十八話城塞都市と闘技大会決勝
通路
明日奈は試合が終わった後すぐに医務室に連れて行かれていた
(痛い痛い、でも泣かない!絶対泣かない!)
歯を食いしばり必死に泣かないように堪えている明日奈である、耳はペタンとなり尻尾は極限まで下がっている
「もう少し我慢して下さい、医務室はすぐそこです」
「ヒック、分かったわ」
そして医務室に着いた
医務室
明日奈と係員が医務室に入ると既に治療魔法師が待っており、いつでも治療出来るようだ
「それでは早く座って下さい、言っておきますが、骨が折れているので治療魔法をかけるとかなり痛いですよ!」
「うっ・・・分かりました」
明日奈の返事を聞くと早速治療魔法師は明日奈を抑えるように言うと腕を治し始めた
「ううう、ああ!」
かなり痛いようで明日奈は悲鳴を上げる
「堪えて下さい、後三十秒です」
「痛い物は痛いのよ!、くぅ・・・」
そして明日奈の腕は治った
「これで大丈夫でしょう、動かしてみて下さい」
「んっ、確かに治ってる!魔法ってやっぱり凄いわね!痛いけど・・・」
明日奈の腕が治ったのを確認すると、治療師は注意事項を言う
「明日奈さんでしたね?あなたの腕は次の戦闘では使えない物と思ってください、、あなたのその魔法銃を一発でも撃ったらまた折れます、三日は戦闘には使わないで下さい」
「身体強化をしても無理かな?」
次の試合がかなり不利になるので左腕は必要なのだ
「身体強化を使えるのですか・・・それでも駄目です、絶対に左腕は使わないで下さい!」
「はーい、分かったわよ・・・」
(ヤバイなぁ、左腕が使えないとなると、あれしかないわね・・・)
明日奈がそう思っていると外が急に騒がしくなった
「明日奈様?腕は大丈夫ですか!?」
「鈴落ち着いて・・・一番最初にした約束を忘れてるわよ」
自分を様付けにするな、と言う約束である
「はっ!すみません・・・腕は大丈夫なのですか?」
「うん!ほら大丈夫でしょ?次の試合じゃあ使えないけどね」
鈴は明日奈が左腕を動かすのを見てホッと溜息を吐いた
「はぁ良かったです、もし完全に治らない怪我だとしたらお付きとして玉藻様に合わせる顔がありませんから」
「大丈夫だから安心して?後心配してくれてありがとう」
明日奈はそう言うと鈴の頭を撫でて決勝戦に向かった
闘技場
明日奈はラーシュとの決勝戦が始まる
「東明日奈と西ラーシュの試合を始める!両者白線まで下がれ!」
明日奈は白線まで下がると剣を抜き左手を腰に添えるラーシュはレイピアを抜いた
「よし!試合開始!」
決勝戦だからか、ドーンと大きな太鼓の音と共に試合が始まった、ラーシュはいきなり明日奈に接近するとレイピアを突き出した
「早いけど!」
左に避け、明日奈は左足で蹴りを放つがラーシュの左腕で止められた
「女の子でその細さなのにこの蹴りの威力!君は凄いよ!」
「妖狐族の身体能力が凄いのよ」
明日奈はラーシュの突きを捌きながら何とか前進しようとするが、左腕を狙った蹴りが飛んでくる、明日奈は後ろに飛んでかわす
「君の腕は治りきってない筈だ、弱点は狙わせて貰うよ!」
「私もあなたが腕を怪我しているの知っていたとしたら狙うしね、卑怯とは言わないわ!」
明日奈はそう言うとラーシュと無理矢理鍔迫り合いに持ち込む
「レイピアじゃ、鍔迫り合いは辛いでしょう?」
「あぁ辛いね!」
そう言うとラーシュは明日奈の腹を思いっきり蹴った
「うっ!」
「これで勝ちだ!」
蹴りを受けて倒れた明日奈にレイピアを突き出す、もう少しで当たると言う所で明日奈は尻尾をラーシュに突き出した
「なっ!?クソッ」
「尻尾はあまり使いたくないんだけどね、左腕が使えない分使わないとね」
今度は尻尾に当たり倒れたラーシュを明日奈が狙う
「まさか、今までの試合で使ってなかった尻尾を使うとはね、妖狐族は尻尾を大事にすると言われているから尻尾を使うとは思わなかったよ、それならこれはどうだい?」
ラーシュは左腕を上げるとサンダーを放った
「ふっ!危ないなぁ」
明日奈は尻尾で防いだ後、体を捻り勢いを付けた斬撃をラーシュに放つ
「ぐぁ!」
「よし!貰った!」
レイピアで何とか防いだが吹っ飛んだラーシュの首に明日奈は剣を突き出そうとした、その油断が勝敗を分けた
「甘いよ!明日奈ちゃん!」
「えっ?」
明日奈の足元に魔法陣があり爆発が起こったのだ、爆風を受けた明日奈は吹っ飛ばされ観客席の下の壁に当たるとそのまま気絶した
「勝者!ラーシュ!」
明日奈は最後の試合負けてしまった
ラーシュが最後に使ったのは爆発魔法、試合なので威力は落とされていますが、当たれば一撃で気絶する威力です
明日奈は最後の瞬間油断してしまい足元の魔法陣に気付かなかったのです
相手が油断していないと簡単にバレてしまうのですが・・・




