天気自動制御装置
ショートショート9作目です。
あったらいいと思いますか?
人類は天気をも制御する装置を作り上げた。そのため天気予報は100%の確率で的中する。明日が晴れて欲しいなら確実に晴れるし、雨が降って欲しければ確実に雨が降る。このようにして人類は天気に左右されることなく生活を送ることができた。
天気を決めるためには投票によって決められた。投票は毎日行われ、明日の天気が決まるのであった。
「投票の結果明日は雨となりました。雨は20日ぶりなので必ず傘をお持ちください。雨は一日中降り続きます。」
テレビのキャスターが明日の天気を発表した。20日ぶりならまだ良いほうである。最長で半年は雨が降らなかったこともあった。
「明日は雨かあ。何で雨など降って欲しいと思うのか私にはさっぱりわからん。」ある金持ちがボソッとつぶやいた。
「でも、雨が降らなければ農作物は育ちませんよ。」と執事が金持ちに言った。
「そんなこと、私の知ったことではない。」
この金持ちは大の雨嫌いであった。なぜかというと雨になるとやる気がなくなってしまうという何とも馬鹿げた理由であった。
そこで金持ちはあることを考えた。晴れに投票してくれるように、多くの人々にお金を与えた。雨よりも晴れのほうがいいと思っている人は多く、ほとんどの人が晴れに投票した。
しかし、晴れの日が続くことによって世界中のあちこちで干ばつが起きた。金持ちはそんなことはお構いなしで、お金を人々にどんどん与え、まるで金持ちが天気を支配しているようであった。人々も別に雨が降らなくてもよいと思え始めてしまった。
そして、この日照りが続いている最中、この天気自動制御装置に新たな機能が加わった。それはあらゆるものを降らせることが可能となったのだ。例えば、ジュースの雨も降らせることができるようになったのだ。その他に食料品や電化製品なども空から落ちてきたり、金さえも降ってくることも可能である。しかし、その機能が使えるのはランダムに選ばれた一人だけがその日の天気を決めることができることとなっていた。金持ちもさすがにこれはどうすることもできない。
「もしも選ばれるようなことがございましたら、何を降らせますか。」執事が金持ちに尋ねた。
「私は何も降らせはしないさ。仮に誰かが選ばれたらそいつに大金を払って、わたしがその権利をいただくことにする。そんなことが禁止であるとは誰も言っていないからなあ。」
そして、初めてその機能が使われる日がやってきた。その日は世界中の人々が落ち着かなかった。わたしに来たらどうしようと困惑する人もいた。
「みなさん。間もなく発表されます。心の準備はよろしいですか。」キャスターが視聴者に呼びかけた。
「では発表します。今回初めて天気を操ることができる方は・・・・〇〇に住んでいる少年です。おめでとうございます。それでは早速中継がつながっている模様です。今の心境を聞いてみましょう。選ばれた感想は?」
「とってもうれしいです。」
「それでは明日の天気はどのように・・・。」キャスターが少年に尋ねようとしたところ、金持ちがテレビ局に押し入り、少年に問いかけた。
「君。その明日の天気を操れる権利を私に売ってはくれぬか。ここで変なもの降らされたら今まで晴れ続けてきた記録が途絶えてしまう。ましてや雨なんか絶対に降らせたくはないんだ。」
「僕も雨がきらいだから、ずっと晴れがいいや。だからずっと晴れるような天気にするよ。」
「本当か。ならば君に任せる。ウソをついたのならただでは済まぬぞ。」
「ぜったいに大丈夫だよ。」少年は笑いながら答えた。
「では改めて明日の天気はどうしますか。」
「そうだなあ・・・・・明日の天気は太陽が降ってきてほしいなあ。そうすればずっと晴れつづけるでしょ。」
少年は誇らしげな顔をしていた。
少年はいつも純粋ですよね。
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