log in - 107 その頃の彼女等 【パネース遺跡ダンジョン編】 ③
――ズズゥ~~~~~ンンッ――
振り下ろされる巨大な拳が石畳に打ちつけられるたび、自身と紛う振動がと共に大轟音が響き渡る。それでも石畳が砕けることがないのは、ダンジョンたる所以だろうか?
まあ、破片が飛び散らないのは、あたし達にとっては幸いだわね。
とはいえ……。
「流石にアレをまともに受けたら、LP量とか防御力とか関係なくペシャンコになりそうよね……。というか、さ?」
――ブォンッ……ズズズゥ~~~~~ンンッ――
【瞬動】もかくやという速さで迫り、無駄のない動きで拳? を振り下ろす。その、あまりに滑らかな挙動。
「その大きさでこの動きって、それもうチートでしょうっ!?」
その拳骨を、あたしは何とか回避する。
すかさず隙を突いて足元を攻撃するスカサハ。その動きは、全く危なげがない。
うん、彼女はいい。あたしも何とか対応できてる。
ヴァイオレットは遠距離攻撃に専念させているし……となると唯一問題なのが、ステータス半減の対策ができたとはいえ元々SPDの低いリリウなんだけれ、ど……。
――ブォンッ――
迫りくる剛腕に合わせて突き出される槍……と、同時にその足は地面を離れ……。
“ガギンッ”
打ち合う骨に、槍の穂先は弾かれて……。
――ドゴォ~~~~~ンンッ――
地を打つ拳骨。揺れる広間。轟音とともに巻き起こった暴風に煽られて、宙を舞うその身が……“フワリ”と石床へと降り立つ。
うん、何だろうねアレ? 心配するだけ無駄だったわ……。
善戦……というか、戦闘そのものは有利に進められている……と、思う。
ただ……。
「決め手に、欠けるわね……」
質量という厄介さを、嫌というほど突きつけられる。ただでさえタフ……というか、しぶとい? アンデットが、その大きさゆえのタフネスをも兼ね備えているのだからさもありなん。
それでも、戦えてはいる。とはいえ、いい加減もどかしさの中に焦りが混じり始める。こう“チマ、チマ”と僅かづつしか削れていかないLPが“ジワリ、ジワリ”と回復していくのを見せられると、ね……。
「アレを……使うしか、ないのかしら?」
あたしは“チラリ”と、広間の隅で頭を抱えて息を潜めるスナッチへ目を向け……決断する。
うん! このままだと、いつ巻き込まれるか分かったもんじゃないわ!!
「ええぇい! 女は、度胸っ!! 【英霊召喚】出てきて、ヴァルバロスっ!!」
あたしの喚叫と共に、眩い光が周囲を包み。それが晴れた時、あたしの前に佇む……漆黒の痩躯。
2mを優に超える長身……その頂に近い額からは、血の色にも似た真紅の角が一本突き立っている。
それは……ゴブリン。幾度もの進化を経ていたった、その雄々しき姿。
「オレヲヨンダナ、アカネイリス」
伸びてきた黒い腕があたしの腰へと回り。
「あ?」
小柄なこの身を、その胸元へと抱き寄せる。
細身とはいえ、流石は所謂細マッチョ。軽々とあたしを抱き上げたわ……じゃなく!
「ヴァルくんぅ~、イニスちゃんとイチャイチャするのは、アレを倒してからにしてねぇ~」
「って、リリウっ!?」
「ム? リリウノアネゴ、カ……ココロエタ!」
「いや!? 勝手に心得ないでっ!!」
アギトさん……アギトとの一夜の後、あたしが得た称号〈潰える者達への身を注ぐ献身〉。その称号スキル【英霊召喚】は、正直言って幾分は慣れたものの使うのには未だ抵抗があった。
何せ、呼び出されるのがあたしの……女のこの身とその心に、未だ深く残るトラウマの元凶たる存在なんだもの……。
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