log in - 104 新兵器
「っ!? ありましたぁぁあっ!!」
空が白々としだした頃。その暁闇を劈くように響き渡る声。
どうやら、漸く最後の1種類が見つかったようだ。
【冥明の刹華】
主に埋葬地に植生する霊草で、夜明けの数分間だけ花を咲かせる。なお、必要とされるのは、花開いたその花弁だ。
数分……と、言われてはいるが、その間、実に1、2分程度である。花が散る前に見つけて採取を終えるのは、非常に困難であった。
まあ、これに輪をかけて面倒だったのが……。
【月宵立華の雫】
満月の夜に花開き。その、満天の星空の下で月光を浴び続けた花は、僅かに漂う雲にその明かりが翳った刹那のみ、湛える蜜に特殊な魔力を帯びる……ことがあるだ。
うん、必ずではないのだよ……。
しかも、魔力を帯びるのは、一夜につき一度のみとか、ね……。
因みに、こちらは埋葬地以外にも植生しているのだが、帯びる魔力の特性故か、埋葬地の方が魔力を帯びる確率が僅かとはいえ高まるのである。
「よし! 撤収作業に入れ!! ただし、まだ気を抜くなよ! 警戒は、密にだ!!」
俺は、寂れ朽ちかけた教会へと視線を向けながら、そう号令を発する。
『ユエル』の民との邂逅から数日。今、俺達は廃墟と化した町の墓場を訪れていた。
先の大狂乱でも分かる通り村町どころか場合によっては都市クラスが滅ぶこともないわけではないのがこの世界の現状だ。
「あ~、アギトさん、アギトさん! どうやら、でてしまったようですよ!!」
桜華の叫びに、そちらへと目を向ければ……。
『怨怨怨、怨怨怨怨怨ぉ~~~~~~~~~~……』
傍目には音露の同類にも見える半透明な影が、無数に宙へと浮かび上がっていく。
――黎明の亡霊――
なぜか明け方に現れる、亡者の群れであった。
「1番! 音露……フィアーズボイス、いっきま~~~す!!」
って!?
「全員、耳塞げぇぇえっ!!」
――キィィィヤァァァアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァ~~~~~~~~~~ッ――
俺の指示に被せるように、大響音の絶叫が辺り一面に響き渡る。
この、フィアーズボイス。効果は恐怖に混乱とフォビドゥーンタッチの劣化版だが、代わりに広範囲に影響を及ぼすことができる[アーツ]だ。そう、敵味方問わずに、だ。
それにしても、フォビドゥーンタッチもなんだが、アンデットはおろかゴーレムとかにもなぜか効くんだよな。恐怖や混乱なんかと無縁の存在にさえ効果を及ぼすこれら幾つかの精神系状態異常[アーツ]に、若干腑に落ちないものを覚えながらも……。
「各自、戦闘を開始せよ!」
俺は、そう号令を発した。
うん? 陣形とか連携はどうした、と?
いや、結局のところ家って寄せ集めだからな? 連携なんて付け焼き刃でこなそうとしても、逆にミスって危険になるだけだって。
まあ、フレンドリーファイアなんかは各自で考えて行動して……ないのも、1人いるが……。
うん! 他はうまく動いてくれると信じている。つうか、音露は後で説教だな。
桜華のレイピアが閃き。光を帯びたその刀身が、薄い霊体を紙のように切り裂いていく。
フレイの左右の手に握られた魔道具が瞬き。“トゥウンッ、トゥウンッ”と音を立てて迸る光弾が、霞のように揺らぐ霊体を貫き散らしていく。
音露の……音露はいいか……。何やら不思議な踊り? を宙で舞う音露から、俺はそっと視線を逸らした。
他にも数名のセレスティア、ヴァンパイア、レイスが応戦し、各自戦果を挙げていく。分かる通り、基本夜に強いメンバーを揃えてきている。
とはいえ、だ。夜明け間際の採集物があるので、新兵器のテストも兼ねてセレスティアも同行させているといった次第だ。
そう……勝利の鉤となる新兵器の一つ。それ、即ち……。
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【PT・ヴァリストス】
[系統]銃
[属性]光
[効果]
MP消費で魔弾の生成。及び、その射出。
[耐久]-
[射程]100
[威力]25×1/1MP
[魔付]-
〈極品質〉
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銃、である。
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