第四十三話 二人で料理
お久しぶりです。
ミーゼ回です!
療養所に戻ってきたアリス様、ミランダ様、ユリアーナ先輩、そして私はそれぞれ一度自分達の部屋に戻ってしばらく休むことにした。
と言っても、私とユリアーナ先輩はすぐに夕食を作りに階下に向かうのだけれど、お二方に、私たちの料理が食べたいと言われたので、今最高に嬉しい。
私とユリアーナ先輩は、広い客間に二人で泊まることになっている。
とは言え、ベッドルームが別々にあってちょっと残念だったりするが。
色々と考えていたらいつの間にか夕食を作る時間になっていた。
(ユリアーナ先輩を呼びにいかないと)
そう思った私は、隣にあるユリアーナ先輩のベッドルームへ向かう。
「ユリアーナせんぱ……きゃっ!」
「あうっ!? ……み、ミーゼ、ごめんなさい、大丈夫?」
そ~っと覗きながら扉を開けようとした瞬間、扉が開き、中から出てきたユリアーナ先輩と正面衝突してしまった。
びっくりして倒れそうになったものの、ユリアーナ先輩が支えてくれた。
「ご、ごめんなさいっ! お怪我はありませんか!?」
「ミーゼこそ大丈夫? ごめんなさい、不注意でした」
「い、いえ……」
「ほっ。なら良かったです」
お互いの無事を確認する最中、わたしはあることに気がついてしまった。
それは、今の私たちの体制。
ユリアーナ先輩とぶつかって、軽く抱き抱えられたこの状態。
お互いの体が密着し、顔もすぐ近くにある。
ユリアーナ先輩の整った凛々しい顔立ちについ視線が吸い寄せられる。
……可愛らしい目
……整った長い睫毛
……少し上気した柔らかそうな頬
……そしてちょっと湿った唇も――――って、わ、私は一体何をっ!?
「す、す、すみませんっ!!」
「う、ううん。私こそ」
「…………」
「…………」
「せ、せんぱい」
「な、何? ミーゼ」
「そ、そうね。……行きましょうか」
そう言っても尚、私たちはしばらく見つめあっていた。
否、目が離せなかった。私も、ユリアーナ先輩も。お互いのことを。
私は、宙を彷徨っていた両腕をそっとユリアーナ先輩の腰にまわす。本当に無意識で、後で考えても何故そうしたか分からなかったけれど、気づいたらそうしていた。
ユリアーナ先輩も、肩を支えていた手を私の腰に回してくれた。
顔を寄せあい、互いの顔を肩に乗せる。
そのままずっと体温を感じてずっと抱き締めあっていた。
どうしてだろうか。それだけで心がホッと休まり、幸せな気持ちになった。
ハッと我に返ったのは、壁にある時計の鐘が小さく鳴った時だ。
慌てて時間を確認すると、もう予定の時間から三十分も過ぎた夕方5時だった。
「た、大変!」
「すぐいきましょう!」
サッと互いの腕をほどき、階下にある台所に向けて駆け出す。
ユリアーナ先輩と離れた瞬間、少し寂しくなってしまったのは私だけの秘密だ。
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「うまくいった?」
「うん。大成功」
時は同じくして、ユリアーナとミーゼの部屋の隣にある空き部屋。
ミラと私は、二人が慌てて下に向かった事を確認してそうっとドアを開けた。
「ミラの魔法、本当にすごいわ!」
「えへへ。上手くいったね」
私とミラは、部屋に戻った後、そっと二人の様子を見にやって来た。
そっと二人の部屋のドアを開けると、その瞬間丁度いいタイミングでミーゼがユリアーナとぶつかった。
ミラは、
「チャンスね!」
と言って、二人に小声で魔法を唱えた。
私は何の魔法を唱えたのかは分からなかったけれど、突然二人が抱き締めあったので、すごくびっくりした。
ミラ曰く、
「ちょっとしたおまじないよ♪」
との事だったけれど、上手くいって良かった。
……私たちの二人をくっつけるための作戦はまだまだ始まったばかりだ。
ここまでお読み頂き、ありがとうございます!!
ミラがかけた魔法は、《愛の魔法》と呼ばれる魔法のうちの一種で、相手を無意識に抱き締めてしまうという魔法、という設定です。
では、引き続き次回以降もお楽しみに!
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