハンターの育成にも力を上げているらしい。そして何よりこの国には迷宮都市が三つ存在しているらしい。迷宮都市…何だか心躍る響だ。
因みにハンターは所謂冒険者の様なもので、ハンターズギルドなるものも存在するそうだ。
『海養のクリムト』は漁業や養殖に力を上げている豊かな国らしい。何気にこの国にも迷宮都市が一つ有るそうだ。
『商運のミルト』は商業、通運に力を上げる商業国家の様だ。
『鉄血のオデット』は山岳地帯が多くその為か鉱山資源が豊富らしい。その為か鍛冶や細工等に力を入れている国でオーレルも昔はこの国で鍛冶を学んだと言う話だ。
この四つの国を四大国というらしい。
四つしか無いのに四大国とは何ぞや? と疑問に思った所、かつては幾つかの小国が点在していたそうだ。
で、『森守のルトヴェリス』は?と聞いた所、国としての体裁は取っていないとの事。
ただし、領土と呼べる地はテッラの三分の一くらいは有るそうだ……は?
くわしく聞いてみるとこのテッラ、中央に例の巨大な湖が全体の三分の一ほどに広がっているそうだ。そして、その湖を囲う様にして森がもう三分の一程に広がっているらしい。
でだ、『森守のルトヴェリス』はその名の示す通り森を守る役割を持つとの事。故に、森全体が守護の範囲になると言う訳だ…なにそれ?
「しかしアギトよ。お前さん、一体どこに転送されたんだ?」
「ん?いや、気が付いたら森の中だったんだが…」
そう言うと、あの場にいた経緯を詳しく説明した。その話を聞いていく内に、二人の表情が少しづつ曇ってゆく。
「オーレル、もしかすると」
「ああ、その辺りとなると恐らく『凶ツ洞』だろうな」
「そんな、確かにあそこの入り口には封印の影響による安息地が存在していますが」
その長く尖った耳を“シュン”とたれ下げて「幾らなんでもそんな…」と呟くエレオノーラ。
ああ、本当に見ていて飽きないなぁこの娘。
「その『凶ツ洞』てのは何なんだ」
「ああ、そいつは」
「私が説明します」
背筋を“ピン”と伸ばし神妙な面持ちでそう答えるエレオノーラに一瞬見とれてしまった内心を隠しつつ、その話に聞き入る。
その話の内容はこうだった。
遠い昔、このテッラに大いなる災いが訪れた。それは、古き邪神の力を宿す禍々しい異形の怪物だったそうだ。その時、テッラの地に存在した多くの生有るものがその異形によって奪われ、この森もその実に半分近くが消失したとの事だ。
大陸の三分の一を誇る森が半分消失か……その他が全くの無事だ何て事は有り得ないし、かなりヤバかったんじゃないか!?
「それで、当時の杜衛の一人が神授の秘宝を触媒とし、その命と引き換えに霊樹へと異形を封じ込めたのですよ」
その時に異形を封じた霊樹に生じた洞が迷宮化しその中に途轍もなく強力な魔物が跋扈していた事から『凶ツ洞』と呼ばれる様になったそうだ。
「恐らくは未だにあの奥では、封じられた異形が息を潜めているのですよ」
「何であんな洞が出来ているのかは分からんが……もしかしたら、何時の日にかその異形を滅ぼす事が出来るものが現れるのを待っているからかも知れねえな」
やめなさいオーレル! そんな期待のこもった様な目をわざとらしく向けてくるのは。エレオノーラも、そんな“ハッ”とした様子で此方を見ない!
まあそんなこんなで周囲を警戒しつつ話をしながら歩いていると前方にある一本の木に目がいった。
「…注連縄?」
そう目の前の木には注連縄が施されその根元には“ポッカリ”と洞が口を開けているのだ。
マップを確認してみる…うん、分かってはいたけれど『凶ツ洞』とは関係が無いな。マップの踏破状況を見てみれば最初の地点とは遠く離れている事が分かる。
「これは?」
「転地の洞なのですよ」
「転地?」
「まあ、転移でも良いんだけどな。単純に場所と場所を相互に繋いでいるだけなんでそう呼んでいるんだよ」
「割と何処にでも行く事が出来るものが転移。行き先を選択して送り出すものを転送と区別しているのですよ。それで、ですね? オーレルが言うように、転地の洞はあらかじめ決められている地点へと転送をしているだけですので転地、という訳なのですよ」
「まあ、ぶっちゃけ変な拘りなだけなんだけれどな!」
「お~れるぅ~」
目を三白眼状態にし“ジトー”と恨みがましくオーレルを見やるエレオノーラを眺めながら「まあ、多少の拘りは必要だよな」と言うと。
「そうなのですよ!オーレルはその辺が適当過ぎるのですよ!」
と、こちらに詰め寄り全身で“わかってくれますか”と訴えてくる…うん、分かったから少し落ち着こうね!近い、近いから! それと、オーレル……こっちを見ながら笑いを堪えるな!
「んんっ、それでは参りましょうか」
落ち着きを取り戻したエレオノーラのその言葉に無言で頷き、エレオノーラ、自分、オーレルの順でその洞へと入ってゆく。
薄い光に包まれた洞の中を通っていくと、急に目の前が開けた。
一瞬目が眩んだものの、直ぐに落ち着きを取り戻したその目に映った光景は……とにかく不思議な街並みだった。
よく、大きな木の中を彫りぬいて家にした、というのが有ると思う。だけど、この街では木々が重なり合い、融合しつつ家の様に変容したと言うのが正確だろう。
そんな街並みに見入っていると、エレオノーラが自分の方へと振り返り…こう述べた。
「『森守のルトヴェリス』へようこそ。私、『森守のルトヴェリス』が杜衛エレオノーラは、『転生者』アギトの来訪を心より歓迎いたします」
これにて序章が終了しました。
これまでお付き合いしてくださった方々に、深くお礼申し上げます。
今後の予定ですが、多少間を置いた後(少し区切りの良い所まで書いた後?)2~3日おきに投稿という形になると思います。
あくまで予定なので、発作的に投稿したり長く音信不通になる事も有るかも知れませんので、その旨ご了承頂けると幸いです。
それでは、今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。




