プロローグ
原文が縦書きなため、横書きでは見づらい部分があるかもしれません。
道沿いのうっそうとした林の奥へ、ひざ丈のスカート下まで生い茂った草に邪魔されながらも、あの反り立つような岩肌のふもとまで来ると、そこには二つのお墓が作られていた。
とても簡単なつくりで、少し大きな石が置かれただけの、本当に簡単なつくりのお墓。
その周りは……でも手入れはされていて、他の場所と比べてみれば、林一面に生えていた草も、ちゃんと短く刈り取られていた。
「もうあれから、三ヶ月……経つんだよね……」
周りの草木がざわついた。
まだこのベニーナの街は冬の始まりだというのに、このほほをかすめていく風はとても乾いていて、とても冷たい。
「本当にここは風が良く通るなぁ……」
ここは木々が立ち並ぶ林の奥なのに、それでも風は枝葉を揺らして、この場所を吹き抜けていく。
風は冷たいけれど……、さらさらと揺れる草や葉の音がなんだか心地いい。
見上げてみれば、岩肌を隠すように木が高く伸びていて、その先を風でゆらゆらゆらしている。
合間に見えた空は……、相変わらず灰色の曇り模様だった。
私はその木々に囲まれたお墓の目の前に立つと、胸に抱えていた花束をそっとそのお墓の上に置いた。
どうして……こう、なっちゃったのかな……。
なんだかキュッと、胸の奥が訴えかる……。やりきれない痛み……。
たった一度の、夏の間で起きたことだった……。
どうしてかな……、なんだかそれが信じられない……。
あの焼けるように暑かった夏。
このベニーナの街に、彼女たち二人がやってきた夏。
あれは本当に暑かった夏の、そのたった一夏の……
とても悲しい出来事だった――。
プロローグは大会投稿時ついておらず、同人誌用として後でつけたものでした。
※このプロローグ以降、残酷表現を含む話になりますのでお気をつけください。




