表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/50

第二話 いじめ

サブタイを『アリスいじめ』から『いじめ』に変更しました。

 アリスこと、アリス・クロニティは毎日のようにクラスの少女達からいじめを受けていた。


 受験をして、首席の成績でハイレベルな普通科学校へ入学したアリスは、普段から物静かで才色兼備な美少女として、学校で一、二を争うアイドル的な存在だった。


 試験の成績も毎回トップスリーに入り、魔法や運動が不得意だという一面もあるが、そこもギャップがあって可愛いと、異性からだけでなく同性からも人気を集めていた。


 しかし、それをよく思わない人物がいた。


「アリス、後で校舎裏に来て下さる?」


 またか、とアリスはうんざりとした顔で、机の周りを囲うようにして集まった少女達に答えた。


「どうして?」

「どうして? じゃなくてとにかく来なさい」

「来なかったらどこに行っても迎えに行くからね~」

「逃げるなんて考えない方がいい」


 少女達の主な身分は貴族の娘。一方アリスは一般の人。

 受験をして、せっかくいい学校に入学したものの、人気があり、成績もいいし、可愛らしい美貌を持つアリスに嫉妬をいだいている者達だ。


 始めのころは貴族の少女二~三人から妬まれたり、物を隠されたりする程度だった。


 しかし、だんだん少女達がアリスをよく思わない貴族の少女達を集め、さらに同調するように何人かの少女が加わり、今では十~十五人程から、罵詈雑言、集団リンチ、私物を取られたり壊されたり、根拠のない、ろくでもない噂を流されたり等、徐々にいじめはスカレートしていった。


 ほぼ毎日のように少女達に絡まれ、どんなに暴力を受け傷だらけになっても、物を壊され新しく買わなくてはならなくなったとしても、ろくでもない噂のせいで影口をされたりしても、アリスは勉強のため、学校に通い続けた。


 しかし、それがいじめをしてくる少女達の嗜虐心を煽るだけであった。


 どんなにアリスが嫌であろうということをしても、相手は仮にも貴族だ。アリスは何も言わず、されるがままの状態であった。

 それをいいことに少女達は段々と卑劣な行為を強めていった。


 そしてそれを繰り返すようにして、半年が経とうとしていた。


 放課後、アリスは少女達に呼ばれた校舎裏と向かった。

 もちろん以前は呼び出されたとしても行かなかったよだが、伊達にも相手は貴族、個人の騎士団や、家に仕える者を使い、アリスの家や居場所、家族構成など全て調べられ脅された事があった。


 それ以降、無理矢理連れてこられる前に、自分で向かう方が被害が少ないだろうと考え、嫌でも向かわざるを得なかった。


「やっと来ましたわね」

「遅い~」


 校舎裏に着いたとたん、少女達から掛けられた言葉はそれだった。


「本日はサリラーゼ家次期当主であるわたくしが直々に剣術を教えて差し上げますわ」

「もし怪我をしてもわたしが回復魔法を掛けてあげるから安心してね」

「その後で(わたくし)たちと体術を勉強させてあげる」


 次々三人から声が掛けられた。

 始め剣術を教えると言ったのが、シアステッド・サリラーゼという、子爵家の娘だ。


 これだと唯の自主練の様に聞こえるが、その内容は耳を塞ぎたくなるような一方的ないじめだ。


 まず剣術。

 アリスは運動全般と魔法が苦手であり、通常であれば障壁魔法を使い、障壁を張って肉体へのダメージが皆無になるようにするのだ。


 しかしアリスは障壁を張れる事は張れるのだが、魔力操作が上手く行かず、他のクラスメートよりも格段に薄く、脆い障壁になってしまう。 これだと、ほんの少しでも強い一撃を浴びれば、障壁が破れ、直接アリスの体へ剣が吸い込まれる。


 さらに酷いことに、サリラーゼ家は多くの騎士を輩出している剣と馬術の名家。シアステッドも例外ではなく、騎士になるための実力を持ち、学校一の剣術の使い手である。


 それ故に剣技も強力で、教師が全力で障壁を張らないととてもではないが防ぎきれないレベルであった。

 そんな彼女がアリスの脆い障壁に全力で剣技を撃ち込んだらどうなるか。


 もちろん教師の数段も劣るアリスの障壁は、薄く伸ばした飴細工に、石を全力で投げる構図にそっくりで意図も簡単に砕け散ってしまう。

 そしてシアステッドの全力の剣技はアリスに直接当たってしまうのだ。


「構えなさい」


 シアステッドは練習用の木刀を構えながらアリスに言った。

 渋々アリスは構える。

 自分から怪我をしに行きたくないが仕方がない。


低級障壁展開(ロアス・シールド)!」

「行きますわよ!」


 木刀を上段に構え、技を繰り出した。


「サリラーゼ家、第一の剣技、アリアノス!」


 この世界の剣術は、現代のものと違って、剣に魔力を込めて、威力や速度を上げたものを言う。

 シアステッドの木刀から黄色の光が、シアステッドまで瞬時に覆うと、剣とシアステッドは加速した。そして、瞬きをする時間より短い間にアリスの懐へと入り込み、剣を払った。


 たったそれだけでアリスの障壁は砕け散った。そして障壁で殺し切れなかったダメージがアリスへ襲いかかる。


「きゃぁぁあああっ!!」


 耐えきれずアリスが悲鳴とも叫び声とも聞こえる声を絞り出した。


「その程度ですの? まだまだこれからです、の、よっ!」


 次の瞬間、シアステッドが消えた。

 いや、剣技で上へ向かって飛んだのだ。


「エアロダウン!」


 おおっ、とアリスを囲っている周囲の少女達から小さなどよめきが聞こえた。

 エアロダウンとは、優秀な剣士が何年もかけて修得するという、とても難しい技だ。


 それをまだ十代のうちに、不完全ながらもやってのけたシアステッドは、何年もかけて練習し、先日ついに修得、そして実際に使ったのはアリスに対してが始めてだった。


「ぐっ……いやああぁぁあぁああっ…………!

 ……ゲホッゲホッ」


「どうでしてよ、先日修得したばかりの大技は? 

 始めて使ったのがあなただったことを感謝なさい」

「…………」

「何かっ、答えなさいよっ! このっ、このっ! 一般人のくせに! なんで私よりももてはやされているの!?」


 シアステッドが何度も何度も剣を振るう。

 シアステッドは、貴族でもない一般人で、大して運動や魔法が出来ないくせに、人気があり、学校のアイドル的な存在であるアリスが憎くて仕方がなかった。


 シアステッド達三人は、アリスには及ばないが、十分に美少女だと言える部類に入っており、それぞれ自分の容姿には自信があった。


 そして、自分達が学校の人気者になろうと、入学してから注目を浴びようとした。

 しかしそれは、同時に入学したアリスによって打ち砕かれた。


 自分達でも及ばない可愛さ、そして才色兼備で心優しいアリスが学校のアイドルになるのが、許せなかった。


 そして同じような感情を抱く三人が纏まってアリスへのいじめが始まったのである。


 しかしアリスはどんな嫌がらせにも決して弱音を吐かなかった。

 そしてアリスはどんなに傷つけられても何事も無かったかのように振る舞ったのだ。

 それがさらに三人を強気にさせた。


 日に日に酷くなるいじめ。それをアリスを好いている者たちはもちろん止めさせようとしたのだが、三人のうち一人、つまりは学校に通っている貴族の中でも比較的強い権力をもつ家の者達であったため、他の貴族の家の者達は強く出ることが出来なかった。


 教師の中にもいじめに気づいた者もいたのだが、同じような理由もあり、アリスを励ます程度にしか対処できなかった。


 しばらくして、三人は少しずつ同じような立場の貴族の少女達を集め、アリスいじめを加速させた。


 日に日に増えるアリスを囲む少女達。アリスが絶望するのに時間はさほどからなかった。そして三人を中心に膨れ上がったアリスいじめをする者は、十人を超え、二十人を超え、毎日代わる代わる十五人程からいじめられるようになった。


 それと同時にアリスは抵抗することを諦め、されるがままにいじめを受けた。それがアリスにできる、最善の策だった。


「けほっ……」


 アリスは何度剣を受けたか分からないお腹をおさえ、至るとこが傷つき、地面に転がっていた。


「あら? その程度ですの?

 リアフォール、お願いしますわ 」


 とシアステッドが言った。



ここまでお読み頂き、ありがとうございます!


ブクマ、ご感想、評価ポイント等、ありがとうございます!!


《2016/10/29 第一回改稿》

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ