一話
アラの町近くの街道
妖狐族の里はアラの町と城塞都市の間のコプラ山にある、その為アラの町の万屋に帰る事にしたのだ
「久しぶりねアラの町、あの焼き鳥屋さんはまだいるのかしら?」
「本当ですね、一ヶ月ぶりくらいでしょうか?早くアリシアさんに会いたいです」
「あの人なんか隠してる気がするんだよな、お前らなんか知らないのか?」
二人は首を振る
「リシアちゃんが何か言いかけてたけど、私は知らない」
「私も知りません」
クリスティが言う
「そうか、でもなんか有るよなあの人、ちょっと探ってみるか?」
明日奈はこれにも首を振る
「ダメよ、アーシェさんのガードがしっかりしてるんだもの、絶対に邪魔されると思う」
「アーシェさんって結構容赦無いですよね、アリシアさんの頭思いっきり叩いてましたし」
明日奈はその様子を思い出して笑う
「ふふふ、そうね、思いっきり叩いてたわよね」
「俺には母さんを叩くなんて怖くて出来ねぇよ・・・」
アラの町万屋
三人が万屋の前に来ると中から叫び声が聞こえた
「お母さん!またサボったわね?あの人達から手紙が来てるわよ!」
「いやぁめんどくさくてさ、会議なんて一週間に何回もするあいつらが悪いのよ・・・」
アーシェの声がまた聞こえる
「そりゃ大事な会議だからでしょう?サボっちゃダメ!お母さんは立場を考えなさい!」
「はい・・・」
明日奈は困ったように二人を見る
「ねぇ、私入る勇気無いんだけど・・・」
「私も無いです」
「俺もだ」
結局アーシェの説教は三十分くらい続き明日奈達は三十分ドアの前で待ち続けた
アーシェの説教が聞こえなくなり恐る恐るドアを開けてみると、グッタリしたアリシアと肩で息をしているアーシェとソファにゆっくり座り観戦していた様子のがいた
「あっ明日奈ちゃんおかえりー、ねぇ聞いてよお姉ちゃんが一時間近くもお母さんを説教したんだよ?」
「へ、へぇ・・・一時間もやってたんだ・・・」
どうやら明日奈達が帰ってくる前からやっていたようだ
「明日奈〜おかえり〜聞いてよ!アーシェに怒られたの〜」
ボロボロになったアリシアが明日奈に抱き付いて来る
「あはは、でもアリシアさんもなんかしたんでしょ?その人たちに謝らなくちゃ」
「えっもしかして聞いてたの?」
明日奈達が頷く
「恥ずかしい、アーシェ!あんたのせいで聞かれちゃったじゃない!」
「何?お母さん、もう一戦行く?」
アーシェは良い笑顔だ
「いや、もう良いです、どうもすみませんでした」
「本当私達も何歳なのか知らないけど、歳を考えなさい!」
二人が落ち着いた後明日奈はこれからの目標を話していた
「明日奈、鈴、クリスティ君、おかえりなさい、さっきは恥ずかしい所を見られちゃったわね」
「ただいまアリシアさん、ねぇ何のことで怒られてたの?」
アリシアは答えようと口を開けるが、アーシェが全力で睨んでいる
「うっ、話せないわ、前も言ったけど知りたいのならあなた達でとある国に来なさい、その時に教えてあげるわ」
「ごめんね?明日奈ちゃんこれだけはうちの秘密なの、お母さんは私がいないと話しそうになるけどね」
明日奈は頷く
「うん、話せない事なら別に良いの」
「ありがとう明日奈、それであなた達これからどうするの?またしばらくうちに泊まるのかしら?」
鈴が答える
「いいえ、私達はこれからちょっと休んだ後、妖狐族の里に向かう予定です、その後は城塞都市に行こうと思ってます」
「そうなの、この国の妖狐族の里の場所が何処なのか知っているの?」
この質問にはクリスティが答える
「あぁ、王都を出る前に国立図書館で調べたんだ、コプラ山の中腹にあるんだろ?」
「えぇそうよ、よく調べたわね、明日奈と鈴がいたら案内の者が現れるはずよ、ただ明日奈、あなたは玉藻様の子供だから過剰な歓迎をされるかもしれないわ」
明日奈は少し嫌そうな顔をする
「里の人達には私があの人の娘だってこと分かるの?」
鈴が答える
「えぇ分かると思います、各国にある里と天上界は交流がありますから、玉藻様の顔は多分みんな知ってます、玉藻様によく似ている明日奈さんならすぐにその娘だって事がバレると思います」
明日奈と玉藻神狐は本当にそっくりなのだ、頻繁に天上界と交流している里の者達ならすぐに明日奈が娘だと言うことが分かってしまうだろう
「やめようかな・・・私そう言うの嫌い」
「いいえ、明日奈行って来なさい、仲間との交流はあなたにとって良い経験になると思うわ、それに鈴が言うには天上界と交流があるみたいじゃない、長老にでも頼んで天上界に行かせて貰って、あなたのお母さんに会って来たら?」
明日奈はハッとした顔になる
「そうか、交流があるって事は天上界に行けるって事よね、よし!行こう!行って天上界に行ってお母さんをぶん殴る!」
それを聞いたアリシアは立ち上がる
「ほどほどにしなさいよ?さぁご飯にしましょう、油揚げ食べるわよね?」
「もちろんよ!」
「当たり前でふ」
鈴は噛んだようだ
「お前ら落ち着けよ」
そして三人は晩御飯を食べ、風呂に入り、眠った




