ディスク9「中二病女」
フェリーに乗って本島を目指す俺たちは今何をしているかというと。
魔子「やった!魔子の上がり!」
「またかよっ!!お前汚ぇ手つかってんじゃないのか!?」
皐月「君が弱っちぃだけだよ。はい僕も上がり」
ババ抜きフェア開催中だったりする。ちなみに俺は5連敗中、フェリーに乗って居ても暇だからと言ってトランプを持ち込んだらしい【魔子が】
「なんて運の悪さなんだよ……トランプべつのにしないか?ババ抜きはダメだわ」
皐月「じゃあ真剣衰弱なんてのはどうだい?」
魔子「魔子真剣衰弱は苦手だなぁ」
「まぁ真剣衰弱なら昔から得意なんだよ」
ふっ、記憶力に定評がある俺様が連勝してやんよ
〜20分後〜
「トランプとかこの世から消していい遊びだと思うわ」
皐月「君の運の悪さも神がかっているね。ま、そんな薫もボクは嫌いじゃないよ?」
魔子「え、二人ってそんな関係!?ま、まぁ、皐月くんはどう見ても女の子に見えるからバレなきゃ」
「ダメに決まってんだろ!こいつは男だ!」
た、確かに女の子にしか見えないがこいつは男!男男!
皐月「あははっ、そこまで否定しなくてもいいじゃないか。悪魔の世界では同性愛は大丈夫だよ?」
「行きたくねぇし俺は女の子しか興味無いわ!」
くだらん話をしていたら、フェリーが本島に着く。入学式以来だから2週間くらいだろうか?色々ありすぎて経過を忘れてしまうほど懐かしい。生徒はフェリーから降り、先生に言われた通りに悪魔グループ、神グループに分かれるが。
「先生、俺はどうすれば?」
そう、まだどちらでもない俺はどうすれば?
先生「あー、じゃあ黛と組め」
先生はその女子生徒に指をさす
黛「…………」
あの、すごい絡みづらい子なんすけど。髪は濃い紫色、おかっぱ頭でちっこいけど。ちょっとスタイルよくないか?て待て胸を見るな俺。俺は座敷童子もとい黛さんのとこへ行く。
「あー、黛さん?俺は村人って言うんだけどよかったら一緒に――」
黛「ちぃ」
今舌打ちしたよ!?舌打ち!!めちゃくちゃ鋭い目で舌打ち!
「俺さまだどっちでもないし、よかったらさ?ね?」
黛「……シネ」
「今いけない事言ったよね!?そうだよね!?」
根暗かよ…きっついけど仕方ないか…先生は夕方までボランティアをするように言われ皆自由に街を目指し始めた。
「あ、あのさ。皆行っちゃったしそろそろ行かないか?」
俺達はベンチに座り海を眺めている。今は四月で暖かいのに黛は紺のカーディガンに、膝上ミニスカ。座敷童子っぽいがまた違う感じ。黙ってたら可愛いな。そんなことを思っていると
黛「……私、一人がいいので消えてください」
「ま、まぁ。そんなこと言わずにさ?それに黛さんは悪魔っぽいじゃない?」
これがダメだった。この時の俺は馬鹿だった。
黛「……人を見た目で判断ですか。いい度胸していますね。超暗黒剣の餌食になりたいですか?」
え?今なんと?
「あ、あのさ。ちょっと聞き取りにくかったんだ、もう一回頼む」
黛さんは俺の胸ぐらを掴みグイッと顔を近づけ
黛「…………呪い殺しますよ」
「申し訳ございませんでした!!!!」
俺はスタイリッシュ土下座を華麗に決める。そんなことをしてたらフェリー乗り場は俺達だけになっていた。
「なぁ?本当にそろボランティアにいかないか?一人でも終了させないと担任に何言われるか……」
俺は土下座から立ち上がる。黛は目を逸らす
黛「………私がボランティアをすれば、その人を不幸にします。」
「お前やっぱ、悪魔――」
黛「獄炎で消し炭にしてやりましょうか?」
わかった、中二病か。高校生になっても抜けきらなかった残念な女子かわかった。
「これじゃ拉致があかん。ほらいくぞ!」
俺は黛の腕を取り歩き出す
黛「ひゃっ!?………コホン。離せゲス野郎」
「んなこと言ってたら終わらん!」
スタスタ歩いていると。あの腕輪が光り出す。色は紫色
「紫色は不幸な奴がいるのか。あの人か」
スーツを着たサラリーマンの男性が何かを探している、自販機の下を覗き込んでいた
「ありゃ、お釣りでも落としたのか?まぁ手伝うか。」
黛「……フン、ざまぁ」
黛は腕を組みそう言う。
「お前な……もういいや。あの、手伝いましょうか?」
俺はサラリーマンの男性に話しかける。男性は立ち上がり
サラリーマン「あ、すまないね。実は今日結婚式で指輪をどこかに無くしてしまって。時間もなくてやばいんだよ…」
結婚式。指輪がないだなんてそれはやばい。俺は自販機の下を覗くが
「下にはありませんね、俺達は別の場所を探してみます。どこから来たか教えてください」
徒歩ルートを聞いて俺は黛を連れて探しながら話す
「黛さんは恋人いるの?」
黛「……ナンパきもいです」
「悪かったよ聞かないよ」
調子狂うから話すのを諦めた。サラリーマンが通ったルートの中に新幹線の駅もあったが人混みが多く、諦めた。その戻る途中
魔子「あ!薫だ!どうどう?ボランティア順調?」
皐月「薫なら当然さ。ボクが愛しているんだからね?」
皐月を無視して、魔子に
「あぁ、まぁな。それよりこの辺で指輪見なかったか?」
魔子「指輪?さぁ、わからないし。見てないよ?」
魔子は顎に人差し指を乗せてそう言った。魔子は黛がいる事に気がつく
魔子「貴女は確か――」
魔子が何かを言いかけると黛は俺の腕を取り走り出す
「うわ!?ちょ!黛さん!??」
魔子「か、薫!?」
問いかけを無視して黛は走り続け。フェリー乗り場近くまで戻ってきた。
「はぁはぁはぁ、なんだよいきなり。どうしたんだよ。」
俺は息を切らしながらも話しかける。黛はすげぇ普通にいる、あんなに走ったのに
黛「………聞くなゲス野郎」
話が進まないのはわかった。さっき会ったサラリーマンの人と合流するが
サラリーマン「残念だが、結婚式までもう時間がないようだ。悪かったね探してもらって。謝れば多分大丈夫だから」
サラリーマンの人はそういうが。やっぱり見つけないとダメな気がする、一生に一度の結婚式だ。
「いえ、あと少しだけ時間をください!他にも協力してもらいますんで!待っててください!」
俺はそれだけを告げて、黛とフェリー乗り場近くの公園へ
「とは言ったが、神グループに宛がいない。沙玖夜は学園だし、はぁ……」
黛「沙玖夜……知っているのか?」
急に神城沙玖夜と言う名前に噛み付く。
「まぁな。同じ保健室通いだよ、なんせ人をバカにするし殴る蹴るだし」
黛「……そ、そう」
なんだ?まぁいいか。俺は立ち上がり
「街に行こう。きっとお店とかにも寄ってるかもしれない」
俺は先に歩き出すと、袖をギュッと掴んでくる黛
黛「………置いていくな……ゲス野郎」
俺は適当に返事をして、二人で街に向かった。駅前、ゲームセンター、コンビニと行ったが
「くそ!時間がない!それにもう夕方になるじゃないか!俺達自体時間ないぞ!」
俺が焦っていると。黛は急にモジモジし始める
「ん?どうしたんだよ、寒いか?」
黛は顔を横に振る。微妙顔をしている
黛「………ぉ、おしっこ………」
こいつは歳いくつだ?同級生で、しかも、異性におしっこ発言は如何なものなんだ?とそんなことは言ってられん!!
「どわ!!とにかくどっかに入るぞ!!」
黛「あ、歩けないっっ!!漏れちゃいそうだから歩けない馬鹿!!」
俺はとっさに黛を背中におぶって近くの本屋へ入る
「すみません!!トイレ貸してください!有難うございます!」
店員「まだ返事をしてませんよっ!?」
店員が何かを言ってたような気がしたが無視して、女子トイレ前で黛を降ろしなんとか間に合った。俺は改めて店員の元に行き
「すみません、急にこんな感じで。あと落し物とかありませんでしたかね?指輪なんですけど」
俺はついでに店員に聞いてみた。
店員「あ、そう言えばサラリーマン風のスーツを着た男性が指輪を忘れていきましたよ」
「まじですか!?!それ探し物で頼まれていたんですよ!」
探し物がまさか本屋だったなんて。でもなんでだ?
店員「指輪がセキュリティに反応して鳴っていたので防犯で一度預かっていたのですが。帰るときに私が渡し忘れていまして、こちら返しておいて貰えますか?」
「わかりました、有難うございます!」
俺は黛が出てくるの待ってから、男性の元へ向かう
黛「………指輪、よかったですね」
「本当によかった、見つからなかったらどうなってたやら。案外お前がトイレ行くとか言わなかったら見つからなかっただろうし。お前のおかげだわ」
黛「……遠まわしにお漏らし痴女とか言いたいんですね」
「んなこと言わねぇわ!!!」
馬鹿な話をしながらサラリーマンの人とまた合流し、指輪がどこにあったかなどを話して、別れた。フェリーにはなんとか間に合った。
「はぁ、変に疲れた……黛さんか。苦手かもしれん」
黛「………闇に葬りますよ。」
「どわぁ!?ビックリさせんなよ!?それより、本当に運が良かったというか。人を助けたら幸せな気分になるもんだな」
海を見ながら普通に、ただそう言っただけなんだが
黛「………不幸指数。上がってます」
「は?俺か?でも悪魔や神はそれはないんじゃ――」
黛「これから何が起きるか……楽しみですね。村人くん」
黛はそれだけを告げて去った。入れ違いで魔子がやってきてはなんだか鼻を摘み
魔子「やだ!薫なんか臭い!どこにいってたの?!」
「は!?臭いって………ま、まさか。」
この後、黛は背中で少しだけお漏らしをしたと自ら謝りに来た。幸せがあったら不幸もある。黛にも、不幸はあったが、幸せ?もあったのかもしれない。