第五十四話 結婚というゴール、結婚というスタートライン
ついにフィナーレへ!!
※※ご注意とお願い※※
神父のお祈りの言葉や、細部の進行、スピーチ等は省略しております。ご了承下さい。
また、かなり挙式スタイルの結婚式を参考にしていますが、よく分からなかった所や、進行上必要な場面の影響で変更されている所があります。
こちらも、シスタリア王国の“リス教”流の結婚式だとご理解の上お読み頂ければと思います。
式当日。
ミラとアリスはそれぞれ別の部屋で、出番まで待機をしていた。
ウェディングドレスを着て、専門の担当者に化粧をしてもらいながら、一連の流れが書いてある予定表を見て、ドキドキしながら今か今かと待ちわびていた。
式が執り行われる会場は、王城の外周部、大きなパーティーなどを行う為に作られた広大な迎賓広間で、高さ十数メートルの位置にあるアーチ状になっている天井に描かれた天井画は圧巻だ。さらに、上から見ると正方形にステージがついたような形の広間の中心には、直径数メートルにも及ぶ巨大で、宝石が多くあしらわれた豪華絢爛なシャンデリアが釣り下がっていた。
さらにそこから四隅に向かって同じだけ進んだ位置に、それぞれ違ったデザインの一回りほど小さなシャンデリアが四つ下がり、中心のメインのシャンデリアと合わせて広間を明るく照らしていた。
そんな広間では、近衛騎士たちが慌ただしく歩き回り、パーティーを始める最終確認を行っている所だった。
掃除は隅々まで行き届いているか。
数百ある丸テーブルに配置されている食器類、テーブルクロスや椅子の位置にずれはないか。
招待客を接待する手順に間違いはないか。
各々がテキパキと確認をしていた。
王族や有名貴族の結婚式では、招待客が多すぎる為に結婚式場と披露宴会場を分ける事は、移動にかなりの時間がかかって難しい。
そこで、結婚式も披露宴も同じ場所で行う事が出来るようにと、教会の設備を兼ね備えた広間があることが主流で、ここ王城も例外では無かった。
シスタリア王国は、信教の自由の観点から、宗教に縛られることなく、それぞれが調和を図って来たこともあり、シスタリア王国では様々な宗教のイベントが年に何回も行われる。
今日、クリスマスは、シスタリア王国ので主流の宗教の一つであるリス教のイベントだ。
シスタリア王国には国教というものはなく、王城や貴族の屋敷にある教会、というものは、決まった宗教を信じるという貴族を除いて、どの宗教のイベントにも対応出来るようにと、あまり特定の宗教の物を置かないようにしているのだ。
今回の式では、ミラとアリスは特に宗教を信じている訳では無かったので、王族の祖先の師匠であるリス・シャルテを讃えて創立されたリス教の作法に則って結婚式が進むことになった。
王城のなかでも最も広い広間の一つである迎賓広間には、フロアから若干高い位置にステージがあるだけで、他の物は倉庫から出してくる形になっているのだ。
リス教でよく使われる楽器であるオルガンを出し、ステージ上に上げて設置し、さらにリス教の教会風にステージ上をカスタマイズした。そして式中や披露宴の際に流れる音楽を奏でる王立交響楽団の席を決め、さらに広間全体にメインであるミラとアリスの声が届くように、そして二人を守る防御、快適なそよ風を適度に吹かせるための魔法など、数十種類の魔法が広間にかけられた。
準備が終わると、いよいよ招待客が会場へと入ってくる。
めでたい席、しかも王族の結婚式である。全員が見栄を張って、おしゃれを争う戦争が勃発するか――――と思いきや、意外とそこまででもなかった。
実は、ミラとアリスがそのような服装で参列する事に対してあまり良い印象を持たなかったので、「限度のあるおしゃれ」を参列者に対して要求したのだった。
それでも大袈裟に着飾る貴族もいたりしたが、圧倒的に数が少なく、顰蹙を買う前に自分からさっさと周りに合わせた服装に着替えていた。
時間通りに事が進み、いよいよ結婚式のはじまりの時間になった。
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「いよいよ結婚式……。これから私とアリスの結婚生活が始まるスタートライン!」
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「私とミラ、二人の未来に向かって、大きな一歩を踏み出す節目になる日!」
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いよいよ、式が始まった――――。
まずはアリスがステージの反対側にある大扉から入場する。
会場の照明が消され、僅かな誘導照明の灯りだけが残された。王立管弦楽団の演奏に合わせて、魔法を使って動かされる、高さ十メートルほどの大扉は、厳かにゆっくりと開いた。
そしてその開いた扉に、一筋の神々しい光が差し込んだのかと、その場にいた全ての人々は錯覚した。
父親に付き添われたアリスに、光という光が一気に注目し、会場の中に、光と、美と、神聖な空気をもたらした。まるで天使が天界から通じる階段を降りきり、まさに今、大きな扉から出てきたように感じられたのである。全ての人がアリスのその美しい姿に魅了され、惑わされ、目が離せなくなった。
「新婦・アリス入場」
司会であるユリアーナの声が響き渡っても、誰もアリスから目を逸らさず、じっとアリスの動きだけを見ていた。
ユリアーナの声を合図に、扉から一歩、二歩とゆっくり歩くアリスに合わせて、全員がアリスを目で追い続けた。大扉からステージまではおよそ数十メートル。中心を貫くようにひかれたカーペットを一歩一歩ゆっくりと踏みしめながら向かう。
そしてステージに登る階段を登りきり、招待客へと向き直った瞬間――――アリスに注目していた不思議な空気が消え、光もおぼろげになり、人々が正気を取り戻した。
皆、今何があったのか、自分が今どうしていたのか。誰もが隣人とささやきあい、議論しあい、そしていずれも答えを出せずにいた。
実はこの時、アリス自信が大々的な魔法を使って人々の気を引いていたのだ。無論、ミラも手伝って。
アリスはミラと暮らしはじめてからこれまで、旅行中にも欠かさずに魔法の練習を続けてきた。ミラという素晴らしい先生に一つ一つゆっくりと教えて貰いながら、少しずつあるべきだった能力を引き出していたのだ。
そして今日、アリスはミラと共に、広間全体を包み込むような大きな魔法を使い、ミラとの結婚に疑問を持つような失敬な輩にアリスを見せつけようとミラが計画し、ユリアーナとミーゼが手を加えたものだった。
もちろんミラの両親、アリスの両親共に許可を取り付け(特に国王であるミラ父からは、是非とも貴族連中に一泡ふかせてやってくれ、とお墨付きを貰った)、王族とユリアーナ、ミーゼ、そして王立管弦楽団員、近衛騎士に抗体となる魔法をあらかじめかけておいた上で、入場の際に大々的な魔法を使用したのだ。
しばらくして会場のざわめきが収まると、ユリアーナがミラの登場を告げる。
「続いて、新婦・ミラ入場」
いつの間にか閉まっていた大扉が再び開き、父である国王と共にミラが入場してきた。
このときもアリスと同じように、魔法の作用で会場の誰もがミラに例外なく注目し、動向を見守った。
アリスはステージの上で微笑みながら、愛しい人の到着を待つ。
アリスと同じだけ、もしかしたらそれ以上の時間をかけてステージに登壇すると、今度はまるで、光が二人を包み込むようにして集まりだした。
そして、光が凝縮し凝縮し、二人を完全にすっぽりと多い尽くすほどの大きさまで縮んだ、その時。
一気に光が四方八方へ爆発し、会場中に明るい光をもたらした。
招待客はこの光景を、驚きのあまり口を開けながら、もしくは放心しながらしかと目に焼き付けていた。
まるでどこかにいる神が二人を祝福しているかのように…………。
この魔法のおかげで出回った噂により、ミラとアリスをよく思わない人々は、事実激減したという。
式は順調に進んだ。
両の父は席へと戻り、ステージ上には、ミラとアリス、そして神父の三人だけしかいなかった。
全員が三人に注目する。
神父によるお祈りの言葉、聖歌斉唱と続き、いよいよ結婚の誓いと、誓いのキスである。
二人はお互いに向かい合い、神父の言葉を聞く。
「――――ミラ・レイ・ラ・シスタリア。あなたは、いかなる時も、いかなる障害があろうとも、永遠にアリス・クロニティを愛し、幸せにし続けることを誓いますか?」
「はい。誓います」
「アリス・クロニティ。あなたは、いかなる時も、いかなる障害があろうとも、永遠にミラ・レイ・ラ・シスタリアを愛し、幸せにし続けることを誓いますか?」
「はい、誓います」
「よろしい。では、誓いのキスを…………」
神父のその言葉を聞き、ミラとアリスはそっと近づく。
「大好きよ。愛してるわ♪」
「私も大好き。愛してる♪」
ちゅっ♪
そっと抱き合い、軽く唇同士をふれ合わせる。
もちろんこれだけで我慢する。重要な式典で、それも大観衆の前ではしたないことは出来ない。
「はい、では手を重ね合わせて……」
二人はそっと手を重ね合わせてみつめあう。
その上に神父が手を乗せ、厳かに、そして堂々と告げる。
「ここに、ミラ・レイ・ラ・シスタリアとアリス・クロニティの結婚が正式に認められた事を宣言する!!」
若干駆け足になりましたが、お読み頂き、ありがとうございます!!
次回は披露宴の模様を(またも駆け足ですが)お届けします。明日の投稿予定です。
いずれ何か特別な機会があれば、スピーチ等の詳細な部分をかけたらいいな、と思っております。
今回準備期間が短く、スピーチ等を書き上げる時間が少なく断念致しましたm(__)m
ご感想、ブクマ、評価ポイント等、ありがとうございます!!




