log in - 101 月下のテンプレ(ホラー)?
――ヒュルルルルルルゥ~~~~~……――
冷たい風が一陣、周囲を包む静けさの中を吹き抜けていく。生者の気配が感じられないその一帯に、夜天から降り注ぐ月の光に照らし出された大小様々な形をした石塔が浮かび上がっていた。
「ひぃ~~~ん、雰囲気あり過ぎですぅ~~~~~っ!?」
そう、縋り付く俺の腕へとけしからんものを押しつけるのは、凛々しい見た目に一対の翼背にする少女。セレスティアのフレイ。
「フレイ……素が出ているぞ?」
「はっ!? 申し訳ございま、ふひゃ~~~~~っ!?」
普段は凛として大人の女性っぽいのだが、恐らく中身は……小学生? それも、年少だろう。
まあ、普段の姿が姿故か同種族の者にはそれなり以上の人気があり、彼女のおかげで幾人かのセレスティアを確保できたのは幸いだった。
そんな彼女の背後に音も無く忍び寄り、その耳元に息を吹きかけた少女。半ば透けて向こう側の様子が筒抜けなその体は、宙を“フワリ、フワリ”と漂っている。
「……お前がそれをやると洒落にならんからやめてやれ」
「はぁ~い!」
このシチュエーションに誰よりもそぐう彼女の名は、音露。レイスである。
うん、お気づきだろうか? 我等は今、深夜の墓地を訪れている。
え? なぜか、と?
それは、素材の採集……主に、レイスとヴァンパイアの装備の材料を調達するために、夜な夜な各地の墓場を巡っているのだ。
うん、立派な墓荒らしだな!
「アギトさん、どうやら先客がおられるようですよ?」
そんな中、先へと指を突き出しながらそう告げるのは、燃えるような赤い髪を足元にまで垂らす……ちびっこ? 名を桜華と言い、種族はヴァンパイア。
うん、フレイとは真逆で中身は成人しているだろうね。実に落ち着いている。
と、どこか淑やかさすら感じさせる彼女が指差す先には……。
「ひぃ~~~~んんっ!?」
満天の星空の下、月明かりの薄闇の中に揺れる……白い影。俺の腕へとしがみつく、フレイの腕に力がこもる。
白い影。言葉としてはどうなのかとも思うが……間違えようもなく、それは白い人影だった。
いや、まあ……正確には……。
「……スケルトン!?」
それは、誰の叫び声か? その声を皮切りに、両陣営に緊張が走る。俺と1人を除いては……って!?
「まてまてまてまてぇ~~~いっ! 双方、武器を下ろせっ!!」
武器を構えての臨戦態勢。一瞬即発の気配に、俺は慌てて止めに入る。
なぜかって? 月光を照り返す頭蓋の上に浮かぶカーソルが……灰色だったからだよ!
この、カーソルの色による判別なんだが、あまり鵜呑みにすると取り返しのつかない事になる可能性があるのだ。
基本的に、『転生者』は青。『現地人』は緑。魔物や重犯罪者? などの敵対的な存在は赤で表示されるのだが、どうもこれって『転生者』達の全体的な認知度? なんかがかなり影響しているようなのだ。
例えば、だ。『現地人』は重犯罪者のような危険人物であったのだとしても『現地人』としての認知が優先されているのか、カーソルの色が変わらず緑のままだとか、な。
そして、思い出してほしい。スカサハ達、リザードマンの『部族ランスロリエ』との出会いを。
彼等の種族は一般には亜人種とされ、その扱いは様々だ。それというのも、個々、或いは部族によって人種に敵対的なものもいれば友好的なものもいるからにほかならない。
そんな中で『転生者』の多くは、リザードマンと聞いて何を思うだろう。まず、多くのゲームなどで知られる倒しべきモンスターだと認識するのではないだろうか? その『転生者』達の認知が故に、一部の『転生者』を除いてカーソルが赤く表示されて見えてしまうのだ。
そう、一部。その一部の者とは……【魔眼】や【邪眼】の持ち主である。種類を問わずにこれらの系統のスキルを持っていると、友好とまではいかずとも中立的な存在のカーソルが灰色に見えるのだ。今この場にいるメンバーだと、俺と種族スキルに【邪眼】がある桜華だな。
因みにだが、【邪眼】系は主に精神的な作用を及ぼすもので、【魔眼】系は主に物理的な効果を及ぼすものだとされている……らしいのだが、地域によって分類は様々なようだ。スコップとショベルのようなものか?
ついでに補足するが、ヴァンパイアの種族スキルである【邪眼】は個々によって効果が異なるようだが、主に魅了系が多いらしい。対して、通常のスキルでは大抵【○○の邪眼】や【○○の魔眼】など、おおよその効果が分かるものになっていたりする。
そして非常に重要なことに、『転生者』にテイマーなどが普及しない理由はあのある種のえげつなさの所為ではなく……というか、それ以前の問題としてテイムが可能な魔物を判別できないことにあるのだった。
うん、これだけの人数がいるのだ、一定数のモフラーは存在しているだろうしな。きっと、彼等彼女等は涙していることだろう。
でだ。目の前にいる彼等? だが、亜人種というわけではない。もちろんスケルトンでもない。彼等? はこことは別の大陸『ユエル』に住まう冥族と呼ばれる、れっきとした人種である。
この場合、『現地人』とほとんど関わりを持たない『転生者』達が他の大陸の情報など知る由もなく。スケルトン=アンデットという認知からカーソルが赤く表示されるのだろう。
「驚かせてすまんな。だが、お前達は『ユエル大陸』の冥族であろう? 何ようでここに?」
「む? もしや、貴殿らは伝え聞く『転生者』の方々ですか?」
その髑髏の口から奏でられる……鈴が鳴るような愛らしい少女の声。シュールだ……。
「あ、ああ、違いない、が……なぜそう思った?」
「いえ、こんな夜更けにこんな場所に徘徊している我々を目にすれば、たとえこの世界の住民であったとしても大抵の者でしたらアンデットと間違えて攻撃してくるでしょうから、ね……」
表情があれば苦笑を浮かべているであろう雰囲気でそう告げる彼女?
それ、答えになってないよな? ……いや、そうでもないのか? 所謂……消去法?
まあ、いずれにせよだ。自分達が如何に不信かを自覚しているようだ。
因みに、骨格で男女の判別ができるほどの見識を、俺は持ち合わせてはいない……すまぬ。
あ!? 一応言っておくが、服はきちんと着ているぞ。汚れてもいいようにだろうが、凄く簡素な奴を、な! これではアンデットにも間違われるだろうよ。
うん、どちらにせよ判別つかんよ……orz
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