第61話 拒否は命令になる
集会は、
予定されていなかった。
だが、
人は集まった。
第三の地の内外。
評議体。
使者。
通行人。
理由は一つ。
「……第三の判断を、
確認したい」
誰かが、
そう言った。
その言葉に、
胸が重くなる。
「……判断は、
出していない」
俺は、
はっきり言った。
「裁定者でもない」
「覇王でもない」
「誰かを、
選ぶつもりはない」
言葉は、
迷いなく出た。
沈黙。
誰も、
反論しない。
それが、
一番おかしい。
「……つまり」
誰かが、
慎重に言葉を選ぶ。
「現状を、
維持する、
ということですね」
違う。
だが、
否定が追いつかない。
「……違う」
「維持じゃない」
「俺は、
何も決めていない」
声が、
少し強くなる。
「……承知しました」
そう返される。
その瞬間、
嫌な確信が走る。
承知した。
それは、
受領だ。
昼。
通行が、
整理される。
昨日と同じだ。
だが、
意味が違う。
「第三の判断により、
現状維持」
その言葉が、
貼り出される。
「……俺は、
そんな命令を出していない」
言っても、
遅い。
「ええ」
セレナが、
静かに言う。
「だからこそ、
“命令ではない”と
解釈されています」
理解が、
追いつく。
拒否した。
だから、
命令になった。
「……ふざけている」
思わず、
吐き捨てる。
「ふざけていません」
セレナは、
真剣だ。
「あなたが、
裁定者でないと
言えば言うほど」
「人は、
“裁定が出た”と
思います」
喉が、
詰まる。
夕方。
赤と青から、
同時に連絡が来る。
「第三の判断、
了解した」
同じ文面。
同じ温度。
「……俺は、
判断していない」
そう返す。
「承知しています」
それだけ。
夜。
焚き火の前で、
一人になる。
火は、
いつも通りだ。
「……拒否が、
命令になる世界か」
呟く。
命令しない。
支配しない。
名乗らない。
それでも、
意味が付与される。
俺は、
焚き火を見つめながら、
静かに思う。
力とは、
振るうものじゃない。
拒否すら、
世界に利用される。
ここまで来て、
ようやく分かった。
もう、
俺が何を言うかは、
問題じゃない。
世界が、
どう解釈するか――
それだけだ。
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