第十話 告白
二週間以上間が空きましたが、お久しぶりです。
五月雨葉月です。
今回のサブタイトルは、『告白』。どうぞ皆様さ様々な妄想を働かせながらお読み頂ければ幸です。
「お父、様……? 」
呆然とした表情でカールド子爵を見つめるシアステッド。
シアステッドはなぜ自分が平手打ちされなければならないのか、よく分からない、という目で自分の父を見つめた。
「さっきから聞いていれば何だ! 」
「ぇ? 」
カールド子爵がシアステッドに向かって怒鳴った。
「いじめをした、していないは今はどうでもいい! 」
その言葉に一瞬ユリアーナは眉をひそめたが、何も言わなかった。
「先程から聞いていれば何だ! お前は本当に王国貴族の娘なのか!? こちらの方をも知らぬなど…………一族の、王国貴族の恥だっ!! 」
話が読めないシアステッドは、呆然と話を聞いていた。
「どういう……? 」
「こちらの方は、こちらの方は王国の王女、ミランダ殿下だぞ! 先程からなんと失礼な言葉を殿下に向かって言っているのか…………お前は、仕えるべき国の王女殿下への礼儀すらも弁えていないのか? 」
わなわな、という音が聞こえてきそうなほど、カールド子爵は自分の娘への怒りで震えていた。
「王女…………殿下? 」
父の言葉を聞いて、驚いたようにミラを見つめる。
そして、シアステッドの頭のなかで、記憶のパズルで一つだけ欠けていたパーツが、この瞬間にカチリ。とはまったような感覚になった。
「!? そんな……そんなまさか………」
シアステッドは自分が見たものが信じられないように首をぶんぶん振り、改めてミラを見た。しかし彼女の視界にはミラの姿が残り続ける。
「まさか…………まさかまさか。そんなはずは………………」
どんなに強く頭を振っても、何度も目を擦っても彼女の前からミラは居なくならない。
なぜなら、彼女が本当にそこにいるから。
「落ち着いた? 」
痛い物を見る目で、ミラが優しく問いかける。
「ヒイッ!! 」
しかし、シアステッドにとっては、まさに悪夢が正夢になった様なもの。信じたくない。そんな筈がない。そう自分に言い聞かせる。
「あのね、シアステッド・サリラーゼ」
やっと気持ちを落ち着かせたのか、または現実から逃げ続けているのか。シアステッドは答える。
「何よ? 」
――――後者だった様だ。
王女にかける言葉ではない言い方に、カールド子爵が再び怒ろうとした。しかし……
「やはりお前は――――」
「…………」
カールド子爵が声を荒げようとした所に、ミラがそっと手を上げ、言葉を止めさせる。
ミラの肩に手を起き、ミラの肩越しから怯えたように状況を見守るアリスが驚き、泣きそうになったのだ。
自分の大切な人を泣かせたくない。そう思ってミラはカールド子爵の言葉を切らせた。
「なぜ私がここであなた達を捕らえさせたと思う? 」
ミラは一旦言葉を止め、シアステッドを見つめる。
しかしシアステッドは目を逸らし、何も答えない。
「いじめを見て、止めさせようと思ったから? いじめを見過ごせなかったから? いいえ、どれも違うわ」
ミラはそこまで言うと、自分の肩に載っていた怯えきった手を優しく取り、自分の前に移動するようにアリスを軽く引っ張った。
そして、アリスが目の前に来て、シアステッドに背を向けるような位置にアリスを来させると、彼女を軽く、優しく抱き締め、その手をアリスの背中で繋いだ。
アリスも同じようにミラの背中に手を弱々しく回して、自分の手を握った。
「私は、アリスが好き。アリスが大好き。だから、私の好きな人が傷つけられるのが嫌でいやで仕方がなかった。このままではいつまでたっても変わらない。だからここに来た。それだけよ」
その言葉には、シアステッドだけでなく周りの少女達の反感を買った。
「な…………何よそれ! いくら王女様でも横暴だわ! 」
「そ、そうよ! なんでその娘だけ特別扱いなの!? 」
そんな声をミラは一喝する。
「うるさいっ! 」
いくら自分達と同じような年齢の少女だからと言っても、ミラは王女だ。ミラの怒りに、誰も口を開けなくなる。
「貴女たちは、居ただけで何もしていなくても、いじめという重大な犯罪を犯した。そして、私の大切な人を傷つけた。それだけで十分よ」
そう言うと、ずっと抱き締めていたアリスを――――二人とも名残惜しそうに――――そっと放し、修練場に背を向けてアリスと手を繋ぎ直すと、扉に向かって歩き出した。
そして、扉の前まで来ると、
そうだった、と何かを思い出したように振り返り、
「今は私が怒っていて、今すぐにでも全員終身刑にしてあげたい気分だけれど、落ち着いてから罪状を判断するわ。それまでは…………そうね。どこか牢屋に入れておきなさい。ユリアーナ」
「はい、ミランダ様」
「私たちは先に帰るわ。後は頼んだわよ」
と言った。
そしてミラは、アリスの手を繋いだまま、
「光学迷彩魔法! 」
と言い、二人して姿を消してサリラーゼ家を出て、王城へと帰っていった。
二人が居なくなった後しばらくの修練場は、泣き叫ぶ声しか聞こえなかったという。
ここまでお読み頂き、ありがとうございます。
次回はもっと百合百合な空間を書いていきます。
さて、その次回ですが、最近百合を書いていないせいか、百合を書きたくて仕方がなくなってきまして。
近日中に投稿します。
よろしくお願い致します。




