表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖剣破壊  作者: 上総海椰
6/22

2-2 遭遇戦

目の前を電気のようなものがはじけ、マントを羽織、覆面を付けた者が現れる。

身長はヴァロよりも少し低いぐらいか。体中布でおおわれており、肌の露出がほとんどない。

ヴァロと目線が交わり、一瞬時が止まる。

それは瞬きの間ほどの時間だったが、当事者たちには異様に長く感じられた。

動いたのは覆面をつけた者のほうが先だった。

覆面は背後に平屋があるのなら、余裕で飛び越えられるほどありえない跳躍を見せる。

覆面が跳躍した瞬間にヴァロの視界が光で埋め尽くされる。

ヴァロは思わず目を閉じた。

「ヴァロ!」

フィアの叫びが雷撃の音にかき消される。

ヴァロが雷撃を受けたと気づいたのは、それが終わってからだった。

地面がえぐられるも、ヴァロは無傷。

ヴァロはその自身のもつ強い魔法抵抗力のために大概の魔法は受け付けない。

ただ服は魔法をまともに受けて、ぼろぼろになっていた。

ヴァロは周囲の状況から攻撃を受けたのだと理解し、すぐさま剣を抜いた。

「無傷だと?それならそれで対応がないわけではない」

その姿を見て覆面は驚きで目を見開くも、何らかの構えをとる。


フィアはヴァロの無事を目で確認すると目の前の魔女を見据えた。

(カウンタートラップ。結界が何らかの方法で強制的に解かれると発動する類のモノ?

それにしてもなんという威力。相手がヴァロじゃなければ即死してる。

相手ははぐれ魔女…それもとんでもなく強力な)

フィアは相手の初撃からその力量を分析する。

フィアは馬車から降りて、ヴァロのそばに駆け寄る。

その覆面は地面に手を当てた。

「沈め」

ガキャ

石が割れる音が足元から聞こえたかと思うと、ヴァロの足元が沈みだす。

ヴァロの足元が砂となっている。

ヴァロの体はゆっくりと地面に吸い込まれていく。

砂地獄から抜け出そうと体を捻るも、それを早めるだけだ。

魔法抵抗力はあるといっても、魔法によって変容されたものまで効力があるわけではない。

つまりこのまま沈めば砂に埋もれてヴァロは死ぬ。

「ヴァロ」

遅れてフィアが背後で魔法式を展開する。

ヴァロの体は巨大な石に持ち上げられ、どうにかその砂地獄から抜け出した。

「魔法使い?魔女か」

覆面の服の合間からのぞかせる瞳がフィアをとらえる。

(魔法構成が早いとかいう以前に、式を描いている様子が全くみえない…そんなことって…)

魔法を使う際には魔法式を必要とする。

魔法式の複雑さはその魔法の精度を示し、魔法式の大きさはその魔法の威力を表す。

当然大きな魔法式を描こうとするにはそれなりの時間が必要だし、それなりの練度も必要とされる。

未熟な者が大魔法を扱うとなれば、魔法を暴発させる危険性があるというのはそのためだ。

目の前の魔女の扱った魔法式は威力、精度ともに明らかに規格外。

加えて魔法式を使う様が全く見られないという。

もし魔力だけで何かをしようにも魔法式なしでは力の方向性に欠けるため、強い魔法ににはならないし、

複雑な命令をこなすものにはならない。

今の魔法はヴァロの周囲の足元の地面の砂を分解するという高度なもの。

もしそんなものを魔法式を視認されずに発動することなどヴィヴィにすら不可能だ。

お互いがお互いを視認する。

ヴァロは石を伝って地面に降りる。

「フィア助かった」

「ヴァロが結界を解いた事でこちらを敵と認識しているみたい」

フィアは構えを解くことなくヴァロに語る。

先ほどの電気みたいなものが走ったのは結界を解いたものだったらしい。

以前ヴァロはその魔法抵抗力の高さにより結界を解除したことを思い出した。

媒介のない結界ならば、ヴァロが触るだけでたやすく破れるという。

「おい、あんた…」

ヴァロが言い終わる前に、相手の手から雷撃が放たれる。

ヴァロは反射で雷撃を剣でたたき切る。

たたき切られ力場を失った雷撃が周囲に四散する。

「退魔の宝剣か…。そんなものまで…」

覆面の魔女はどうやらこの剣に見覚えがあるらしい。

(やはり魔法式が早いのではなく、魔法式そのものを使っていない…。

ただ魔力を魔法に変換しているということは…)

フィアは自身の持つ杖を現出させる。

フィアだけが扱える彼女の最大の武器。

それを出すときはフィアが本気の戦闘を行う際だ。

「魔器か。珍しいな」

覆面は一瞬驚いた表情を浮かべるも、すぐに魔力を蓄え始める。

覆面の周囲からはバチバチと電気の音が聞こえてくる。

魔力を雷に変換しているという話だ。

「話を聞いてください」

フィアの声が雷鳴で届いていないのか、覆面は戦闘態勢を解くそぶりを見せない。

「どうやら戦うしかないみたい」

そう言ってフィアは魔法式の構成を編み始める。

フィアが戦闘態勢をとるのを見て、ヴァロも腹をくくる。

雷の音で言葉は相手に届いていないのか、覆面はフィアの言葉には無反応だった。

「ああ、そうだな」

敵意を向けられている以上、こちらもそれに応じるしかない。

空気が緊張を帯びる。

覆面は周囲に雷を纏い始める。漏れ出る雷が周囲に放出される。

普通の人間が食らえば間違いなく即死するほどの雷撃だろう。

相手は魔力を蓄えている。それも尋常ではない量の。

次の戦闘で間違いなく勝敗は決するのをヴァロは予感した。

「おはヨ。なーにやってんのサ」

場違いな陽気な声が周囲に響く。

寝ていたはずのドーラが荷台からひょっこりと顔を見せていた。

その場にいた三人の視線がそのドーラに集まる。

そんな三人など気にせずに、ドーラは目をこすりながら背伸びをする。

その男はその状況で一人だけ場違い感を醸し出していた。

「この感覚は…」

覆面はドーラを見つめしばらくの間ピクリとも動かない。。

覆面はドーラに手を向けると周囲にあった雷が収束し、ドーラのいる馬車めがけて飛んでいく。

ヴァロは何かを叫ぼうとしたが、声にならない。

それほどまでにその魔法は迅速かつ的確だった。

ドーラは無造作に掌を雷の来る方向へ向ける。

馬車の周囲が、轟音とともに雷によって円状にえぐられる。

魔力がほとんどないとはいえ、そこにいるのは歴代最強クラスの魔法使い。

どういった力を使ったのかは知らないが、自身に向けられた雷撃を逸らした。

「いきなり危ないダロ。荷物がだめになったらどうするのサ」

ドーラの指摘はどこまでもずれていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ