log in - 100 我、幻視する。
「はい、どなた様ででしょうか?」
チャイムを鳴らして数拍。インターフォン越しに、落ち着きのある柔らかな女性の声が響いてくる。
「ご無沙汰してます、リリウですぅ~」
それに輪をかけてユルッユルなリリウの声が、辺りに揺曳した。
「あらあら、随分と早いお着きですこと。もう暫くかかると思っていましたのに……」
「はいぃ~、私はともかく、連れの2人はとっても強いのでぇ~……」
そのまま、インターフォン越しに揺ったりと会話し続ける2人。会話は続く。ゆるやかに……時間も、進む。
「……なぜかしら? あたし、養護老人ホームを幻視したわ……」
「は、ははははは……」
うん、俺も田舎の診療所の待合室を幻視したよ……。地方の小さな診療所とかだと、|毎日のように検診に来る《同じ顔ぶれの》? お年寄り達の集会の場のようになっているところもあるからなぁ……。
「え~と、そろそろいいかしら?」
「あら? あらあら、申し訳ございません。お待たせしてしまったようですわね? わたくし、こちらで鍛冶などを営なせていただいております、アロマと申します」
しばらくは漂うた緩やかな空気に毒気を抜かれていたものの、遂に痺れを切らして口を挟んだイニスに、少し慌てた様子? で彼女はそう名乗りを上げたのであった。
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「そう、ですか……。外ではそこまで酷い事になっているのですね……」
イベントと称されている『転生者』達のやらかしから、不遇種族と呼ばれる者達への迫害。その険悪な空気も相まっての『現地人』との軋轢と、これまでのことのあらましを聞いたアロマはどこか痛ましげにそう口を開いた。
まあ、それも仕方のないことだろう。この殺伐とも言える現状を煽るのに、一部の生産ビルドの『転生者』が一役を買っているというのだから……。
現在、生産ビルドの『転生者』が作り出す品々が、『現地人』のそれに遠く及ばないのは知るところであろう。そんな中、それなりの腕を持つ……と自負している彼等彼女等は、自らが作り上げたそれなり……だと思っている製品をぼったくりと言える金額で売り出しているのだ。
『現地人』の店売りと比べても性能はその半分にも満たないというのに、値段が10倍以上とか……。
普通であらば、誰がそんなもん買うんじゃっ! と、なるところなのだが。いかんせん『現地人』の店から半ば出禁に近い扱いを受けている現在、忸怩たる思いを抱きながらも手を出さざるを得ないというのが現状なのであった。
そんな鬱憤のはけ口として、不遇種族と蔑まれる「転生者」達は虐げられ。そんな憂さ晴らしの様子を目にする『現地人』達は、『転生者』と言う存在に強い嫌悪感を抱く、と……。悪循環である。
その改善のためにも、まずは……ざまぁ、からである。……いや、不遇種族の不遇の改善からである。
「それで、わたくしに何を求めておられるのでしょうか?」
「まずは……コレ等の生産、量産ができるよう、体制を整えたいのだ」
「? ……っ!? これ、は……」
インベントリから次々と取り出されていくソレ等に、彼女は目を瞬かせながら絶句する。
「協力して、いただけないだろうか?」
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