第四十五話 バーベキュー
夕食は、慌てて準備をし始めたユリアーナさんとミーゼさんにミラが言った、
「これから用意するの? ……さっきあんな事を言っておいてあれだけど、やっぱり夕ごはんはバーベキューにしない? 二人の料理はまた次の機会にお願いしたいのだけれど……」
という鶴の一声でバーベキューに決まった。
迫真に迫った演技をして申し訳なさそうに言うミラだったけれど、ユリアーナさんとミーゼさんはちょっと安心したようにホッとしていた。
……あの後でユリアーナさんがミラに謝ってたから、多分付き合いの長いユリアーナさんには、気を遣わせてしまった、と思っているのだとと思う。
大元は私たちのせいなのだけれど。
私たちはそっとアイコンタクトを交わして、私たちの心の奥にそっと仕舞っておくことにした。
「さて、じゃあ焼き始めましょう!」
ミラの号令で火を付け、野菜やお肉を焼き始める。
用意自体は、何故か療養所の倉庫にあったバーベキュー用のコンロを出して、お肉や野菜を食べやすいサイズにカットして串に刺したものを準備するだけだったので、手伝った私たちを含めて四人でやったらすぐに用意が出来た。
火がついて暫くすると、コンロからジュ~ッという音と、美味しそうな野菜とお肉が焼ける匂いがしてきた。
コンロの脇にはユリアーナさんとミーゼさんが立ち、それぞれ串をひっくり返したり、新しい串をセットしていたりした。
これもみんなでやろうとしたのだけれど、ユリアーナさんとミーゼさんが、
「何でもお手伝いして頂くのには忍びないです!」
「これくらいはさせて下さい!!」
と本当に申し訳なさそうに言ってくるので、私たちは引き下がる他無かった。
でも、何となくいい雰囲気になっていて、成功だったかもしれない。
私は近くに置いたイスに座り、傍に立つミラと話をする。
「まさか療養所にコンロがあるなんて……驚いたわ」
「家族で来たときにみんなでバーベキューをするのよ。普段の気取った料理より気楽でいいの」
「へぇ~。あんまりそんなイメージけれど」
「ふふっ、意外でしょ?」
私の反応に、慣れているのか小首を傾げていたずらっぽく笑いかけてくるミラ。
「でも……分かる気がする」
「ん~?」
「座ってお行儀よく食べるのもいいと思うけど、みんなでワイワイするのも楽しいし。…………ミラと一緒ならなおさら、ね?」
「アリスっ……!」
感激したのか、そっと抱きついてくるミラ。
座っている私に合わせるようにミラが屈んで腕を肩に回していた。でも、なんだか隙間が空いて寂しい。
私は立ち上がってミラの腰に手を回した。
「……これで、あったかいね」
「うんっ♪」
上着を着た上からだったけれど、お互いのぬくもりはしっかり伝わった。
「ミランダ様、アリス様~! そろそろ焼け上がりますよ~!!」
ミーゼさんの声でそっと腕を解くと、
「は~い、今行きます!」
と返事をして、今度は腕を組んで歩き始めた。
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