第三話 アリスいじめ~リアフォール・メロシダの事情~
サブタイを『……の場合~』から『……の事情~』に変更しました。
「あら? その程度ですの?
リアフォール、いつものお願いしますわ」
「はいは~い。じゃ、いくよ」
そうシアステッドに言われたリアフォール・メロシダは、アリスに高度な治療魔法、回復魔法を続けてかけた。
「わたしの魔法は完璧だから、完璧に治っているわよ」
そう胸を反らして威張るリアフォール。
傷口が塞がる不思議な感覚、そして痛みが引いていき、だんだん体がぽかぽかと暖まってきた。そして一瞬のうちにアリスの体の状態は、校舎裏へ来る前の体調をも通り越して完璧な状態になた。
アリスは思う。この魔法が無ければいじめは終わっていたのかもしれないのに……、と。
「何をボーッとしてますの? 続けて行きますわ!」
「っ……低級障壁展開!」
そしてシアステッドによる剣術の練習という名のアリスへの一方的ないじめは続いた。
そんな様子を見ながら、リアフォールは自分の魔法が成功した事に満足気だ。
リアフォールは、何かしらアリスいじめに参加したのは妬みがあった訳でも嫉妬したからでも無かった。
アリスいじめの中心人物、シアステッドではないもう一人、セレナ・ニラゴージュの昔からの友人、という理由で参加し始めた。
その時のリアフォールは、アリスの事を、頭が良くて、魔法ランクが高い、ちょっと羨ましい同級生、としか見ていなかった。それはシアステッド達にも好都合で、自分達の仲間を増やそうとしている時だったので大感激で迎えた。
シアステッドやセレナはただの穴埋め要員のつもりだった。しかし、思わぬ収穫があったのだ。
それは、まだリアフォールが参加したての頃、シアステッド達に散々いじめられ、同じように校舎裏に転がっていた時、可哀想になってアリスに治療魔法、回復魔法をかけたのだ。
そしてその実の高い魔法に驚きつつも、それを見たシアステッドは喜び、
「リアフォールのおかげで、これからはもっと練習出来るわね」
とアリスに話しかけていた。
そしてその後、リアフォールに
「あなた、すごいじゃない。これならもっと早く声を掛けておくべきでしたわ。連れてきてくれたセレナにも感謝ね」
と褒められた。リアフォールは今まで自分の魔法が、家族や親戚以外から褒められたことがあまり無かった。その時は純粋に嬉しくて、そしてアリスに対して魔法を練習することが出来る、と本格的に参加をし始めた。
リアフォールはアリスに対して魔法を練習することで、段々魔法の、特に治療魔法と回復魔法の質がより高く、そしてより完璧に掛かるようになっていった。
そしてそれは魔法ランクにも反映していた。
元々Cランクだったのが、B-ランクに2段階上昇したのだ。
普通、貴族一般人関係無く一生の内に、Cランク台、特にC+ランクまで上り詰めれば相当魔法に長けた者、として評価される。
もちろん、アリスのような生まれつき魔法に長けている者もいるが、普通に過ごしてCランク台まい行けるものではない。
魔力を多く使う魔法の練習を重ね、そしてその質が良くなければランクは上がらない。そしてその練習さえも毎日続け、魔力総量も多くなり、実力があると判断されてやっとランクが上がるのだ。
リアフォールは、シアステッド達に混ざりアリスいじめに参加し、毎日のように多くの魔法を使用してきた。
そしてその魔法の多くは、奇しくもリアフォールの得意な魔法となり、実力も上げていったのだ。
そのような経緯でリアフォールの魔法ランクは上がり、家族や周囲から称賛されたりもした。
そのような事もあり、もともとアリスに嫉妬や妬みがあった訳でも無いリアフォールは、今ではむしろアリスに感謝しているとも言えるのだ。そして更に称賛されようと、アリスを利用していた。
無論アリスいじめによって魔法が上達したとは口が裂けても言えず、周囲にはシアステッド達と鍛練をしている事になっている。これはシアステッド達や、参加している多くの少女達で口裏を揃えている事であり、その親や知り合いも、多くの少女が同じ事を言い、シアステッド自身が認めているため、あのサリラーゼ家のご息女と鍛練を毎日のように共にしている、と誇らしげに周囲に伝えるほど信じきっていた。
そしてその鍛練は今日もいつもと変わらず進んでいた。
アリスがシアステッドに傷だらけでぼろぼろになり、そろそろ魔法を、とシアステッドにアイコンタクトをされたリアフォールが治療魔法と回復魔法をかけようとした。
「ねぇ、アリスぅ、そろそろ魔法を掛けてあげ……」
「ちょっと貴女達、何をしているのっ!?」
その時、突然誰かに声を掛けられた。
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《2016/10/29 第一回改稿》