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な行
濁点という概念にはな行にはなかった。その代わり彼らは非常に粘着質で生意気であった。生意気なのも当然、彼らは自分があいうえおから生まれたのではなくあの奈落の神の異名をもつ”ん”様から生まれたのだと思い込んでいたからだ。例えば”な”は笑いながらよく人に絡み、自分は何もかもよく分かっているかのように「な」と相手の肩をたたく事が多かった。”に”に至っては狡猾でずる賢く、人の心理をいかに操るかを研究しているぐらいだ。そしていつも”に”はにたにたと笑っていたので周囲は彼が何を考えているかが分からなかった。不気味である。”ぬ”は引き篭もりで、何も考えていなさそうな性格であった。そのために皆から不気味がられていた。”ね”は何かと猫なで声で人に絡み、厭味ばかり言う性質の悪い者であった。いつか”と”と”ね”が共にいた時、あまりの付き合いにくさ話しにくさに「ねとねと」と感じたらしい。”の”はひょうきんとしていて飽きっぽく、助詞の仕事をいやいやこなしていた。つねに眠そうであった。
な行は一癖二癖あった。彼らを説得させるためには後に述べる”ん”が必要であったことを述べねばなるまい。




