log in - 102 求めるものは……。
「ふむ、その【セイハイ】とやらを求めて手の大陸まで来たと?」
「はい、それを必要としている理由までは口にすることができませんが、我々にとっては実に重要なものでして……」
「え~と……英霊召喚?」
俺の腕に、未だ“ヒシリ”としがみつきながらフレイが呟く。
うん、まあ……分かるが……。
「いや、杯の方ではなく、聖句の方だろう」
「聖句?」
「聖句って……聖書の一説。灰は灰に塵は塵に、でしょうか?」
首を“コテン”と傾げるフレイに、桜華がそう答えた。
そう、聖杯ではなく聖灰。聖なる土壌に埋葬された遺骸が、長い年月をかけて石灰化したものだ。
「ああ! 吸血鬼殺しの!?」
「て、いうかさ? 何でそれかな? 普通に遺灰いいじゃん!?」
いやぁ……流れ的に、何かに例えんといかんかな、と……。
「コホン! あ~、聖灰ならば多少は融通できるが?」
「本当ですか!?」
実のところ、称号〈神秘の匠〉のスキルである【頂の座・匠】。その[アーツ]である、理開く匠の座を使って素材の生成を行えば幾らでも……なんだけど、な。
うん? なら、こんな夜更けに馬鹿場に来んと、必要な素材を生成すればいいじゃないかって?
いや、目的が普通の『転生者』達が、一般的……と、言えるかは分からないが普通の生産設備を使ってアイテムを作ることにあるのだ。そう、あくまでも自力で……。
てなわけで、素材の採集からして手ずから行わなければ……行えなければならないということだ。現時点で採集できない素材を使っての生産なんて、普通はできないわけだからな。
と、話が反れたか? まあ、何だ……いずれ『ユエル大陸』へと『転生者』達は進出するであろう。ならば、今ここで恩を売っておいて悪いことにはなるまい。
「ああ。で、どれほど必要なのだ?」
「え~と……これくらい、ですか?」
明らかに遠慮している素振りで提示された量。
「ふむ……本当にそれで、足りるのか?」
「あうぅ……実は……」
少しばかり威を込めて聞いてみたところ……うん、結構な量だ。
……と、いうかだ。これだけの量を墓荒しで集めるのは、無理があるのでは……?
観念したのか項垂れるように吐露するその姿は……実に、シュールだ。いや、元々無理があることを理解はしているということか……。
にも拘らず……ということは、それだけの理由があるのだろう。
“ピコーン”
《『特殊依頼:【聖灰】を譲ろう』が発生しました》
《依頼を受けますか?》
☞ はい
いいえ
ふむ? この量は普品質のものであって、品質が高ければ高いほど少ない量で済むわけか……。うむ、最高品質ならば手持ちの分でも問題なく足りるな。
ん? 既にあるのかよ!? と? いや、何かと用途があるんだよ、聖灰って。生産における、言わば万能添加剤的な?
聖杯そのものだけを加えても、別に聖属性が付与されるといったような効果はない。だが、適量加えることで生産効率の上昇や、出来上がったアイテムの性能の向上があるのだ。
他にも、愛称のあまりよくない素材同士を組み合わせる時などにつなぎとして用いると、上手くいきやすくなったりとかな。
なので、常にそれなりの量をストックしているのだ。
「まあ、問題ない。これで……必要分を満たすことができるだろう」
はい、を選択。インベントリから聖灰の入った壺を必要な量分、彼女の前へと取り出した。
「はえ? ……って!? 最高品質っ!?」
“ザワリッ”
彼女の叫びに、息を呑む骨たち……。うん、言葉にすると……変だよな?
「こ、ここここここここ……」
「コケコッコ?」
「落ち着け! そして、音露も茶化すな……」
壊れたレコーダーのように「こ」を繰り返す彼女に、テンプレ的な茶々を入れる音露。これで、恐らくは俺よりも年上なんだよなぁ……。
と、音露の中の人のことを思う。人のことは言えないが、随分とはっちゃけた御仁だ。ストレス、酷いのだろうか……?
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