log in - 103 保険だよ、保険。
「ありがとうございます! これで何とか、目途が立ちそうです」
「いや、こちらとしても打算的なものがないわけではないのでな……」
そう、これは後々のための投資? ……というか、ぶっちゃけ迷惑料の先払いのようなものなのだ。
「そうなのですか?」
「ああ、いずれそちらの大陸へ『転生者』達が訪れるだろうが、その時迷惑をかけるであろうことが想像に難くない」
そう、現状を鑑みれば……。
「と、言いますと?」
「実は、な……」
俺の口から、重々しく『転生者』達のこれまでのやらかし共々、彼等彼女等の現状が語られる。
その、あまりの傍若無人さに……。
「うわぁ~……」
うん、呆れを通り越して、そりゃ引くわな。他の連中も似たり寄ったりの反応だ。
改めてこうして挙げてみると、やっぱひでぇもんだよな!
「まあ、そんな連中ばかりではないのだと知っていてもらいたいわけだ。流石にそのころには今よりはマシになっているとは思うが……。なっていることを、切に願う」
「は、ははははは……はい、それとなく注意を促しておきます」
「よろしく、頼む。切に……頼む」
うん、本当に切実だからね。
「それでは、わたくしどもはこれで……ですが、本当によろしいのですか? 本来でしたらわたくしどもの主から、それなり以上の報酬がある筈ですが……」
「いや、構わんよ。それに、あちらへの一般的な交通手段が、未だ途絶していることだし、な……? そういえば、お前たちはどうやってこちらへと来たのだ?」
そう、我がギルドならば行けなくもないが、現状では『ユエル大陸』への交通手段は存在していないのだ。
「ああ、わたくし【冥幽の門】が使えますので、それで」
なるほど。限定的ではあるが、転移系のスキルを持っているのか。
「では、またどこかで会うこともあるだろう」
「はい、その時はきちんと名乗り合えるよよいのですが……では」
彼女の背後で、月下の闇が“グニャリ”と歪み……“ポッカリ”と口を開いた、黒い穴。闇よりもなお暗いその深黒へと、1人……また、1人と身を投じていく骨達。
そうして、最後に彼女の背を見送ったところで、昏き口は夜の闇へと溶けていった。
…………………………。
静けさを取り戻す……墓場。
――……ピトッ――
「うひゃぁあああああっ!? あうっ! あぁううっ! あう、あううぅぅ……」
悪戯っ気を取り戻す音露……って、ていっ!
「あいたぁあああっ!?」
「ええぇい、やめいっ!! フレイも落ちつけ!」
「ひうっ!? ……ううぅ……」
涙目で俺の胸へと縋りつくフレイ。
いや、音露よ。[アーツ]まで使うってのはどうよ?
うん、どう考えてもやり過ぎだ!
「むう……物理攻撃が無効のレイスに、物理でダメージを入れるとは……。アギトさん、恐ろしい人!?」
「さ~て、作業作業。各自、隊列を組めぇ~……」
『はぁ~~~い!』
「無視するし!?」
つきあうと調子に乗るしな。皆、それが分かっている。
因みに、音露が使った[アーツ]フォビドゥーンタッチはダメージこそ与えられないものの、状態異常の恐慌(1)と錯乱(2)を与えるかなりえげつないものである。
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注釈
(1)恐慌は行動阻害(恐怖の効果)と共に、一定時間MPへのスリップダメージ。
(2)錯乱は行動のランダム化(混乱の効果)と共に、無差別攻撃の解禁。
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うん、そんなもん味方に使うなや!
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