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第四話 アリスいじめ~セレナ・ニラゴージュの事情~

今回も同じく、サブタイを『……の場合~』から『……の事情~』に変更しました。

 セレナ・ニラゴージュは、シアステッドに剣術を教えてられている(・・・・・・・・)アリスを見て、薄く笑っていた。


 セレナは、サリラーゼ家には及ばないが、メロシダ家のひとつ上の貴族階級を持つ、ニラゴージュ家の一人娘だ。


 幼い頃から同い年で、家(と言っても大きな屋敷)同士が近いリアフォールと仲が良く、いつも一緒に遊んでいた。


 二人は常に一緒で、更に家同士の交流が元々活発であった事もあり、お互いの家を毎日のようにいったり来たりして過ごしていた。


 そんな暮らしを長年続けて、今年。

 リアフォールと共に近くの優秀な普通科学校へ入学が決まったときは二人で大いに喜んだ。


 そして入学式。滞りなく進んだ式典の途中、新入生代表の言葉の際、壇上に立った、青く長い髪、百六十の自分より少し低い身長。金から茶色の瞳の清楚で可憐な少女にセレナは目を奪われた。

 アリスだった。


 アリスは普通科学校の中でも難しい部類に入るこの学校に、なんと主席の成績で試験を突破したという。


 比較的成績に自信があった自分でも多少難しいと感じた試験を難なくやり過ごし、主席で入ったアリスへ、セレナや他の新入生は羨望の眼差しを向けた。そして在校生や教師でさえも何故かアリスへ期待や驚きに満ちた視線を向けていた。


 セレナは知るよしもなかったが、アリスの入学試験の成績は、ここ数年見たこともないような高い成績だったのだという。


 そんな眼差しを一様に受けながら代表の挨拶を終えたアリスを見たセレナは、全ての生徒と同じようにアリスを見つめていた。

 そしてそんなアリスと同じクラスになった時にはさらに驚いた。

 もちろんリアフォールも一緒のクラスだった。


 成績のいいアリスへ興味を持ったセレナは、入学式が終わり、クラスの顔合わせの後に早速話しかけてみる事にした。


「ねえ、貴女」

「はい? えっと……セレナ、さん?」

「そう。セレナ・ニラゴージュ。これからよろしく」

「よろしく。アリス・クロニティです」


 そんな会話がセレナとアリスの始めての交流(ファーストコンタクト)だった。

 少しずつ二人は会話を重ね、一日に何度か喋る程度の仲になっていた。


 しかし、二月ほどたった頃、セレナには、アリスと会話をしているうちに、羨みとはまた違った感情が沸き上がって来るのが感じられた。


(なに、この感情? ……憧れ? 違う。……喜び? 違う。……慕い? 違うっ!


 セレナは今まで感じた事がない感情に戸惑いを覚えていた。


 そしてある日、セレナはシアステッド達によるいじめを目撃した。

 シアステッドとは、貴族と言えど、仲が良かった訳でもなく、同じクラスの一員として多少話したことがある程度だった。


 しかし、それを見た瞬間、セレナの中でカチッ何かが繋がった音がした。


(そう。そうか。私はアリスを妬んでいるんだ。そうか。私は、私はアリスを……)


 その日、それを感じたセレナは、夜も寝ず、ただただ感じた感情について考えていた。


 セレナはアリスと話しているうちに、アリスの苦手な部分を聞いていた。

 例えば魔法。アリスはA(マイナス)ランクの実力を持っているはず(・・)であるのに、魔法が苦手であること。

 それにD(プラス)ランクというアリスよりかなり劣っていると言えるセレナは、無意識に嫉妬していたのだ。


 何故自分ではなく、魔法が苦手なアリスに才能がある(ランクが高い)のか。

 何故魔法が苦手なのに、アリスに対して羨望の眼差しが。期待の眼差しが向けられるのか。

 セレナには理解が出来なかった。


 そしてついに、セレナには、アリスを嫉妬するする感情が強くなり、アリスをいじめる決意をした。


 決意をしたセレナを止められる物は何もない。

 次の学校へ行く日、セレナはシアステッドに接触した。


 自分をアリスいじめに参加させて欲しいと話した。

 アリスと話した内容を使ってシアステッドに取り入り、アリスいじめの中核まで登り詰めた。


 一番最初、アリスをいじめる輪に加わったとき、アリスはリアフォールを見ると、目を見張って驚きの表情を浮かべた。そしてそっと目を伏せ、悲しそうにうつむいていた。


 そんな様子を見て、リアフォールの心の奥底でチクリと何かが痛んだ気がしたが、そんな痛みはすぐに忘れてしまった。


 そしてセレナはリアフォールを誘い、仲間を増やすと同時に、リアフォールという貴重な回復魔法を使える魔法使いを連れて来たと、シアステッドからの評価も上がり、アリスいじめのリーダー格三人として、シアステッド、リアフォールと共に知られるようになったのだ。


 そんな今をセレナはとても満足していた。

 始めた直後にも、クラスメイトであるアリスをいじめる事に抵抗を覚えず、むしろある意味、弱い者(アリス)を見下す快感にも浸っていた。


 主にセレナがアリスへするいじめは、自身の得意な体術、特に護身術の練習と称する、皮肉にも、運動が出来ないアリスへの一方的な攻撃だ。


 セレナの言いつけで、アリスがセレナへ攻撃しようとすると、セレナの護身術が炸裂する。それも運動に関しては優秀なセレナの、だ。


 もちろん無傷な訳がないが、リアフォールの治療魔法や回復魔法で瞬時に治される。

 実は、セレナがリアフォールをアリスいじめに誘ったのは、単に自分がアリスへいじめる時間を、長く取りたいためであった。


 しかし、そんな卑劣な行為が許される筈もなく、アリスにとっての救世主により、三人を中心としたいじめは収まることになる。







ここまでお読み頂き、ありがとうございます!!


ブクマ、ご感想、評価ポイント等、ありがとうございます!!


誤字や脱字、ご質問等がありましたら、感想フォームまたは活動報告へお寄せ頂けますと幸いです。


《2016/10/29 第一回改稿》

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