第四十二話 街へ
幕間を挟みましたが、本編再開です!
今回はユリアーナ視点になります。
「あれがシューナガーデンにある幾つかの街のうち、一番のどかだと言われるシュキナの街です」
私は、ミランダ様とアリス様、そしてミーゼに説明しながら、遠目に見える街へ向かう道を並んで歩いていた。
ミランダ様が温泉に行こう、と言い出した時には驚いたけれど、よく考えたら、ひょっとしてミーゼとの距離を詰めるチャンスなんじゃないかと思って、ミランダ様には申し訳ないけれど、私は少し浮かれていた。
でも、私がミーゼを想っているなんて知られたら恥ずかしいから、悟られないように、ミーゼと並んで歩ける幸せに、今にも緩んできそうな顔を引き締める。
「あと少しね」
「うん。……でもどうして大きな街にしなかったの? シューナリースとか、大きな街も近くにあるわよね?」
「あ、それ、私も思っていました。ユリアーナ先輩、なんでですか?」
ミランダ様、アリス様、ミーゼが口々に言う。
みんなの仲も順調のようで嬉しい。
「あんまり大きな街だと、騒がしいですし、何よりミランダ様の事を知られてしまいます。ここに王族の療養所があることは誰にも知られてはいけないので、必然的にダメです」
「「「なるほど!」」」
「それに比べてシュキナは、実は王城勤めを終えた者がよく余生を過ごす場所に選ぶので、少しくらい見られても、あらかたの予想はしてくれるので安心です」
「そういえば、別の隊ですけれど、前副隊長がシュキナで暮らしていると聞いたことがあります」
ミーゼがポツリと呟く。
まったく、色々な事を知っていて。自慢の後輩です!
ハッ! 危ない危ない。少し唇が緩んだかもしれません……
そんな事を話している間にも、私たちはどんどん街へ近づき、街の手前にある衛士の詰所が見えてきた。
「おや、ユリアーナじゃないか!」
「ご無沙汰しています、隊長」
「いや、もう元だがね。随分立派になったものだ! 今は……?」
「今は隊長の後を継ぎました」
「そうかそうか! ようこそ、シュキナの街へ! 歓迎するよ!」
私たちに声を掛けてきたのは、私の前に、今の私の隊の隊長であった、キーマン隊長だ。
キーマン隊長の下で、副隊長として過ごしていたが、隊長の引退と共に、私は隊長になったのだった。
「おや、ミランダ様にミーゼも!」
「久しぶりね、キーマン」
「お久しぶりです、キーマン隊長」
旧知のミランダ様とミーゼも隊長に挨拶する。
あっ、アリス様の事を紹介しておかなくては。
「隊長、こちらはミランダ様のご結婚相手のアリス様です」
「おやおや、おやおや!! それはおめでたい事で! アリス様、私はキーマン、以前王城に仕えていた近衛騎士でございます」
「はじめまして、アリスと申します」
「はっはっは!! それにしてもミランダ様がご結婚ですか! なんとおめでたい。結婚式には是非読んでくだされ」
「勿論です」
「引退してこの村に来た者、全員を連れて参りますぞ!」
ハッハッハッ! と笑いながら職務へ戻るキーマン隊長。
引退しても、いつもの豪快さは変わらない様だ。
さて、気を取り直して街へ入る。
赤煉瓦で作られた街はのどかで、美しく、街の人々の活気がよく伺える。
すれ違う人の半分近くの人々がこちらへ目礼をしてくる。
私は目礼される度に目を白黒させている三人に説明を加える。
「目礼をしてくる人は皆、王城に勤めていた者だと思いますよ」
「えっ、じゃあこんなに沢山の王城勤めの人がここに居るんですか!?」
「まさかそこまでだとは思わなかったわ。ねえ、アリス」
「うん。すごいね……」
キョロキョロと周りを見渡す三人に、
「行きましょう?」
と声をかける。
結局、夕方までに、この街の観光や、周辺の農地の見学を行い、帰路についた。
夕食を食べて行こうか、という話にもなったけれど、ミランダ様が私たちの料理を食べたい、と言ってくれて、アリス様も同意していらっしゃったので、私とミーゼはるんるん気分で何を作ろうか話し合いながら歩みを進めていた。
ここまでお読み頂き、ありがとうございます!!
アリス、ミラ、ユリアーナ視点と来たら次は……
という訳でもう少々お待ちくださいませ!
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