か行
か行すなわちかきくけこは五十音字の中で特にとげとげしい攻撃的な性格を帯びていた。五十音字は平常は平仮名だが、一種の緊張状態に陥ると片仮名の表情になった。だが、彼らか行は片仮名でもカキクケコと平仮名の平常なときと表情がほぼ同じで、普段の行いがそうなったのか、もとから気難しいからなのか、とにかく厄介な人々であった。リーダー格の”か”はとにかく議論が大好きで相手を打ち負かす事に達成感を得ていたので、”か”とわざわざ関わろうとするものはいなかった。そうか、思うか、どうなのか、と彼は語尾に自分の名前を入れて話す癖があった。これに濁点がついて”が”になると、それが?思うが?どうなのが?とますます攻撃的に断定的にずけずけと声を荒げて責め立てる。五十音字に濁点がつくのは通常一時的な怒りや狂乱した状態などが原因であることが多いので、ほとんどの五十音字は彼を怒らせないようにしていた。”き”も彼と同様厄介者であったが、むしろ議論好きよりと言うよりヒステリックで、こちらは無視すれば良かった。”く”は発狂していた。周囲への憎しみや嘲りを露にし、”き”が「きーきー」喚くのに対し、”く”は「くくく」と不気味な忍び笑いをしていた。”け”は行動力はないものの反骨精神に溢れていて、周囲からは犯罪者の卵のように見られていた。事実彼は常に不気味な悪巧みを思いついてにたりと”け”なりの薄気味悪い笑みを浮かべていた。そんなか行だが”こ”だけは落ち着いていた。彼はか行を監視し、バランスが取れるようにやりくりした。




