第三十一話 四人で
こんばんは。五月雨葉月です。
今回二人はアリスの両親へ挨拶に向かいます。
私達はミーゼさんとの挨拶の後、ご飯を食べてから私、ミラ、ユリアーナさん、ミーゼさんの四人で私の家へと向かっていた。
馬車でも用意する? とミラに聞かれたけれど、さすがに恥ずかしくて遠慮した。
そうしたら、みんなで歩いて行こう、という事になった。
今思うと、これってかなり危ない事なんじゃ……
「大丈夫よ~、うちは緩いから、分かってくれるわ。私だっていつもユリアーナと二人だけで出掛けるから」
私の心配な表情を見て、そう言ってくれた。
「ユリアーナは優秀だから、安心して。それに、ミーゼもユリアーナがべた褒めする程だもの」
「み、ミランダ様! ミーゼの前でそのような話を……」
「ほ、本当ですか!? 隊長……ありがとうございます!! 」
「うっ……」
ユリアーナさんが困り顔だ。
こういうユリアーナさん、初めて見たわ……
それから私達は他愛もない話を続けながら私の家へと歩みを進めていた。
と、見慣れている景色がちらほらと目に写り始め、もうすぐ家だと感じさせられた。
「もうすぐよ」
私は皆にこえを掛ける。
「アリスの家、楽しみだわ。でも、緊張するわね……」
「ミランダ様、何より一番始めの挨拶が大切ですよ! これからの結婚生活がかかっていますからね! 」
「プレッシャーかけないでよ……」
そうこうしているうちに、家に到着する。
「着いたよ」
ミラは私の家へ目を向け、お~、と声を発していた。ユリアーナさんやミーゼさんも珍しそうに眺めている。
そう言えば二人とも貴族なんだっけ。
「綺麗な外観ね~」
「はい。それに今まで見えていた家よりは大きいですね」
「そうですね! 」
ひときしり見たあと、ユリアーナさんが呼び鈴を鳴らす。
しばらくして、
「はーい」
というお母さんの声。
ガチャっとドアを開け、出てきたのもお母さんだった。
「アリスっ!! 」
お母さんは、私を見て強く抱き締めてきた。
一日ぶりのお母さんの腕の中はあったかくて安心できる。
「良かった……ケガは無い? どこも痛くない? 」
「う、うん。大げさだよお母さん」
そこまで確認すると、やっと離れてくれた。
と、やっと周りが見えてきたのか、
「あら、大所帯ね。取りあえず中に入りなさい」
「うん。ミラ、こっちよ。ユリアーナさん、ミーゼさんも」
「「「お邪魔します」」」
と言って全員で中に入った。
と、お母さんが、
「お茶を入れてくるから先にリビングで待っていて! 」
と言ったので中へ入り、リビングで待つ。
向かう途中、廊下などでキョロキョロ見回しながら進んでいる三人がなんだかおかしかった。
「座って」
「うん」
「私達はこのままで」
「……そう? 」
私とミラが隣に座り、その後ろにユリアーナさんとミーゼさんが立つ。
しばらくして、六人分のお茶を持ってお母さんが入ってくる。
「お父さんはそろそろ降りてきますから、もう少しだけ待っていて下さいね」
と言って私たちの向かいに腰を降ろす。
「…………」
「…………」
「…………」
場を沈黙が包む。
お互いに何から話せば良いのかが分からないようで、誰も何も言葉を発しない。
と、
「いやー、すまないね、遅れてしまって」
「お父さんっ!! 」
「おお、アリス、無事で良かった。……よいしょ」
相変わらず空気を全く無視して入ってくるお父さん。
もうっ……
「ふう、さて。私がアリスの父です。こっちが妻」
「お父さん~!! 」
「よろしくね」
「お母さんまで! 」
呆れてもう止める気も無くなる。
まったく……
「わっ、わたしは、ミランダと言います。ミランダ・レイ・ラ・シスタリアです」
「ミランダちゃんね、よろしくね」
「はっ、はい! 」
「そうか……あんなに小さかった娘がなぁ…………立派になったものだ」
「ねぇ。私たちも年をとったかしら……」
「「えっ!? 」」
ど、どういうこと!?
お父さん達はなんで知ってるの!?
「ともかく、昨日大体の話はユリアーナさんから聞いているよ。二人は本気なのかい? 」
な、流さないで……きっとあれすごい重要な事なのに。
ミラも同じことを思ったのだろう。ぽかーんとしていたけれど、さすが王族。切り替えが早く、真面目な顔に戻っている。
「もちろんです。私は本気です。本気でアリスを愛しています」
「…………」
「ずっと前に見かけてから好きになっていたんです! 大好きなんです! 」
「そうか……アリスはどうだい? 」
「私もミラの事が大好き。愛してる」
「良いわねぇ……」
「こらっ、母さん、雰囲気雰囲気! 」
こほん、と誤魔化すように咳払いをしたお母さんは、
「ちなみに、どこまで進んだのか、聞いてもいい? 」
と、いきなり変な事を聞いてきた。
緊張してお茶を飲んでいた私達は揃ってむせてしまう。
あわててユリアーナさんがミラを、ミーゼさんが私の背中をさすってくれる。
「「ありがとう」」
「ふふっ、仲が良いのね。で、どうなのかしら? 」
「もちろんえっ――――「ふ、普通のお付き合いよ!! 」……もうっ、アリスったら」
ミラがとんでもない事を口にしそうだったので慌てて割り込む。
「へえ~」
しかしお母さんは分かっているとばかりにニヤニヤと笑ってくる。
「私は、アリスと結婚したいです!! 大好きなアリスとずっと一生、片時も離れず傍にいたいんです! どうかお父様、お母様、娘さんを、アリスを私に下さいっ!! 」
と大声で叫び、勢いよく立ち上がって礼をして頼み込む。
「お願いしますっ!! 」
その様子を私やお母さん、お父さん、ユリアーナさん、ミーゼさんはあっけにとられてじっと見ていることしか出来なかった。
「…………」
礼をしたまま動かないミラ。
すぐ隣で座っている私からだけ見えた。
下を向いている顔は、ぎゅっと目をつむって何かに耐え、さらに涙も目の端に滲んでいた。
その顔を見て、私も立ち上がる。
ミラが驚いた様子で礼をしたまま顔だけこちらを向いてくる。
(あなただけ恥ずかしい目に会わせたくないから。それに、私もミラとずっと一緒にいたいから)
お父さんとお母さんに一生懸命想いを伝える。
「私も、私もミラの事が大好き! ミラといて分かったの。近くにいてほしい、離れないで欲しい。こんな想いは初めてなの。ミラと結婚したい。お父さん、お母さん、お願いしますっ!! 」
「アリス…………」
ミラが泣きそうな……というよりぽろぽろと泣いている顔で見つめてくる。
「…………弱ったな。そこまでされると、なぁ」
「…………そうね。私たちの負けね。出てきて良いわよ」
と、先程私たちが入ってきたドアが開き、二人の人物が出てきた。
「そら見たか! 私の娘は一途なんだよ」
「あら、あなたもこんな事になるとは思ってもいなかったでしょう? 」
な、なんでお父様とお母様がここにいるの……?
いやぁ、途中で思い付いた展開を入れてみましたが……
こうなるとは思ってもみなかったです。
本文の補足をすると、始めの方に「馬車」とありますが、まだ文明レベルを決めかねているので、いずれ変更する可能性があります。
取りあえずは馬車などが交通手段だと思っていて下さい。
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