表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
JKが神さまとか、幼馴染みが悪魔とか聞いちゃいない。  作者: 双葉
―記憶、真実、今―
17/21

ディスク17「異端児の記憶」

なぜ竜胆先生は俺が記憶の一部を忘れていると知っているんだ?

竜胆先生には何も話してはいない、というか何故この居場所がわかったんだろう


竜胆「何故、私がここにいるか戸惑ってるみたいだが簡単なことだよ」


薫「簡単なこと?」


俺と黛は顔を見合わせる。廊下の窓から差し込む夕陽が、俺達を照らす。


竜胆「私は、悪魔だからだよ。まだ話していなかったようだがね」


竜胆先生が悪魔と言う話は確かに聞いたことはなかった。だけど悪魔だからと言って何がわかるのか。


黛「もしかして、私の悪魔の血の気を感じて探したのですか?」


竜胆「それもある、だがもう一つ。その鍵は――」


竜胆先生が何かを話すところで、見慣れたアイツが現れた。


皐月「竜胆先生。今日はもう夕方ですし、このくらいにしませんか?」


制服も見た目も声も女の皐月。だけど、今その声や目はまた違った何かに変わっていた。


竜胆「君は……そうだね。今日は帰りなさい」


薫「いや!まて!話はまだ!」


黛「薫さま、今日は下がりましょう。」


薫「だけど!あ………」


黛は黙って俺を見つめる。俺が蘇生されたことは話していない、記憶が曖昧としか説明していないのに。黛は何か真剣に目で訴えているような。


薫「わかりました。鍵返しときます、さようなら。」


俺が歩き出すと黛もついてくる。皐月の横を通り抜けざまに


皐月「大丈夫、君の記憶は必ず」


そんな風に小声で告げられた。俺は夕陽に照らされた学園の正門を抜ける、しかし真っ直ぐ帰る気にはなれなかった。寮とは反対方向を歩き出すが


薫「お前は別に帰っていいんだぞ?」


後ろを振り向き、黛に話しかける。黛は横に並ぶと


黛「今の薫さまにピッタリな場所があります。ついて来てください」


薫「は?え?いやちょっと?!」


黛はどんどん歩く、俺も慌ててそれについて行く。少し歩くには辛い坂を歩き、たどり着いた場所は


薫「街が見おろせる公園か。この島にもこんな場所があったんだな。」


坂を上がった先には街が一望できる公園があった。海に囲まれた島。最近来たばかりの場所なのに、なんだか何年も前から居るような錯覚を起こす。


黛「私もよく来る場所なんです。落ち込んだりした時にここに来ると、悩んでた事がバカらしくなるんです。」


黛は兄を亡くした、俺は記憶を亡くし一度死んだ。そんな少しだけ似た2人は一緒に夕陽に照らされる街を見下ろす


黛「薫さまの記憶がどれだけ大切な物かは、わかりません。ですが過去のことより、今を見つめて欲しいです。例え、それがどれだけ重要な記憶でも。」


薫「黛……確かに過去の記憶に囚われ過ぎたのかもしれないな。どんな記憶だったかは気になるけど、そんなことより今だよな」


自分に言い聞かせる様に話す。謎の少女は気になるけど、今は過去より今のことを考えないといけないのかもな。


俺は近くにあったベンチに座る。黛の背中を見ながら


薫「お前は、過去のことより、今を見ているのか?」


夕陽は大分傾いて、眩しくて手で目を軽く隠す。


黛「過去を考えていないと言えば嘘になります。でも、薫さまのおかげで今をしっかり見ようって考えるようになりました。兄はもう帰ってきません、叫んでも、泣いても戻ってきません。でも、今はやりたいことをやろうって決めました。」


黛はこちらに振り向く。俺は少し俯く。


薫「お前は強いな。………お前には話すつもりはなかったけど、話すよ。俺はな?実は……」


眩しかった夕陽が急に無くなった、俺は顔を上げると。


薫「え…………」


俺は何か柔らかい感触に包まれる。そう、頭を黛に抱きしめられたのだ。急なことで言葉が出ないが


黛「今は何も話さないでください。話しなら後から聞きますから。今はこうさせてください」


俺は黙ったまま、ゆっくり頷く。しばらくこうしていたらすっかり暗くなってしまった。俺は黛から開放され、丘の公園から出て坂を下り、学園前にたどり着いた。


薫「なんか悪かったな。お前にまで心配させちゃってさ」


黛「いえ、気にしていません。それより早く戻ったほうがよいのでは?さっきからポケットから光が漏れています」


俺は『え?』とポケットに入った端末を取り画面を見ると。


薫「魔子から30件のメール!?わ、わりぃ!先に帰るわ!またな黛!」


薫は走り出す、しかし立ち止まり。


薫「ありがとなぁ!!元気でたわ!」


薫はニコニコしながら言ってから、再び走り出した。





黛「はぁ。鈍感ですね、あそこまでしたのに何もないとは。劫火の(フレイムバースト)でボコボコにしないといけませんね。」


私は、神城の屋敷を目指し歩き出す。学園からは極めて近く、10分ほどで着いた。中に入ると


沙玖夜「おかえりなさい。遅かったじゃないの」


黛「申し訳ありません。今すぐ食事の準備を致します。」


私が部屋に一度戻るつもりで歩こうとした時でした。


沙玖夜「薫といたの?千夜」


黛「はい、少しわからないことがありましたので。」


私は今日あったことを隠してしまう。悟られないようにしていましたが、忘れていたことがありました。


沙玖夜「私に嘘をつくのね、千夜。」


黛「申し訳ありません。」


沙玖夜さまには、人の心を読むことが出来る神様でした。と言っても詳しくまでは読めませんが


沙玖夜「なんの話をしていたのか、話してくれるかしら?」


黛「薫さまの記憶の話です。」


沙玖夜「そう、記憶の話ね」


沙玖夜さまは別段驚いた訳でもなく、それ以上何も話しませんでした。私が軽く会釈し、その場を後にしようとした時でした


沙玖夜「千夜は、薫が好きなの?」


その質問は、どう答えたらいいのか悩みましたが。私は素直に


黛「好きです、薫さまのことが。」


沙玖夜「……………」


沙玖夜さまは一瞬目を見開きましたが


沙玖夜「そう。好きにしなさい」


少し投げたような返事をして、沙玖夜さまは部屋に向かって歩き出す。私は


黛「沙玖夜さまは、好きなんですか?彼を」


沙玖夜さまは振り向かずに


沙玖夜「大嫌いよ。あんな何もかもわからない奴なんか。……嫌いなんだから」


それを最後に部屋に戻っていきました。私も部屋に戻ると兄が写った写真を手に取り抱きしめる


黛「兄さん。私はやりたいことを見つけました、彼を助けたい。まだなにを助けたいかはハッキリとはわかりません。ですが彼はきっと、沙玖夜さまを良くしてくれると思います。」


私はただ話を聞いてくれる兄さんに、ずっと話しかけていました。




俺は寮の部屋に戻ろうと、廊下を歩いていると。


魔子「もう!!なんども電話したんだよ?!どこにいってたの!」


薫「わ、悪かったよ。ちょっと黛と色々な?」


魔子「黛って、沙玖夜のメイドさんだよね?ま、まさか!!付き合ってるの!?」


魔子は俺の両肩を掴む。


薫「んなわけないだろ、俺に彼女なんて有り得ないって。それより用事があったんじゃないのかよ?」


魔子「え?あー、なんだったか忘れちゃった(笑)てへっ」


魔子は苦笑いしながらそう話す。しかし


魔子「……ねぇ?薫ちゃん。薫ちゃんはやっぱり昔の記憶を思い出したい?」


魔子は突然真面目な顔をして話しかけてきた。俺は一瞬悩むが


薫「いや、今はいいかな。さっきまでは記憶のことで頭がいっぱいだったけど、今は今だしさ?だからもういいかなって」


素直な気持ちを魔子にぶつけると


魔子「ふふ、そっかそっか!わかった。あ、私まだやることあったから先に戻るね!」


魔子は早足で自分の部屋に戻っていった。何を納得したのかわからないがそれ以上考えないようにして、部屋に戻った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ