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第三十六話 あ~ん♪

前回に引き続き、今回も二つの物語が入っています。

 一通り学院の中を周り切った四人は、何ヶ所かのうち、学院生に最も人気なカフェテリアへとやってきていた。


 ウッドデッキのテラスにある丸いテーブルに荷物を置くと、ミラとアリスはそこに座り、ユリアーナとミーゼは、軽食を注文しにカフェテリアの中へと入っていった。


「ふぅ、疲れたわね」

「案内ありがとう、ミラ」

「ううん、アリスのためだもの」

「そ、そう……。ミラのおかげでこの学院の事が良く分かった!」

「ふふっ、なら良かった。今度から一緒に通いましょうね!」

「うんっ!」


 二人があれこれ雑談をしている間に、ユリアーナとミーゼがトレーを持って戻ってきた。


「おかえりなさい」

「お、おかえりなさい」

「ありがとうございます」

「い、いえ……」


 二人は持っていたトレーをテーブルに置く。


「わぁぁぁ!! すごい、美味しそう!」

「これが我が学院カフェテリア自慢のパフェよ。いろんな種類のパフェがあるし、どれも美味しいの!」


 トレーに乗ったパフェを見て、アリスが驚きの歓声をあげる。

 それもその筈、大きなパフェ用のガラス皿に、様々なフルーツやスイーツが載せられ、こればかりと存在感を放っていた。

 それも目立つが、最も目を引く部分が一番上のクリームだ。

 今にも倒れてしまうのでは無いかと不安になるくらい高くそびえ、今すぐ食べたくなるという不思議な力を持っていた。


 事実、アリスは何度も何度もミラの顔をチラチラと見て、早く食べよう、早く食べよう! と目で伝えていた。もう手にはパフェ用のスプーンをしっかり握っていた。


 しかし、ミラには考えがあった。


「「「「いただきます!」」」」


 四人でいただきますをして、早速パフェにスプーンを伸ばすアリスを静止する。


「ちょっと待ってアリス!」

「わわっ、なぁに、ミラ?」


 不思議そうに首を傾げるアリスに、ミラは自分のスプーンでパフェを掬い、そのまま正面に座るアリスの目の前に差し出した。


「はい、あ~ん♪」

「ふぇっ!? ミ、ミラ?」

「あ~んってして? ね?」

「ううっ……。あ、あ~ん」


 恥ずかしそうに頬を染めながら可愛らしく開けるアリスの口に、ミラは差し出した、いかにもと言わんばかりに柄の長いスプーンの先を入れた。


「どう? おいしい?」

「う、うん! すっごく!」


 幸せそうに頬に片手を添えながら、味わうようにして食べるアリス。


 ごっくん、と呑み込むと、あっ! と思い出した様に、自分のスプーンでパフェを掬うと、ミラに差し出した。


「ほら、ミラも。あ~ん♪」

「ありがと。あ~ん。…………ん~!! やっぱり美味しい!」

「すごいわ、このパフェ。毎日でも来たくなっちゃう」

「このカフェテリア、もっとたくさんおいしいのがあるから、今度また一緒に来ましょう?」

「うん! 約束よ! ……はい、あ~ん♪」

「あ~ん。……ふふっ、アリスにもあげる。あ~ん♪」


 二人がパフェを食べ終わるまでの暫くの間、二人の周りにはとても幸せそうなピンク色の空気が充満し、二人を包み込んでいた。







 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★








 ミラとアリスの、あ~ん♪ が続く中、ユリアーナとミーゼは横目に二人の幸せそうな顔を見ながら美味しそうにパフェを食べていた。


「恋人同士って、いいですね……」

「そうですね。……ミーゼは好きな人はいないのですか?」

「ふぁっ!? い、いないですいないです!!」


 パタパタと手を振って、全力で過剰な程に違う違うとアピールするミーゼ。


「ふふっ、深く詮索しないでおきます」

「べ、別に……。ユ、ユリアーナ先輩だなんて、言えるわけ無いし…………」

「あら? すみません、後半が少し聞き取れませんでした……。もう一回言って貰えますか?」

「な、何でもないですっ!」


(本人の前で言えるわけ無いじゃないですか……。もうっ!)


 ミーゼが俯き、ブツブツと何かを呟くが、ユリアーナは気にしないで食べ進める。

 少しして、


「あっ!」

「どうかしましたか? ユリアーナ先輩」


 急に声をあげたユリアーナにミーゼが訊ねる。

 そのミーゼに、ユリアーナがいじわるな笑顔を浮かべる。


「ふふっ、ミーゼ、はいあ~ん♪」

「あ~ん……。ってふぁっ!」


 ユリアーナが口を開けた事で、つい釣られてあ~んと口を開けたミーゼ。その可愛らしい口の中に、ユリアーナのスプーンが、そっと差し込まれる。


 口を閉じて味わって食べたミーゼは、飲み込んでから今、自分が何をされたのかにやっと気づいた。


(かかか間接キス!! 今、私、ユリアーナ先輩と間接キスを!?)


「どうですか? おいしい?」

「は、はい! とっても……」

「そう? 良かった。今度はミーゼが私に食べさせて下さい」

「えっ、ええぇっ!?」

「ほら。ねっ?」


 あ~ん、と口を開けるユリアーナに、根負けしてパフェを掬ったスプーンを差し出すミーゼ。


 恥ずかしそうだったのに、しばらくしたら、二人とも嬉しそうにあ~ん♪ を続けていた。


 この二人の仲も順調な様だ。




 実はこのパフェ用のスプーン、カップル用の長めの物だった。

 一人用の少し短めのスプーンはまた別にあり、ミーゼが四人分のパフェを受け取っている間にユリアーナが取ってきたものだった。


 ユリアーナ、実に策士である。




ここまでお読み頂き、ありがとうございます!


ブクマ、ご感想、評価ポイント等、ありがとうございます!


誤字、脱字、矛盾等がありましたら、お気軽に観想フォームまたは活動報告へお寄せ頂けますと幸いです。

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