各々のステータス
ステータスプレートに表示された項目を、俺はまじまじと見つめた。名前、年齢、性別は何の問題も無い。それからの職業、体力、攻撃、防御、素早さ、魔力、器用さ、特殊技能という項目が、俺の目に留った。ニュアンスで何を表わしているのかは分かるが、これは低いのか、はたまた高いのか……。
「おお、これが俺のステータスか!」
隣で達也が興奮したように言った。
「どうだった?」
「お前は?」
「見れば? 達也のも見せてもらうよ」
そう言いながら、俺は達也のステータスプレートを覗き見た。
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名前:福原達也
年齢:十七歳
性別:男
レベル:1
ジョブ:重戦士
ダメージ:160
オフェンス:120
ディフェンス:170
スピード:80
マジック:50
テクニック:90
特殊技能:斧術・盾術・鉄壁・気配感知・物理耐性・全属性耐性・言語理解
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「重戦士?」
勇者じゃないのか、職業は人によって変わるものなのだろうか。特殊技能も俺とはところどころ違うし、他のステータスもぜんぜん違う。
「職業勇者!? お前すげぇな!」
「そ、そうか?」
勇者の言葉に反応したのか、サイラスさんも俺のステータスを覗きこんでいた。すると、サイラスさんの顔が驚愕に染まる。
「な、何だこのステータスは!」
「え、なんかおかしかったですかね?」
サイラスさんは我に返ったように顔をあげ、こちらを向いた。
「取り乱してすみません。こ、これほどまでとは」
「な、なんだよ、どうしたんだよ」
「……一般市民のステータスでは、体力や攻撃など15もいけば良い方。貴族や騎士でも、特殊技能など持っている者は少ししか居ないのです」
……ってことは、結構凄いのかな?
「じゃあ俺のは?」
達也もステータスプレートを差し出すと、サイラスさんは再び驚きの声を上げる。
「重戦士ですか! 素晴らしい。ステータスも申し分ないですな!」
「やったね」
俺もなかなかやるだろ、達也はそんな得意げな顔を見せた。
「私も出たよ!」
「鈴! 何が出た?」
「はい、これ」
鈴のステータスプレートを、三人で覗きこむ。
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名前:柚木鈴
年齢:十六歳
性別:女
レベル:1
ジョブ:聖女
ダメージ:90
オフェンス:60
ディフェンス:70
スピード:80
マジック:210
テクニック:110
特殊技能:弓術・魔力感知・光属性適正・光属性付与・光属性耐性・闇属性耐性・魔力回復補正・聖弓・言語理解
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「聖女……?」
「なんだそりゃ」
達也と俺が小首をかしげていると、またもサイラスさんは興奮したように鈴の手を掴んだ。
「おお、貴方が聖女様でしたか!」
「ええ!?」
「おお、あの方が!」
「神々しさを感じますな」
周りの偉そうな人もざわめき出す。勇者よりも聖女の方が人気があるんだろうか。それにしても、鈴の魔力はすごいな、俺の倍以上ある。他のステータスでは器用さ以外勝っているが、魔力は段違いだ。
俺たちが勝手に盛り上がっていると、クラスメイト達も、自分のステータスを確かめようとする人が増えてきた。良かった、俺がやっといて。
「私の職業は聖騎士だったよ」
「麗子見せてー」
鈴が半ば無理やりに覗きこむ。麗子も嫌がってはいない様子だ。
「麗子すごーい! 見て見て、これ!」
「ん?」
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名前:桐谷麗子
年齢:十七歳
性別:女
レベル:1
ジョブ:剣豪
ダメージ:100
オフェンス:110
ディフェンス:110
スピード:120
マジック:130
テクニック:120
特殊技能:剣術・気配感知・物理攻撃耐性・全属性耐性・五月雨・瞬突き・言語理解
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またよくわからないステータスが出てきたが、いくら凄い凄いと言われても、この三人のステータスを見る限り、そうでもないと思ってしまうのだが……。
クラスメイト達も、それぞれのステータスを確認しているようで、先ほどまでの鬱蒼な雰囲気が嘘のようにはしゃいでいる。……これがいつまでもつか。
「俺剣士だってよ!」
「私は魔法使い」
「盗賊ってなんだよー」
「ははは、ぴったりじゃんか」
皆のステータスを見て、サイラスさんは満面の笑みを浮かべた。
「皆さん素晴らしいステータスですね! これなら、魔王を倒すことも、夢ではありませんよ!」
「おおっ!」
皆のステータスは、俺より低いが、サイラスさんの話では、すごく高いらしい。
あ、まだステータスを見ていない人がいたらしい。痩せ形の、不健康そうな青白い肌をした、小柄の男子生徒だった。名前は宮村新斗、クラスでもあまり目立たない生徒だ。
彼が手をかざすと、ステータスプレートは淡く光を放ち、字が浮かび上がる。
「新斗君、君はどうだった?」
俺がそう問いかけても、彼からの返事は無かった。顔を覗き込むと、ただでさえ色白な彼の肌が、さらに蒼白に染まっていた。
「どうした?」
またも返事は無く、彼はじっとステータスプレートを眺めるだけだった。
俺は黙ってステータスプレートを覗いた。
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名前:宮村新斗
年齢:十七歳
性別:男
レベル:1
ジョブ:村人
ダメージ:10
オフェンス:6
ディフェンス:7
スピード:9
マジック:2
テクニック:12
特殊技能:声援・言語理解
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俺は何も言えなかった。こんなに低いとは思っていなかった。他のクラスメイトでさえ、ステータスが二桁を下回る生徒は一人もいない。そして、ジョブも平凡の一言に尽き、特殊技能に固有のものは無かった。はっきり言って、何の戦力にならないのは目に見えている。
俺は何とか励ましの言葉を掛けようと、頭を捻った。しかし、浮かんでくる言葉はどれもありふれたもので、彼の自尊心を傷つけてしまう可能性があった。
「どうしましたかな?」
サイラスさんはニコニコしながらこちらに向かってきて、ステータスプレートを覗きこんだ。
サイラスさんの顔が今までの顔と一変する。
「何なんだこれは! 何かの間違いか!? こんなどこにでもいるようなステータスの者がここに居るなど、考えられん! 誰か、この者を摘みだせぇい!」
「え?」
サイラスさんがそう叫んだかと思うと、いつの間にか甲冑を着た兵士が飛び出し、新斗君を取り押さえた。
俺はサイラスさんの豹変ぶりと、咄嗟のことで、何もできずに立ち竦むしかなかった。
「ちょっと待ってよ、これは何かの間違いだ。俺が何したって言うんだよ!」
必死に抵抗する彼に、俺は我に戻った。
「ちょ、ちょっと待っ……」
「待ってください!」
俺が止める前に、抗議の声を上げる者がいた。鈴だ。
「宮本君は私たちの大事な仲間です。乱暴は止めてください!」
「柚木さん……」
「そうです。早く彼を放してください」
「も、申し訳ございません、聖女様、勇者様。おい何してる、早くその方を放しなさい」
サイラスさんは焦ったようにそう言い、兵士たちはすぐさま新斗君を解放した。鈴は崩れ落ちた新斗君に駆け寄る。
「大丈夫?」
「あ、ああ……何でこんな事に……」
俺がサイラスさんの方を向くと、サイラスさんは手をすり合わせて弁明してきた。
「申し訳ございません。皆様のステータスがあまりにも高いものですから、つい平民並のステータスを見て動転してしまいまして。本当に何であんな事をしたのか……」
「いや、謝罪なら彼に……」
「皆様には精一杯のおもてなしをさせていただきます。こちらへ」
サイラスさんは新斗君に見向きもせず、俺にすり寄ってきた。そんな態度に、不快感を覚えながらも、俺はクラスのためにサイラスさんに従うことにした。
「あんなクズ、ほっときゃよかったのにな」
クラスの誰かから発せられた言葉を、俺は無視してしまった。
新斗君がクラストリップでの主人公的な役割ですね。もちろん彼が無双します。




