九話
デルタムーザの居城
第三世界の戦闘が終わった翌日、デルタムーザは白衣の男の部屋へと来ていた
「我は言ったな、この娘が久城明日奈を殺せなかったら、あの娘を捕らえに行くと」
デルタムーザは白衣の男の方を向かず水槽の中で眠るC1を見つめながら話す
「・・・はい、ですがもう一度、もう一度チャンスを下さい!」
男は必死にデルタムーザにもう一度チャンスを貰おうと頼み込む
「フン、良いだろう、もう一度だけだ、次は無いぞ」
男の必死の頼みを聞いたデルタムーザは男にもう一度だけチャンスをやろうと思い男にもう一度チャンスをあげた
「ありがとうございます!」
デルタムーザにもう一度チャンスを貰えた男は嬉しそうに返事を返した
部屋を出たデルタムーザは廊下を歩きながら一人笑う
(フン、どうせあの男にチャンスをやっても、あの久城明日奈あの小娘が手に入るのが少し遅くなるだけの事、娘よお前も我の期待に応えてみせよ)
第八世界
第八世界のとある街、明日奈はこの街にデルタムーザの兵が現れた為逮捕せよとの命令を受けこの街に一人でやって来た
「えーと、ホワイトローズ?敵さんこの街の何処に居るんだっけ?」
明日奈はどうやらワトソンからデルタムーザの兵が現れた場所を聞いていた筈なのに忘れてしまったらしい、ホワイトローズに何処に居るのか聞いた
『・・・私がナビゲートします』
ホワイトローズはそんな明日奈に若干呆れた様子では有るがちゃんとナビゲートしてくれるようである
「えへへ、ありがとうホワイトローズ」
明日奈はホワイトローズの案内に従い、デルタムーザの兵が現れたと言う地点に向かった
街の中心部、デルタムーザの兵達はお馴染みの爆破呪文で街を破壊している、住民は逃げ惑い爆破魔法に巻き込まれ亡くなっている住民も居るようだ
ホワイトローズの案内に従い現場にやって来た明日奈はこの状況を見て怒りを感じると一気に三人で街を破壊している兵士達に詰め寄った
「セェイ!」
明日奈はまず一人目の兵士を住民が居ない方向に向けて蹴り飛ばした、仲間の一人がいきなり吹き飛んで行ったのを見た二人の兵士は慌てて振り返り、明日奈を見ると一気に明日奈から距離を取ってこちらに爆破魔法を放って来る
「ッ!」
だが明日奈は剣に魔力を流し剣を光り輝かせると爆破魔法を上空に向けて弾き飛ばした、弾き飛ばされた爆破魔法は上空で激しい爆発を起こす
「無駄に街を破壊するな!」
明日奈はそう言うと残り二人の兵士を剣でぶん殴り気絶させた、そして三人にそれぞれ手錠をかけてワールドセイバーに送った
「・・・」
一仕事を終えた明日奈は普段の仕事ではまず感じる事の無い周辺の人々からの感謝の視線を感じ、落ち着かない様子でソワソワと尻尾を忙しく動かす
『マスター照れているのですか?』
「こんなに沢山の人に見られるのは誰でも恥ずかしいわよ、行くわよ」
明日奈はそうホワイトローズに小声で言うと、周囲の人々からの感謝の視線からそそくさと早歩きで逃げて行った
人々の視線から逃げた明日奈は先程の場所から十分離れた地点にまでやって来ると、早歩きを辞める
「ふう、ここまでくれば大丈夫ね」
歩く速度を普段と同じ程度にした明日奈は改めて街を見渡してみる
この街の風景はローマの街並みによく似ており、こう言う風景が好きな明日奈の尻尾はユラユラと嬉しそうに揺れる
「今、私が住んでいるニューヨークの街並みも好きだけど、こう言うローマっぽい街並みも好き」
『引っ越しますか?』
ホワイトローズはこう言う街並みも好きだと言う明日奈になら引っ越すか?と聞いてみる
「そんなお金無いわ、でもいつかこう言う街に引っ越すのは確かに良いかもね」
明日奈は街並みを眺めながら暫く歩いた後、地球支部に転移した
チーム29
地球支部に戻って来た明日奈はその足でチーム29へと向かい、部屋に入ると任務を無事終えた事をワトソンに報告しソファに座る
部屋にはワトソン以外は誰もおらず恐らくチームメイトは全員任務に向かっているのであろう
「うーむ、暇ね」
何もする事が無く暇な明日奈は自分の仕事机へと向かうと中から櫛を取り出し再びソファに戻り九本ある尻尾を一本一本綺麗に整え始めた、九本ある尻尾は全部綺麗にするのはそれなりに時間がかかる、その為良い時間潰しになるのだ
そして三十分後、明日奈は全ての尻尾を整え終えただがその間にも誰も帰って来ることは無かった
「ムー、暇ね」
尻尾を整えている間にワトソンも部屋を出て行っていたようで、今は部屋の中には明日奈しか居ない
そして暇で暇で仕方ない明日奈は靴を脱ぐとソファの上に寝転がりゴロゴロし始め、そして何時の間にか眠っていた
明日奈がお昼寝を始めてから一時間後ウィリアムが任務を終えてチーム29に戻って来た、戻って来たウィリアムはワトソンが居ないことを確認すると報告書を書き、ワトソンの机の上に置いてから部屋を見渡す
「うおっ!?居たのか」
部屋を見渡したウィリアムはソファで眠る明日奈を見付け誰も居ないと思っていたので驚く
「はぁ、こんな所で寝やがって」
一瞬驚いたウィリアムはすぐに落ち着くと、眠る明日奈の方に向かい、ソファの前に座り眠る明日奈の寝顔を間近に見る
「可愛い寝顔しやがって」
ウィリアムはそう言うと明日奈の頬っぺたを引っ張ってみる、頬っぺたを引っ張られた明日奈はウーと不満そうに唸る
「・・・」
そんな明日奈に少しイタズラしてみようと思ったウィリアムは頬っぺたを引っ張りつつ鼻を摘まむ
鼻を摘ままれた明日奈は暫くは特に反応を示さなかったがやがて息辛くなって来たのか、イヤイヤと首を振る
「・・・」
そんな明日奈の様子に更にイタズラ心を刺激されたウィリアムは鼻から手を離し、寝てるのならバレないだろうと思い明日奈の胸に手を伸ばす
「・・・」
「・・・」
そしてもう少しで触れると言う所で明日奈が目を覚まし完全に目が合ってしまった、起きた明日奈はまずは頬っぺたを引っ張る右手そして胸の近くにある左手を見てから身を起こす
「さて、ウィリアム?右手は良いとして、左手は何処を触ろうとしていたのかしら?正直に答えなさい」
起きた明日奈は早速ウィリアムが何処を触ろうとしていたのか聞く
「む、胸を触ろうとしてました」
ウィリアムは正直に答えないと絶対に恐ろしい目に遭うと思い冷や汗を流しながら正直に答える
「そう、胸ね」
「はい、胸です」
怒っているのか怒っているのか表情からは分からない明日奈にウィリアムは更に冷や汗を流す
「さ、触りたいのなら、そんなこっそりとせずにわ、私が起きている時に言ってくれたら触らせてあげるわよ」
そして明日奈は暫く黙っていたがやがて少々言葉につっかえながらこう言った
「はっ?」
ウィリアムは明日奈のまさかの発言にはっ?としか言えなかった
「はっ?って何よ、だからちゃんと言ってくれれば良いって言ってるの」
「マジで?」
ウィリアムは明日奈はこう言う事は頼んでも恥ずかしがって許してくれないだろうと思っていたので、思わず本当かと聞いてしまう
「うん」
「そ、そうか」
だが結局ウィリアムは触っても良いかと聞く気には慣れずこの日は若干期待した瞳を向けて来る明日奈を出来るだけ見ないようにして家に帰って行った




