ディスク13「悪魔になる理由」
夕方、パーティーは無事開始されて知らないお金持ちさん達がぞろぞろ現れる。一応パーティーの招待を受けた俺は、受け付け係として雑用を手伝わされる。まぁ、招待状を確認してハンコを押すだけの作業だけど。皐月も一緒にその作業を行う。
薫「しっかし、これみんな金持ちだろ?どうやったらこんなに集まるんだよ」
皐月「そこは神城家の力だろうね、神城家は権威ある種族だからね。」
皐月が言うには、ここに招待されたのは一般人(神も悪魔も信じる人)と神や悪魔やらの血族だとか。まぁ俺は未だに信じちゃいないけど、不幸指数だとかは信じる。なくはないからな、俺は招待を全て確認が取れると
薫「よし、もう終わりだし会場に入ろうぜ。喉乾いたし」
皐月「なんだい?ボクと一杯やるかな?」
皐月は色気全開に誘う。まぁ、見た目も声も女だからな。くそう
薫「まぁそれもいいかもな、じゃあ行こう」
会場の広さはテニスコート4つくらい、いや広すぎだけど。二人で会場に入るなり俺は黛を探す
薫「確か給仕をしてるはずなんだけどなぁ、皐月知らないか?」
いないし……仕方ないフロアを周って見るか。会場を一度出てフロアを中心に探すと
薫「黛!なんだ、掃除か?」
黛「はい、運んでいた飲み物を床にぶちまけ……零したので」
今素が出てきたな。まぁ猫かぶりも可愛いけどさ
薫「今忙しいのか?暇なら一緒に会場で飲まないか?」
酒じゃないぞ、ジュースだぞ。未成年の喫煙はダメなんだぞ飲酒も!これを見てる君だよ!君!……俺は誰に話しかけてるんだ?
黛「申し訳ありませんが、私はまだ持ち場から出れません。ほかを当たってください」
そう言うと黛は軽くペコッと頭を下げて、去った。
薫「初パーティーがぼっちとかやばいな、友達いないだろお前とか言われそう」
一人でテラスに入り夕焼け+そよ風に当たりながらブツブツ言っていると。
皐月「おや、こんな所に居たんだね。友達いないのかい?」
薫「てめぇひねり潰す」
皐月「怖いなぁ、どこをひねり潰すんだぃ?」
皐月はしきりに大切な部分をエロくガード
薫「やめろぉ!なんもしねぇよ!!それよりお前会場にいなくていいのかよ?」
皐月は俺の隣まで来て、夕焼け+そよ風に当たる。
皐月「いいのさ、あんなとこは窮屈でつまらないし。君と話してる方が楽しいのさ。」
皐月は少しだけ暗い部分を見せてきた。何かあるのだろうか?
薫「なんか、悩み事か?俺なら話くらい聞くが?」
皐月「君にはわからない次元の話しさ、君は信じないのだろ?悪魔や神を」
皐月は目を合わせず、口だけを動かす。
薫「そーだな。信じたくはないけど、少しならさ信じてもいいかなって今日改めて思ったんだよ。」
皐月は一瞬、ハッとするがすぐに戻る
皐月「薫にも色々あったみたいだね。実は、というか。ボクは薫と同じで神や悪魔だなんて信じちゃいなかったのさ。非存在な、普通見えない物なんか人間は信じない。魔法だってあるはずがない。だけど小さい時の冬、ボクはある街で迷子になったんだ。両親を見失い、雪も降って来て、寒くて寂しくて。両親を走りながら探していたんだけど、見つからなくて」
皐月はテラスにある椅子に腰をかけた。空を見上げながら話を続ける。
皐月「走り疲れたボクは公園のベンチに体育座りになって、探すのを諦めた。雪も強く降り出して、あー死んじゃうのかなこのままって」
待て、なんだかそれ。覚えてるような………何かを忘れていたような………俺は話を聞き続ける。
皐月「そんな時、急に雪が止んだようになった。パッと俯いた顔を上げると、同じくらいの男の子が傘を差してくれたんだ。」
薫「傘を差した……傘を…」
皐月「その男の子はボクを女の子だと思っていたのか、自分が使っていたマフラーを首に巻いてくれたんだよ、自分は鼻水を垂らしているのにね、ふふっ」
皐月がいつものなにか企む笑顔じゃなく、本心の笑顔を見せてくれた。そんな気がする。
薫「その男の子は?それからどうなったんだ?」
俺は先の話が気になったから聞いてみる
皐月「マフラーと傘をそのまま渡されてさ、俺は大丈夫だからって。それだけを言って走っていったんだ。名前も言わずにね、今でも夢に見るんだ。あの男の子はボクに取って神様に見えた。その男の子が去った直ぐに両親が見つけてくれてね。」
皐月はクスクス笑いながら、大切な人の話をする。その話に悪魔の話とかは関係ないんじゃないのか?と思ったんだが
皐月「それから数ヶ月後、その男の子は『事故』で無くなったんだ。」
薫「なんだと?事故?死んだ?」
待て待て、俺もなんだかその昔話覚えがあるんだ。女の子に、マフラーを渡したような、そんな記憶が………
皐月「うん、トラックに轢かれてね。どうやら別の女の子と歩いている時に起きた事故らしいんだ。現場も騒然としていたらしくてね。女の子も必死だったみたいだよ、傘もマフラーも未だに持っているんだけど。最近になって傘を見ていたら、名前入りのシールが貼ってあったんだ。それでやっと名前がわかったんだよ。」
薫「……なんて、名前だったんだ?」
この世に魔法とか、神様とか悪魔とかいない。そう信じてたはずだ。そう思ってたはずなんだ。
皐月「確か名前は……」
俺は、自分自身まで信じたくなくなるかもしれない。
皐月「『むらびとかおる』そう書いてあったよ。薫、だからボクは、救ってくれた薫を殺した神が許せなくて、悪魔になるんだ」




