八話
明日奈はしばらくクスクスと笑っていたが急に倒れた
「明日奈!」
フォードが明日奈を抱きかかえる、髪の色は金色に戻っており、銀色が表にいられる時間が無くなったようだ
「髪の色が元に戻っています・・・」
「尻尾も一本だな」
船員や冒険者達は生き残れた事を喜んでいるが、三人の暗い顔をするしか無かった
船室
三人は気絶した明日奈を見守っていた
「物凄い力てしたね・・・」
「まだ隠してる事があったんだな」
「私は明日奈の事をまだよく知らない、良ければ教えてくれないか?」
フォードの問いに頷きクリスティと鈴は明日奈の過去について話し始めた
「君たちは明日奈があんな姿になれると言う事を知らなかったと言うことか・・・」
「ああ」
「知りませんでした」
クリスティと鈴は暗い顔をしている
「明日奈が目覚めたら聞いてみよう、金色の明日奈なら教えてくれるかもしれない」
「そうですね・・・」
そして明日奈が目を覚ましたようで、ゴソゴソと動き始めた
「うーん、ここは?」
「明日奈さん!」
鈴は明日奈に抱きつく
「おはよう鈴、私はなんで寝てたの?」
「覚えてないんですか?明日奈さんは銀色の九尾になって海賊達を全て倒したんです」
「そうだ、出来ればあの姿の事について私達に教えて貰いたい」
明日奈は難しい顔をする
「嫌って言ったら?」
「無理矢理でも聞くぜ?」
本当に無理矢理でも聞きそうなクリスティを見た明日奈は話し始めた
「そうねあなた達には教えてあげる、あの子はもう一人の私、酷い虐めを受けている間にいつの間にか生まれた私の闇、一時期はあの子が私の表だったこともあるわ」
「闇ですか・・・」
明日奈は頷く
「そう、少し前は完全に忘れてたんだけどね、少し前に思い出したの」
「思い出したってどう言うことだよ?」
明日奈は立ち上がり窓を方に行く
「私はあいつらに復讐した後、もうあの子は必要無いと思った、だから封じ込めた、私の心の奥にね」
「その封じ込めた、もう一人の君がまた表に出て来たと言うことか?」
フォードが質問する
「そうよ」
「明日奈さんはもう一人の明日奈さんがさっきやったこと、覚えているんですか?」
明日奈は頷く
「えぇ」
「君は止めなかったのか?私達は確かに助かった、だがあれはどう考えてもやり過ぎだ、一人残らず殺すなど」
明日奈は振り返る、その瞳は冷淡だ
「私はそうね特に何も感じなかったわ」
クリスティが明日奈の襟首を掴む
「何言ってんだお前、いくら憎くても、何か感じただろ!」
「何故人間の事なんて考えないといけないの?私から全てを奪った奴等の事なんて」
そう言う明日奈の瞳は酷く濁っている
「お前の過去は知ってる!それでもあれは駄目だ、逃げようとしてる奴まで殺すなんてな!」
「・・・あなたに私の何が分かるの?お坊ちゃんのあなたに」
クリスティは拳に力を込める、正直殴ってやろうかと思った
「明日奈さん、クリスティさんやフォードさんの言う通りです」
「どうして?」
鈴は悲しくなった
「本当に分からないのですか?」
「何のことなのか全く分からないわ」
ついに我慢出来なくなったクリスティが明日奈を殴った
「痛い・・・」
「そりゃ痛えだろうな!分かるまで何回でも殴ってやっても良いんだぞ!」
クリスティが叫ぶ
「勝手にしたら?」
「この野郎!」
「やめるんだ!クリスティ!」
フォードと鈴が何とかクリスティを止め外に連れ出した
明日奈は頬を摩りながら呟いた
「あなた達なら私の心を救ってくれるって、そう思っているのに・・・」
明日奈はそう言うと部屋の外に出て行った
外に出た明日奈は一人歩いていた
(やっぱり無駄なのかもね、期待するのは間違ってるのかもしれない)
そう思いながら甲板に出て、海を眺める
(痛い胸の奥がズキズキする)
明日奈の瞳は今も暗いままだ
(でももう少し、もう少しだけ期待しても良いかな、壊れた私の心を救ってくれるのはあの人達だけな気がするから・・・)
そう思うとその場にしゃがみ込み、胸の痛みに耐える
鈴達はクリスティを落ち着かせ、部屋に戻ってきた
「明日奈はいないな」
「あぁ、何処かに行ったようだ」
「私探して来ます!」
そう言うと鈴は明日奈を探しに行った、鈴は甲板に出たが明日奈はいなかった、どうやら立ち去ったようだ
結局船がアースフィリアに着くまで明日奈を見付ける事は出来なかった
次話からはアースフィリア編です




