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”ん”は何行にも属さないためわ行の部屋に住んでいた。彼は皆から死神だの奈落の神だのと恐れられていた。彼は先頭に立つ事も無く、自分の事を一切語らなかった。にもかかわらず全ての五十音は彼の個性に圧倒された。彼は虚無であった。彼が真後ろにいるといつのまにか思考が停止していた。例えば刺々しい”か”と”ん”が共にいた時、”か”の刺々しさは”ん”の虚無の中でどこかしらむなしく反響し消えた。そしていつのまにか思考を失った”か”は恐れて”ん”から離れた。母音でも子音でもない、彼は得体の知れない存在だった。





以上が五十音の全てである。実際は四十七音しかないのだが、彼らは五十音と呼ばれていた。彼らの仕事は言語の構成であった。あ行か行と行ごとの部屋の中央にホログラムビジョンがあり、呼び出しに応じて彼らはホログラムビジョンの中にに入って、言語を構築していった。


彼らの先祖は漢字だが、漢字は今や彼らに頼りきっていた。体面だけ守るためだけに漢字たちは利用されたのだ。





以上が五十音の全てである。


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