ディスク15「あの時の夢」
俺は夢を見ているのか?身体がフワフワした感覚、まっ暗闇の景色。誰もいない空間にただ一人、俺が居る。
薫「……………ぁ」
夢は思い通りに喋れない。好きなようにも動けない。
まっ暗闇の空間は急に夕方の景色を映し出す、公園のベンチ、
停車中のバス。俺は無意識に講堂する。
薫「どうしたの?なんで泣いてるの?」
同い年くらいの女の子に話しかけているようだ。
???「ママとはぐれちゃって、わかんなくて……グスン」
薫「泣くなよ!泣いたら鬼に連れてかれちゃうんだぞー!」
そういや、昔母さんに言われたんだよな。泣いていたら鬼に連れてかれるって。だからあれ以来絶対に泣くのをやめようと決めて、ずっと涙は流していない。
???「おに?怖いの?」
薫「うん、めちゃくちゃ怖いらしいぞ、母ちゃんが言ってた」
小さな俺は女の子の隣に座る。
薫「でも大丈夫!オレが守るよ!ほら、手をつないでみようよ!」
女の子は戸惑うがすぐに手を繋ぐ。同い年っぽいが手はちいちゃくて弱い。ぎゅっと握る
???「なんだか、落ち着いてきた!ありがとう。おなまえは?」
キラキラした目で俺に質問してくる。
薫「むらびとかおる!君は?」
???「私は―――」
夢はそこで途切れた。ゆっくり目を開けると、ベッドの横には
魔子「ぁ、起きた?お邪魔したら寝てるんだもん、びっくりしたよー」
魔子はドレス姿のまま部屋に来たみたいだ。部屋に戻ってきてから2時間くらい寝てしまったようだ
魔子「ごめんね、今日会場で会わなくて。走り回ってたら薫いないしさ。部屋に来たら寝てるしドレス姿見せられないかと思ったよ。へへっ」
魔子は椅子からベッドに移り座る。なんだろう、懐かしい感じ。どこかの部屋でこんなことがあったような、気のせいだろうか
薫「なぁ?お前昔のことを覚えているか?小学生くらいだったような気がするんだけど」
なんとなく聞いてみた。多分答えを知りたいからだろう、本当のことを。
魔子「んー、小学生かぁ。あんまり覚えてないかも、てへぺろっ」
薫「なんじゃそりゃ、だよなぁ、そんなころなんて覚えちゃいないよなぁー」
起き上がった身体をもう一度横にする。天井を見つめていると視界に魔子の顔が現れる。
魔子「でもなんでまた、小学生のころを?なにかあったの?」
薫「まぁあれだ。夢に見たんだよ、んー夢だからすぐに忘れちまうからなぁ。」
実際は少しだけ覚えていた。だけど確信はないから口にするのをやめた。
魔子「あ、一つだけ覚えてたやつあるよ!!」
薫「本当かっ?!」
思わず飛び起きて魔子の露出した両肩を掴む
魔子「ひゃ!?ひゃい!!」
薫「あ、わりぃ。で覚えてるやつってのはなんだ?」
肩から手を離す、魔子も優しい表情になる
魔子「薫と私はずっと友達ってことだよっ」
薫「もしかしてそれが覚えてるやつか?」
魔子はスマイルで頷く、なんかちょっとてか、かなり違うけど。昔から仲良かったことって訳か、俺は苦笑い。
薫「ま、いいや。それはまた思い出すはずだしさ、それよりお前明日の課題はやったのかよ?」
魔子は目が点になる。やってねぇなこいつ
魔子「ちょ、ちょっと用事思い出したから部屋に帰るねっ?!」
魔子は立ち上がると爆速で帰った。結局魔子も覚えていないみたいだし仕方ないのかな、また思い出すはず。
そう思って、俺はまた眠りについた。
そんなしらないところで、二人は出会ってしまう。
魔子「……神城さん」
沙玖夜「阿久川魔子……薫のとこに行っていたのでしょ?」
二人は睨み合う、 まるで敵対しているかのように
魔子「薫なら大丈夫です。ですからお引き取りください」
沙玖夜「まだ何も言っていないわよ、薫が記憶を取り戻しかけている事について貴女と話がしたかったのよ私は」
薫は何も知らない事実が、裏では動いている。魔子と沙玖夜の関係はただの神や悪魔の関係ではなく。
魔子「………薫はまだ思い出さないはずです、昔にそうしたはずです」
沙玖夜「蘇生の話をしたのよ?蘇生まで思い出したのがまずいのよ、これじゃ世界がバランスを崩しかねない!」
魔子「大丈夫です。なんとかしますから、私が」
世界のバランス、薫自身になにか秘められた力があるのだろうか?神や悪魔が怯えるほどのなにかが。
魔子「今日はこれで、また明日学校で。」
魔子は沙玖夜の横をすれ違いざまに
魔子「薫の記憶は私のものです。」
それを言うと魔子は部屋に戻った、沙玖夜は薫が寝ている部屋の扉まで行き
沙玖夜「…あんた、阿久川に好かれてんのね。昔も今も、記憶を取り戻したとしたら。あんたはどっちを選ぶの?魔子とのが長い時間を過ごしたのかもしれない、でもアタシも小さい時に遊んだのよ?………お休みなさい」
誰もいない廊下に、扉の向こうにいる薫に話しかける。反応はない、しかしどこかスッキリしたのか。満足そうにして沙玖夜は部屋に戻った。そう、皐月が居るとは知らずに
皐月「やはりか、あの二人が関わっていたんだね。神が隠している薫の記憶、悪魔が隠している薫の記憶。どちらも面白そうだよ……ふふ」
皐月は部屋に入る。いつものように
翌朝、薫は目が覚めると先に起きていた皐月に質問をする
薫「あのさ、昨日蘇生とかなんか話したよな?その時に居た女の子って誰かってやっぱわからないのか?」
皐月「そうだね、ボクにも流石にわからないな。でも、神や悪魔なら君の記憶を覗けるかもしれないよ?」
俺は魔子や沙玖夜辺りにでも一度見てもらおうか考えたが
薫「いや、やっぱやめとくか。わからねぇもんをわざわざ思い出してもなぁ。多分あまりいいような記憶じゃなかったのかもしれないしな」
ふと、もう一人の存在を思い出す。
薫「黛、あいつなら協力してくれそうだな。二人は何かと頼んでも断られそうだしな」
皐月「黛さんか、それは妙案だね。ちなみにボクはまだ悪魔の力というのは完璧じゃないからね」
薫「天才そうに見えるお前が完璧じゃないとか不思議だな」
皐月「人間は見た目だけじゃないのさ、ほらもしかしたら女の子かもしれないだろう?」
妙にエロいポーズをかます。
薫「んなことより、早くいこうぜ。遅刻とか嫌だしな」
俺は先に部屋から出るために歩き出す
皐月「大丈夫だよ、必ず。真実へ導いてあげるよ。薫」




