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各々のステータス

 ステータスプレートに表示された項目を、俺はまじまじと見つめた。名前、年齢、性別は何の問題も無い。それからの職業、体力、攻撃、防御、素早さ、魔力、器用さ、特殊技能という項目が、俺の目に留った。ニュアンスで何を表わしているのかは分かるが、これは低いのか、はたまた高いのか……。

「おお、これが俺のステータスか!」

 隣で達也が興奮したように言った。

「どうだった?」

「お前は?」

「見れば? 達也のも見せてもらうよ」

 そう言いながら、俺は達也のステータスプレートを覗き見た。

 

*******

 名前:福原達也(ふくはらたつや)

 年齢:十七歳

 性別:男

 レベル:1

 ジョブ:重戦士

 ダメージ:160

 オフェンス:120

 ディフェンス:170

 スピード:80

 マジック:50

 テクニック:90

 特殊技能:斧術・盾術・鉄壁・気配感知・物理耐性・全属性耐性・言語理解

*******


「重戦士?」

 勇者じゃないのか、職業は人によって変わるものなのだろうか。特殊技能も俺とはところどころ違うし、他のステータスもぜんぜん違う。

「職業勇者!? お前すげぇな!」

「そ、そうか?」

 勇者の言葉に反応したのか、サイラスさんも俺のステータスを覗きこんでいた。すると、サイラスさんの顔が驚愕に染まる。

「な、何だこのステータスは!」

「え、なんかおかしかったですかね?」

 サイラスさんは我に返ったように顔をあげ、こちらを向いた。

「取り乱してすみません。こ、これほどまでとは」

「な、なんだよ、どうしたんだよ」

「……一般市民のステータスでは、体力や攻撃など15もいけば良い方。貴族や騎士でも、特殊技能など持っている者は少ししか居ないのです」

 ……ってことは、結構凄いのかな?

「じゃあ俺のは?」

 達也もステータスプレートを差し出すと、サイラスさんは再び驚きの声を上げる。

「重戦士ですか! 素晴らしい。ステータスも申し分ないですな!」

「やったね」

 俺もなかなかやるだろ、達也はそんな得意げな顔を見せた。

「私も出たよ!」

「鈴! 何が出た?」

「はい、これ」

 鈴のステータスプレートを、三人で覗きこむ。


*******

 名前:柚木鈴(ゆずきすず)

 年齢:十六歳

 性別:女

 レベル:1

 ジョブ:聖女

 ダメージ:90

 オフェンス:60

 ディフェンス:70

 スピード:80

 マジック:210

 テクニック:110

 特殊技能:弓術・魔力感知・光属性適正・光属性付与・光属性耐性・闇属性耐性・魔力回復補正・聖弓・言語理解

*******


「聖女……?」

「なんだそりゃ」

 達也と俺が小首をかしげていると、またもサイラスさんは興奮したように鈴の手を掴んだ。

「おお、貴方が聖女様でしたか!」

「ええ!?」

「おお、あの方が!」

「神々しさを感じますな」

 周りの偉そうな人もざわめき出す。勇者よりも聖女の方が人気があるんだろうか。それにしても、鈴の魔力はすごいな、俺の倍以上ある。他のステータスでは器用さ以外勝っているが、魔力は段違いだ。

 俺たちが勝手に盛り上がっていると、クラスメイト達も、自分のステータスを確かめようとする人が増えてきた。良かった、俺がやっといて。

「私の職業は聖騎士だったよ」

「麗子見せてー」

 鈴が半ば無理やりに覗きこむ。麗子も嫌がってはいない様子だ。

「麗子すごーい! 見て見て、これ!」

「ん?」


*******

 名前:桐谷麗子(きりたにれいこ)

 年齢:十七歳

 性別:女

 レベル:1

 ジョブ:剣豪

 ダメージ:100  

 オフェンス:110

 ディフェンス:110

 スピード:120

 マジック:130

 テクニック:120

 特殊技能:剣術・気配感知・物理攻撃耐性・全属性耐性・五月雨・瞬突き・言語理解

*******


 またよくわからないステータスが出てきたが、いくら凄い凄いと言われても、この三人のステータスを見る限り、そうでもないと思ってしまうのだが……。

 クラスメイト達も、それぞれのステータスを確認しているようで、先ほどまでの鬱蒼な雰囲気が嘘のようにはしゃいでいる。……これがいつまでもつか。

「俺剣士だってよ!」

「私は魔法使い」

「盗賊ってなんだよー」

「ははは、ぴったりじゃんか」

 皆のステータスを見て、サイラスさんは満面の笑みを浮かべた。

「皆さん素晴らしいステータスですね! これなら、魔王を倒すことも、夢ではありませんよ!」

「おおっ!」

 皆のステータスは、俺より低いが、サイラスさんの話では、すごく高いらしい。

 あ、まだステータスを見ていない人がいたらしい。痩せ形の、不健康そうな青白い肌をした、小柄の男子生徒だった。名前は宮村新斗、クラスでもあまり目立たない生徒だ。

 彼が手をかざすと、ステータスプレートは淡く光を放ち、字が浮かび上がる。

「新斗君、君はどうだった?」

 俺がそう問いかけても、彼からの返事は無かった。顔を覗き込むと、ただでさえ色白な彼の肌が、さらに蒼白に染まっていた。

「どうした?」

 またも返事は無く、彼はじっとステータスプレートを眺めるだけだった。

 俺は黙ってステータスプレートを覗いた。


*******

 名前:宮村新斗(みやむらにいと)

 年齢:十七歳

 性別:男

 レベル:1

 ジョブ:村人

 ダメージ:10

 オフェンス:6

 ディフェンス:7

 スピード:9

 マジック:2

 テクニック:12

 特殊技能:声援・言語理解

*******


 俺は何も言えなかった。こんなに低いとは思っていなかった。他のクラスメイトでさえ、ステータスが二桁を下回る生徒は一人もいない。そして、ジョブも平凡の一言に尽き、特殊技能に固有のものは無かった。はっきり言って、何の戦力にならないのは目に見えている。

 俺は何とか励ましの言葉を掛けようと、頭を捻った。しかし、浮かんでくる言葉はどれもありふれたもので、彼の自尊心を傷つけてしまう可能性があった。

「どうしましたかな?」

 サイラスさんはニコニコしながらこちらに向かってきて、ステータスプレートを覗きこんだ。

 サイラスさんの顔が今までの顔と一変する。

「何なんだこれは! 何かの間違いか!? こんなどこにでもいるようなステータスの者がここに居るなど、考えられん! 誰か、この者を摘みだせぇい!」

「え?」

 サイラスさんがそう叫んだかと思うと、いつの間にか甲冑を着た兵士が飛び出し、新斗君を取り押さえた。

 俺はサイラスさんの豹変ぶりと、咄嗟のことで、何もできずに立ち竦むしかなかった。

「ちょっと待ってよ、これは何かの間違いだ。俺が何したって言うんだよ!」

 必死に抵抗する彼に、俺は我に戻った。

「ちょ、ちょっと待っ……」

「待ってください!」

 俺が止める前に、抗議の声を上げる者がいた。鈴だ。

「宮本君は私たちの大事な仲間です。乱暴は止めてください!」

「柚木さん……」

「そうです。早く彼を放してください」

「も、申し訳ございません、聖女様、勇者様。おい何してる、早くその方を放しなさい」

 サイラスさんは焦ったようにそう言い、兵士たちはすぐさま新斗君を解放した。鈴は崩れ落ちた新斗君に駆け寄る。

「大丈夫?」

「あ、ああ……何でこんな事に……」

 俺がサイラスさんの方を向くと、サイラスさんは手をすり合わせて弁明してきた。

「申し訳ございません。皆様のステータスがあまりにも高いものですから、つい平民並のステータスを見て動転してしまいまして。本当に何であんな事をしたのか……」

「いや、謝罪なら彼に……」

「皆様には精一杯のおもてなしをさせていただきます。こちらへ」

 サイラスさんは新斗君に見向きもせず、俺にすり寄ってきた。そんな態度に、不快感を覚えながらも、俺はクラスのためにサイラスさんに従うことにした。

「あんなクズ、ほっときゃよかったのにな」

 クラスの誰かから発せられた言葉を、俺は無視してしまった。


 新斗君がクラストリップでの主人公的な役割ですね。もちろん彼が無双します。

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