プロローグ
さてと二部ですわ。
よーやくここまでこれたw
塵も積もればなんちゃらですねぇ。
ササニーム編はもっと面白く作りたいと思っております。
新しいキャラとか、世界設定、そして伏線。
自身の腕がついていけるかどうかは知りませんが楽しんでやらせてもらいます。
もしよろしければお付き合いくだい。
読んでもらえると嬉しいっす。
月の明かりが照らす平原にその人影はあった。
草をふみわけながら彼女は歩みを止めない。
目の前に広がる森を突っ切り、その場所にたどり着く。
月明かりが照らし出すのは巨大な人型の魔獣。
その魔獣は規則正しい寝息を立て、その場に座っていた。
座っている姿だけでも彼女の身の丈の倍以上はあろうか。
志半ばで死ぬわけにはいかないし、これを野に放つわけにはいかない。
しかし、彼女には今の状況をどうにかするだけの手がない。
彼女は追い詰められていた。
手持ちの材料はそろそろ尽きてきている。
もともとこれだけの長期戦を想定して旅はしていない。
できるだけ身軽に、そして痕跡を残さずに動くのが彼女の旅だった。
少し長くその地にとどまり過ぎた。
そろそろ『狩人』に見つかってもおかしくはない。
人目につきにくい場所ではあるが、見つかるときは見つかるものだ。
そしてどんな肩書をもっていようと討たれるときは一瞬だ。
自身の見積もりがあまかったと思い知らされる。
自分の未熟さが招いた結果がこれだ。
もし師がこのことを見たらなんと愚痴を言われるだろうか。
今は亡き師の罵声を思い出し、彼女はほんの少し微笑んだ。
ここを管轄する聖堂回境師は『紅』という魔女のはずだ
彼女が何度か会ったことはあるが才気に満ちた女性だった。
魔法に対してひたむきな姿勢には好感が持てたし、
彼女の身の上にも多少の同情があって何かと気にかけていた。
およそ一年前にフゲンガルデンで何らかの事件があったと聞いたが、
彼女はまだ無事のようだ。最近では弟子も取ったと聞く。
『紅』は弟子はとらないことで有名だったが、どういった心境の変化だろう?
その弟子は若くして聖堂回境師を名乗ることを許されたと聞く。
聞くところによればラフェミナ様の一存で聖堂回境師になったとか。
聖堂回境師は魔女の中でも特別職。
教会にその存在を認められる上、『狩人』を指揮する立場になれる。
また煩わしい結社の上下関係等を考えずに、一人で魔法の探求することを保証される。
聖堂回境師になりたいと願い、日々研鑽を積んでいる魔女など掃いて捨てるほどいよう。聖堂回境師になるためには実績や実力が必要となる。
その階段を上ることなく一息にその職に就いたのだ。
それを希望する魔女たちの嫉妬はいかなるものか想像もつかない。
ふさわしくない者がその職に就くのであれば、自然淘汰されることになるだろう。
ただラフェミナ様は誰よりも先を見通せるお方。
そのラフェミナ様が選んだ才能に興味はあった。
『紅』の守る場所には魔王封印が施されている。
よほどのことがなければ、立場上それを放り出して動くような真似だけはすまい。
『紅』に協力を要請するのは最後の手段だ。
魔王封印の近くでこれだけのものを放ったとなれば、ブラックリストに載るのも確実になるが、
彼女にとってそれは些末なことだった。
目の前には変わらず巨大な魔獣が寝息をたてている。
「次こそは必ず破壊してやる。待っていろ…聖剣カフルギリア」
そう捨て台詞を残して彼女はその場を立ち去った。